第9話 京極飛騨守高延のターン
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人物
島津忠近→史実の島津忠将
戸次鑑近→史実の戸次道雪(一門衆養女ひなげしの夫。)
1535年(天文4年)8月
- 北近江(滋賀北半分)衣川城 天神川 -
美濃(岐阜南部)に攻め込んだ京極高延軍の後詰めとして衣川城を出立した京極高清軍約1000人が京極高延さんの本拠地である京極氏館を攻めた。で、要請を受けていた毛利氏は京極高清軍の後詰めとして2000の兵を出した。罠の懸念があったけど、罠ごとかみ砕けばいいと脳筋さんたちに説得させられた。
台湾開拓のための要望書を会議で通すのに脳筋さんたちに根回ししたのもマズかった。「短期での借りの完済おめでとう」とか言われたよ。
後詰めを率いるのは、史実では坂氏の乱で死んだ渡辺勝さん。俺も兵1500を率いて衣川城の接収と補給の拠点化を行うために出立する。新しくゴーレム二体の使役が可能になったということで、拠点作りに駆り出されたからだ。
「なんか凄いですね」
島津忠近くんが感嘆の声を上げるその先には、ものすごい勢いで衣川城の北にある天神川の川底を掘削して土のブロックを量産している一体のゴーレムの姿があった。
このゴーレム、ミキサーゴーレムといって両手両足から最大で四種類の材料を吸い込んで攪拌し、腹からブロック状のモノをつくりだす特殊ゴーレムだ。やったね。港や川の浚渫が捗るよ・・・そうやって川岸に積み上がった土のブロック(煉瓦)は近隣から仕事を求めて集まって来た農民たちがリヤカーに積み込み衣川城へと運んでいく。土のブロックは建設予定の土蔵の壁になる予定だ。
「衣川城は当分のあいだ軍事拠点としても運用するのですよね?」
戸次鑑近くんが尋ねてくる。
「比叡山と越前(岐阜北西部を含む福井嶺北)を押さえるのに、ここは便利だからね」
と返す。
「もし朝倉がくるなら総大将は朝倉の軍奉行である朝倉太郎左衛門尉殿ですか?」
戸次鑑近くんの問いに「だろうね」と肯定する。朝倉が動いたら、来るのは十中八九、戸次鑑近くんが予想した通り武神朝倉宗滴さんだろう。え?俺の義娘である朝顔が朝倉宗滴さんの義息である朝倉景紀さんに嫁いでいるじゃないかって?残念なことに朝倉側の家臣の横槍が入って同盟締結にまでは至ってないんだよね。
まぁ、朝倉氏が毛利氏の勢力下に組み込まれた場合、家臣は扱いが下がると思っているのだろうから、朝倉家臣が同盟に反対するのも判らないではないけどね。そして同盟関係でなければ朝倉宗滴さんが毛利氏と戦うことに躊躇うことはないだろう。
「「武神を相手に、わが毛利は勝てますか?」」
島津忠近くんと戸次鑑近くんが目をキラキラさせながら聞いてくる。
「改修が完了した衣川城に籠って守っていれば負けないだろう。どう頑張っても宗滴殿の身体は一つしかないからね」
島津忠近くんも戸次鑑近くんも俺が不在なときに敵に攻められたときにどう対処すべきかを示されたことに気が付いて笑う。朝倉宗滴さんは、野戦でも攻城戦でも攻めても守っても洒落にならない武勲を挙げている化け物だ。ただその武勲に朝倉宗家が頼り切っていて後継たる人物が育っていない。なので勝てないけど負けないようにすることはできるのだ。
「なるべく早く兵糧を溜め込むのとあとは三国崩しが何門か欲「畝方殿!畝方殿は何処に!!」」
戸次鑑近くんの言葉を遮るように、肩に矢の刺さった兵士が大声を発しながら俺を探してやってくる。
「畝方施薬大輔である!何用だ」
俺が叫ぶと兵士が駆け寄って来て片膝をつく。
「京極中務少輔殿、渡辺左衛門大夫殿と上平寺城と京極氏館を攻め落とすも美濃(岐阜南部)より帰還した京極飛騨守と浅井備前守の軍勢5,000により包囲されて苦戦。援軍を求むとのことです」
緊急事態である。というか京極と浅井でこの時期に兵5,000とか中々豪気だな。六角が色々と支援しているのは間違いないだろう。ああ、京極中務少輔というのは京極高清さん。渡辺左衛門大夫というのは渡辺勝さん。京極飛騨守は京極高延で浅井備前守は浅井亮政のことね。
「ここからも斥候と御屋形様に使者を出す。貴殿は評定まで城で傷の手当と休息を。鑑近、忠近。手配を頼む」
「はっ」
三人が衣川城のほうに走っていく。
「半蔵」
「はっ」
どこからともなく服部半蔵くんが姿を現す。
「上平寺城の左衛門大夫殿に手紙を出すので届けて欲しい。それと湖賊を引き込め、六角の監視も倍に増やす」
「御意」
現れたときと同じように服部半蔵くんは姿を消した。
史実と名前が違う場合の表記を前書きに書いてみたり




