第4話 朱金のマモノ襲来
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某カク○ムサイト丸コピ事件を受けてのネタ話
ー 山城(京都府南部) 施薬院 鍛錬場 -
「しっ、せい、せい」
頭に浮かぶ刀の軌道を追いかけて手に持った粗く削った長さ150cmの木刀を振り抜く。空のスクロールのコピー実験だが、空のスクロールはそれぞれSR陰流の心得・SR天真正伝香取神道流の心得・SR陰流の心得に変化した。
さらに『おや?スクロールの様子が・・・』という謎メッセージが出て、SR陰流の心得がSR天真正伝香取神道流の心得と融合してSR真・陰流の心得にSR真・陰流の心得とSR陰流の心得が融合してSRシン・陰流の心得に変化したよ。新陰流じゃないのは大胡秀綱さんに忖度したのか受けを狙ったのかあの神様だから後者臭いな。
とりあえずSRシン・陰流の心得を使用してみる。おお、単なる剣術スキルが剣術(シン・陰流(序))に変化した!って(序)ってなんだよ。
ただ、体得したのが陰流の流れを汲むものなのかどうかは判らない。司箭院興仙さんや確実に陰流を修めている大胡秀綱さんなら解りそうだけど、いま司箭院興仙さんは台湾での開発事業を毛利義元くんへの引き継ぎのために安芸(広島)に出向いているし、大胡秀綱さんは家族を迎えに先日常陸(茨城)へ出発したばかりだ。なので、今は頭に刻まれた陰流の色々な型をなぞるように素振りを行い、型を身体に覚えさせる。
ちなみに俺の頭に刻まれたシン・陰流の基本は神速を貴ぶ。蝶のように舞い蜂のように刺すだ。基本動作の「たね」。超近接での武器捌きである「たん」。フェイント動作の「かす」。
相手に連撃を叩き込む三光、四光、五光。相手の攻撃をいなしつつ攻撃を連続で叩き込む猪、鹿、蝶。無手から相手の武器を奪う酒盗の花見、酒盗の月見。短刀や拳による超近接攻撃の赤短、青短。
脳裏に浮かぶ技や奥義の一覧に「花札かい!」と突っ込んだ俺は悪くないと思う。
「首領。急ぎお知らせしたいことが」
どこからともなく服部半蔵くんが姿を現す。
「なにがあった?」
持っていた木刀を近くにいた小姓に渡し代わりに差し出された手拭いで汗をぬぐいながら尋ねる。
「鞍馬の御山に巨大な熊のような化け物が現れ、住民に被害が・・・」
服部半蔵くんは僅かに顔を歪める。
「巨大な熊のような化け物?」
「はい。体長はほぼ10・・・いえ体長はおよそ3メートル。全身の毛はほぼ黄金色。しかし胸部から肩にかけては燃えるように紅いということです」
なるほど。出没しているのはツキノワグマではなく本州にいるはずのないヒグマか・・・
「恐らくそれは蝦夷(北海道)に生息していると言われるヒグマと呼ばれる種類のクマだな。エサに対する執着が凄い」
エサと聞いてますます顔を歪める服部半蔵くん。
「既に住民が襲われたという事は、そのヒグマは人をエサと認識している可能性が高い。なるほど」
僅かに考え込む・・・ような仕草を見せる。
「逆茂木による檻でヒグマを囲むため工兵衆を招集。加えて追い込みに狼を動員。ライフルの使用を許可する。少数では歯が立たないから遠慮はするな。檻に追い込み大人数で包囲したうえで始末する。私も出るぞ」
先年、三河(愛知東部)岡崎城で実戦デビューを果たし、調整のち部隊配備をはじめたライフル銃の使用を指示する。
「はっ」
姿を現したときと同じように・・・いや、数枚の木の葉を撒き散らせながら服部半蔵くんは姿を消す。突然木の葉が舞えばミスディレクション・・・意図的に意識を自分から分散させ更に消えたと錯覚させやすいという教えを完璧に活用しているようだ。木の葉が舞って無くても俺では服部半蔵くんが消えたと錯覚するんだけどね。
「ということだ。3番武具の用意と軽食の手配を頼む」
「はい!」
手拭いを受けとった小姓が小さく頭を下げとてとてと屋敷の方へと走っていった。
「首領。朱金瓶が鞍馬の山腹にある檻に入りました」
猿面を付けた御伽衆の一人が簡易の作戦会議の場に駆け込んできて報告する。朱金瓶というのは金色の毛のヒグマの作戦名だ。金色のクマだと話がうっかり漏れたときに大変な騒ぎになるから特別な呼称を用意した訳だ。
何故その名前にしたのかというと、元ネタのほうだと紅いズボンに蝶ネクタイをした黒い鼠を召喚しかねないからだ。いや、こっちも相当にヤバいか?
