第4話 元就さまへの現状報告 その3 と、のど越し爽やかなあれが出来るアレ
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- 摂津(兵庫南東部から大阪北中部)大坂城 -
「本願寺の功績については後日会議で詳しく話し合うとして、最後に能登(石川県北部、能登半島)畠山です」
俺の言葉に、元就さまは僅かに顔を歪める。能登の畠山氏とは、足利天晴さんが将軍だった頃に、当時の管領だった細川六郎をその座から引きずり降ろすために、元就さまが消息不明だった畠山長経の養子になることで管領としての家格を整えるという搦め手を使ったときの因縁がある。
まあ、一族の意向とかを無視して養子縁組を行い、足利天晴さんが将軍の地位を返上したときには養子縁組を解消したのだから、遺恨が残って当然だよね。
その後、両氏が関係を改善させる事は無く、毛利氏が朝倉氏を先鋒に加賀(石川南部)に攻め込んできた頃にようやく上から目線で「幕閣に加わってやろう(意訳)」と言ってきたので、叩き出してやったのはいい思い出だ。まあ、畠山氏にしてみれば、毛利氏は成り上がりの大法螺吹きの田舎者ぐらいの認識だったんだろう。あと、武辺者のゴールって、前にも言ったと思うけど、軍を率いて京に上って主上や将軍に謁見。権力のお墨付きを貰って終わりというのが基本だったから、西国の毛利氏の場合は京を越えて更に東に版図を広げてくるとか思わなかったのも大きいのだろう。
それが、あっという間に加賀より西の国を切り従えるなんて思っても見なかったんだろうなぁ・・・
「こちらは、前回の報告から大きな進展はありません」
「ほう。畠山修理大夫は能登を栄えさせている名君だと聞いたのだが、状況がこうなっても決断はできんか?」
元就さまが器用に右の眉毛だけを持ち上げる。
「越後(新潟本州部分)の長尾が支援を申し出たのと、居城である七尾城に絶対の自信があるのでしょう」
七尾城は史実だと、戦巧者の上杉謙信を相手に一年守り切った程の堅城である。尤も、上杉謙信が攻め込んだのは30年程後の話だけどね。
「最近だと、越前(岐阜北西部を含む福井嶺北)や加賀(石川南部)で派手な遠距離攻撃をやっただろ?情報が届いていないのか?」
元就さまがそう指摘する。
「越前や加賀での火砲を使った攻撃については、意図的に大袈裟なモノから寡少気味なモノまで、御伽衆を使って色々操作しましたので・・・」
俺はそう返す。人間って、集まった情報が絶望的だと、自然と自分に都合の良い情報に縋るからね。
「尚、七尾城に対しては夜間の艦砲射撃の演習を行う予定です」
「ふむ。能登侵攻に関しては、北畠殿とお主に任せたから口出しはせんが、ちと畠山に厳しくないか?」
元就さまは苦笑いを浮かべる。まあ、畠山氏にしてみればトンデモないとばっちりなんだけど、俺としては、堅城と名高い七尾城を相手に照明弾と新型砲弾を使った夜間艦砲射撃の実戦訓練がしたい。原材料も入手できる量に限りがあるから、気軽に使えないんだよね。
なお、海上から城とか砦に対して実戦演習を仕掛けることが出来る他の候補地となると、尾張(愛知西部)になるけど、尾張はこれから戦国時代中期以降を彩る人材を産出する宝の山だ。直系の人が死ぬ確率を上げることは出来るなら避けたい。尤も、これを尾張を攻撃しない理由にはできないので、良好な港と東海道の西の起点を破壊するのは勿体ないって事にはしているけどね。
「御屋形さま。某は、畠山に厳しいのではなく、商売で面識のある織田に甘いのです」
俺の言葉を聞いて、元就さまは大爆笑された。
- 摂津 大坂城城下 畝方屋敷の一室 -
「さて・・・」
肩をグルグル回しながら、ガチャ箱の中に報告書の下書きやら書き損じ、壊れた陶器の破片やらを投入していく。
最近は紙も陶器も価値はかなりお手頃な価格になっているので大量に投入しないといけない。
ただ、稀に同じ枚数の書類を投入しても価値が上がる書き損じの書類が出てくる。調べたら、筒井藤松くん島清国くん鷹山弘頼くん細川和匡くんといった近畿でのプチ有名人の名前がチラホラ・・・
うん。領内の武官文官の書いた書類を一度集めて実験してみよう。何か引っかかる人材がいれば儲けものということで。なんで今まで気付かなかったんだろう。
「ガチャターイム!何が出るかな、何が出るかな、ちゃらぁららら、ららららぁ、ぽちっとな」
俺は、怪しいリズムを口ずさみながらガチャ箱のボタンを押す。
がしゃん
SR 西洋唐花草×10
ドロップしたのは竹の支柱の刺さった10個の素焼きの鉢。刺さった支柱には、蔓が巻き付き、ギザギザの広卵形の葉っぱと蔓の先に円錐状の実が付いている・・・これはもしかして、麦酒に苦味や香りを付け、更に雑菌の繁殖を抑えて保存性を高める働きがあるというアレじゃないか?
一応、香草やら香辛料で苦みを付けた、いわゆる古式エールというやつは今まで試作と称して作っていたんだけど、ふふふ・・・これでのど越し爽やかなビールが出来る!




