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元就の野望~全国版~。わたしはガチャを駆使して補佐します  作者: 那田野狐
第23章 中部にマムシはいるか? 編

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第13話 中部にマムシはいない。いるのは人誑し

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 - 美濃(岐阜南部) 大桑城 -

 - 三人称 -


 一揆勢が太鼓を叩き声を上げながら領内に侵入したという情報を受け、領民のただならぬ気配を察知した土岐頼芸は、即座に建築中の守護所を放棄すると、大桑城へと逃げ込んだのだ。お蔭で大桑城までの道中は邪魔されることなく進むことが出来た。


「余裕ですな」


 最初に会った時とは違いボロな鎧に身を包んだ稲葉良通が苦笑いしながら聞いてくる。稲葉良通の鎧がボロなのは、一揆勢に国人衆が合力していると悟られるのを防ぐためだ。尤も、土岐頼芸は早々に大桑城へと引き籠もってしまい、偽装したのは意味が無くなっている。

 ちなみに斎藤利政、伊賀定重、氏家行隆の連合軍は、ある程度攻撃したら大桑城の救援を装って接近する予定なので、ここから数刻ほど離れた所で待機中である。


「城から腰抜けを蹴り出すだけのお仕事ですからね。しかし、身内同士のいざこざで流浪していただけに、こういう気配には敏感だな」


 声を掛けられた松永久秀は、畝方元近から借り受けた仙人の双遠鏡(双眼鏡)で大桑城を見上げる。


「申し上げます。明智弥次郎殿の使者と名乗る者が尋ねて来ております。如何いたしましょう」


 伝令の一人が明智光安の使者が来たことを告げる。松永久秀はすぐに通すように命じると、明智光安の使者はすぐにやって来て、明智光安の弟で明智光久だと名乗った。なお、明智軍は斎藤利政、伊賀定重、氏家行隆の連合軍とは反対の北側の所に布陣している。


「降伏した土岐美濃守は尾張(愛知西部)に追放。明智殿には斎藤殿と共に、土岐美濃守に引導を渡す。今のところ事前の打ち合わせ通りです」


「はっ・・・」


「守護家で宗家でもある土岐氏の現当主を美濃から追い出すことに気が乗らないのは判るが、下手を打ったのは土岐氏の当主だ。追放で済ませるのは慈悲だよ」


 いまいち納得していないような顔をしている明智光久に、松永久秀は囁くように話し掛ける。尤も、土岐頼芸の尾張追放は尾張に因縁を吹っ掛けるための下地作りなので慈悲でも何でもないのだが。


「下手を打った?」


「毛利が近隣の越前(岐阜北西部を含む福井嶺北)と近江(滋賀)を占領したのに、何の策も打たず自分の家を建てる事を優先。美濃領内で毛利の調略を許したのだ。こうなったのも自業自得だろ?」


 松永久秀は嗤う。


「なに、獲物を追い出す準備は出来ているのでご安心を」


 松永久秀は余裕たっぷりに断言する。松永久秀に余裕があるのは、前以て大桑城の攻略方法についての幾つかを毛利の戦略研究会から提案されており、そのための準備も済んでいるからだ。


「では、後程」


 話は終わったと松永久秀は頭を下げ、明智光久に立ち去るよう促した。


 ・・・

 ・・

 ・


「作戦開始だ」


「はっ」


 松永久秀の側にいた伝令係が合図を送る。


 どどん!


 大桑城、大きな音が響く。


「合図だ。作戦乙開始。火炎瓶用意」


 命令のもと十数人の兵達の手に、口に布を詰めた陶器が握られる。


「投擲開始!」


 布に次々と火が付けられ、大桑城のある山の麓から中腹に投げ入れられる。


 轟


 投擲された陶器の瓶の幾つかが火柱を上げて、麓から城へと火の道を作りながら駆け上がっていく。


「大桑城に火龍が・・・駆け上っていく」


 一揆勢が呟くように、五本の火龍は大桑城の西側の壁へと辿り着き、あっという間に城へと燃え移る。これは、前の晩に毛利の御伽噺衆達が、油をたっぷり浸した藁束をこれまた油がたっぷり染み込んだ縄で数珠繋ぎしたものを山の斜面から城壁に向かって設置していたからだ。


「おー燃える。燃える。まあ、毛利の城では、まずあり得ん光景よな」


 松永久秀は、ぽんと膝を叩く。実際、現在の毛利領にある城は、火災被害軽減のために城の土壁をコンクリートで被覆するとか、壁そのものをコンクリートにするとか色々と工夫されており、外部から火矢を撃ち込まれた程度では小火すら起きない。やがてバタバタと大桑城の城兵が消火活動を開始したが、山にある城に籠城した以上は消火活動に水を使うことは出来ないので火が消える気配は全く無い。


「煙玉投入」


 大桑城の火災の具合を観測していた松永久秀は頃合いとみて命令を下す。次々と火元に投げ入れられる導火線のついた黒い玉。やがて大量の黒煙が空を覆う。少しして一揆勢がいた所とは別の場所から鬨の声が上がった。


 - 加賀(石川南部) 金沢城(仮)予定地 公務の館 ー


 - 主人公サイド ー


 カンカン


 執務室で廃棄予定の書類をガチャ箱に投げ込んでいると、床の間に置いてある小狸の茶釜が乾いた音を鳴り響かせる。


「首領。美濃の土岐美濃守が尾張に追放されました」


 世鬼近矩くんが床の間の掛け軸の裏から現れる。


「予定通りだね。さすが内部工作に長けた松永殿と斎藤殿だ。これで安心して京に行けるよ」


 斎藤利政さんと松永久秀さん。後年にマムシとか梟雄とか言われる二人だけど、どちらかというと稀代の人誑(ひとたら)しだよね。


「能登(石川県北部、能登半島)が雪が解けるまで動けないのが確定したのは大きいですね」


 世鬼近矩くんが言うように、能登は今年の記録的な雪の影響で領内の屋敷や蔵が倒壊したり道が崩れたりした影響で畠山は軍を起こす余裕が無い。毛利としても、最悪は尾張への軍事侵攻という計画を控えている状態で能登にちょっかいを出されるのは面白くないからね。


「能登畠山に計を仕掛けておきます」


 世鬼近矩くんが策を献じる。


「越後(新潟本州部分)の長尾は加賀(石川南部)の毛利に越中(富山)に出張って欲しくない。畠山とは仲良くしたい・・・辺りが妥当ですかね」


「了解しました。それで煽っておきます」


 俺の言葉を受け世鬼近矩くんは頭を下げた。

タイトルはあの作品の作中での会話

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[一言] > 斎藤利政さんと松永久秀さん。後年にマムシとか梟雄とか言われるふたりだけど、どちらかというと稀代の人誑しだよね。  この世界なら、ふたりしてボンバーマン扱いじゃないかな?(白目)  …
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