「では行こうか」
脇に置いていたかつてネタで作った長さ150cmの野太刀をむんずと掴み立ち上がる。防具は籠手と脛あて、そして皮鎧という紙装甲。3メートルのヒグマ相手に重装甲は意味がないから動けることを重視する。ただ装備ナシは流石に誰も許してくれないからね。
「正面からみたら、ヒグマというより手と耳が金色のパンダだな」
目の前の、逆茂木という名の檻の中にいる狼たちにとり囲まれた金色と朱色のツートンカラーのヒグマをみて思わず呟く。目の周りがエサを喰らったためか、血でパンダ模様に汚れているので尚更そう見える。
「パンダ、ですか?」
「三国志でいう蜀という国の西北、西蔵という地域に生息している珍獣だ」
毛利領では娯楽として馴染みのある三国志演義を使っての位置説明にいつのまにか現れた服部半蔵くんが納得するように頷く。
「首領。ライフルの配置、逆茂木での封鎖、完了しました」
「流石。終わったら関わった工兵に特級酒とツマミを振舞おう」
俺は懐から金属製の犬笛を取り出すと、勢いよく犬笛を吹く。途端、ヒグマを取り囲んでいた狼が周囲へと散る。逆茂木はヒグマの行動阻害を目的に配置しているので狼たちは逆茂木の隙間を縫って外へと脱出する。
おおおおーんん
全ての狼が逆茂木の外に出たことを一頭の狼が遠吠えで伝える。
「放て!」
ダン!ダン!ダン!
俺の号令のもとライフル銃の複数の轟音が鳴り響く。同時にズズンと音を立てヒグマが地面に倒れる。
「やったか!」
「誰だ旗立てた馬鹿は!油断することなく掃射!」
服部半蔵くんの怒声が響き、すぐさまヒグマに向かってライフル銃が火を放つ。
ダン!ダン!ダン!
ダン!ダン!ダン!
いまライフル銃には、現在3発の弾丸を弾倉によって装填する機構を実装しているので三連射まで弾幕は途切れない。
「次弾装填、命令があるまで待機。シン・陰流を見せてやろう」
俺は手に持っていた野太刀を抜き、逆茂木を抜ける。そして一歩一歩ヒグマに近づく。
ヒグマとの一足の間合いに入ろうとした瞬間、血まみれのヒグマが仁王立ちに立ち上がる。
馬鹿め。そんなお約束、お見通しだ。俺は野太刀を地面ギリギリに構える。
「芒雁」
一気に間合いを詰め、飛び上がりながらヒグマの胸を跳ね上がるように逆袈裟切り。
「梅鶯」
そこからヒグマの肩口目掛けて上段から繰り出される打ち下ろし。
「松鶴」
そしてヒグマの喉をめがけて刺突が放たれる。うん。技名を叫びながら連続攻撃とか厨二病ね!。
ぞぶっという感触とともに野太刀がヒグマの喉を貫く。叩き込んだ剣戟に要した時間は一分。
「藤不如帰・・・シン・陰流奥義がひとつ、四光」
野太刀がすっと横に滑り、ヒグマの首が皮一枚残して下にズレる。
ばしゃとヒグマの首から血の噴水が吹き上がる。
「おおっ」とどよめきの声が上がるが、瀕死のヒグマに止めを刺したに過ぎない。
「逆茂木を積んできた荷車に朱金瓶を積んで施薬院まで運ぼう。毛皮は敷物だな加工できる職人を手配しておいてくれ」
「はっ」
服部半蔵くんが持ってきた野太刀の鞘に刀身を収める。
「じゃあ、凱旋だ。勝鬨を上げろ」
「「「えいえいおー」」」
鞍馬の山に勝鬨の声が上がった。
なお後日、朱金の大グマを一刀で斬り伏せたというヒレの付きまくった噂が拡散。後に大胡秀綱さんや愛洲宗通さんを巻き込んで畝方シン・陰流なる流派の剣術が創始されることになる。
某カク○ムサイト丸コピ事件を受けて、ツイッターで呟いたところまさかの「いいね」しかも2個
スキル復活(多分今回限り)となりました
※朱金瓶で統一




