第5話 そういえば別府に明礬温泉とかってあったよね?
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三好海雲→三好元長
1536年(天文5年)8月
- 京 山城(京都南部) 施薬不動院 -
「何が出るかな、何が出るかな、ちゃらぁららら、ららららぁ、ぽちっとな」
怪しいリズムを口ずさみながらガチャ箱のボタンを押す。
がしゃん。ぽん。
SSR 豚の巨大貯金箱
なんぞこれ?陶器製の成猫ぐらいの大きさの巨大貯金箱は一部が欠け色も褪せておりかなり年季がはいっている。手に取って見るとずっしりと重い。もしかして中身が・・・
抱えて貯金箱のお腹の部分を見ると、取り出し口がない。古典的な金槌と泣いてる豚の貯金箱のイメージが浮かぶ。
「たしか・・・」
引き出しを漁り少し厚めの紙を取り出す。この手の貯金箱から中身を取りだす方法は壊すだけではない。中身の貨幣の重さに負けない厚さの紙でレールを引いてやることだ。
かさかさと貯金箱を振ると投入口から逆流するように数枚の1円玉が零れ落ちてくる。その数1000枚。現代日本では1円の価値しかない貨幣だが、ここでは一枚が重さ一グラムのアルミニウムの塊である。
「アルミといえば・・・」
ピンと閃くものがあり、アイテムボックスから序盤以降言及がなく大半の人は忘れ去ったであろうタブレットを取り出して起動し、日本、アルミ、産地で検索をかける。
なぜ出番が無くなったかというと、【ノセタラダマクラカスの大予言】という予知っぽいものが無くなったからだ。なんと言っても歴史が変わり過ぎだ。例えば三好海雲さんのように本来なら4年前に死ぬはずだった人間が生きていたり、本来なら生きていた人間が死んだことで生まれてくるはずの人間が生まれなかったり・・・疱瘡の大流行を矮小化させたり一向宗を早々に畿内から叩き出したのが大きいんだろうなぁ・・・神さまが更新するのがめんどくさくなって放り出した可能性が一番高い気がする。
ああ、やっぱり・・・日本にも精製効率はボーキサイトに劣るけど、アルミを含む鉱石があったよ。硫酸カリウムアルミニウム十二水和物。別名ミョウバン。毛利氏の支配下地域での産地は薩摩(鹿児島西部)、豊後(大分南部)、備前(岡山南東部)、播磨(兵庫南西部)。なんとなくお察しできるだろうけど、温泉とかでも取れる鉱物だ。そういえばインドネシアやベトナム、マレーシアでもそれなりのボーキサイトが出るんだっけ。
「いやーもっと早く気が付けばよかった。これでもっと良からぬものが作れる」
思わず悪い顔をしてしまう。
「畝方さま。公方さまより先触れの使者がお見えです」
廊下から小姓として俺に付いている嫡男の三四郎の声がする。
「判った。公方さまが来られたら、本堂にお通しするように」
貯金箱と大量の一円玉をアイテムボックスに仕舞い込み席を立つ。
「公方さま。此度の御成、誠に感謝しております」
上座の足利義晴さんに向かって俺は頭を下げ、一貫文の銭が収められた「藪椿色の御菓子」と書かれた桐箱を差し出す。足利義晴さん幕府の財政立て直しにご先祖様が頻繁に行っていた五山禅院・・・いや、施薬不動院も含めた「六山院への御成」なるものを再開させたのだ。
ちなみに「五山禅院への御成」というのは、簡単に言うと信仰厚い将軍さまが禅寺に参拝して寺の権威を上げる代わりに寺から寄付という名の袖の下を貰う。将軍さまは貰った袖の下を他の寺に幕府からの予算ということでばら撒いて寺院からの支持を出向く経費だけで済ませるという節約術?のひとつだ。
政敵細川六郎を完全に追放し、かつての栄光よ再びということなのかもしれないが、失敗する未来しか見えないんだけど・・・なお、五山禅院に施薬不動院が足されたことについて五山禅院の側から異論は出なかった。これは京で疱瘡が流行し俺が鎮圧したときに五山禅院の中の建仁寺と東福寺と縁を持ち、今でもそれなりの付き合いがあったからだ。
「これは有難く。ところで例の話を通して頂き感謝している。明日、本国寺で山科殿との話し合いとなる」
足利義晴さんがホクホク顔で僅かに頭を下げる。他人の目があるから大っぴらに頭が下げられないのだ。ちなみに本国寺は日蓮宗・法華宗の僧であり京の六条堀川への移転に尽力した日静が足利尊氏の叔父だったということで足利氏にも深い縁のある寺だ。
足利義晴さん、足利幕府再興の志も高くという事だろう。
「本国寺か・・・なんか、いやな予感しかしない。半蔵くん」
「はっ」
足利義晴さんが本堂から退出したので服部半蔵くんを呼ぶ。
「山科殿の警護に付いてくれ。最悪、他は見捨てて構わない」
「御意」
服部半蔵くんは静かに頭を下げる。そう。一応、手は打っておこうと思う。
ああ、そういうモノもあったよねの使わなくなったのは・・・というお話
そして次の話のネタ振り




