第2話 1529年一年の計は1月にあり
説明回その2
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1529年(享禄2年)1月
「これより新年の方針会議を行う」
元就さまの宣言と共にその場にいた全員が頭を下げる。まず俺が京で行った朝廷への工作で元就さまが従三位になることと幕府から九州探題職に任じられること。屋形号の名乗りを許されるだろうということ。それに伴い連名で献金した大内義隆くん、島津貴久くん、龍造寺家兼さんにも官位が与えられることを報告する。
今後、官位などの朝廷工作の窓口が俺に一本化された瞬間でもある。ちなみに屋形号というのは、守護以上の身分とされる足利氏や、大内氏や細川氏、今川氏、武田氏といった代々有力な守護大名。室町幕府で要職に就いた家や大きな功績を立てた家の頭領が呼ばれることを許された称号。
元就さまは、九州の平定と度重なる朝廷や幕府への献金という大きな功績を認められて、九州探題という地位につきなさいと、朝廷から「お墨付き」を貰ったことになる。屋形号は九州探題のついでだ。まあ、越後(新潟本州部)の長尾為景は朝廷や幕府への献金だけで屋形号を貰っていたりするから、時間の問題だったかもしれないけどね。
あと、「安芸守とか名乗りたいときはお金と一報をよろしく。自称でないのを貰ってくるから」と言ったら笑われた。まあ今では「カッコイイ」と「これから攻めに行きます」という大義名分に役に立たない称号だからね。
そうそう、毛利氏の九州平定を機に家臣の全員が領地を元就さまに返上して、銭による俸禄に切り替えたよ。今後四国から東に進むので、戦働きと領地経営の両立はハッキリ言えば無謀だからね。
この方針で、家臣団が大きく四つに分かれることになった。主に戦働きをする家臣団、主に内政をする家臣団、主に領内の治安維持をする家臣団、そしてそれらの監督と取りまとめ、それと外交を担当する家臣団。
戦働きをする家臣団には腕に自信のある若者が、内政をする家臣団には老練な者が、治安を維持する家臣団には戦場の一線を退いた者が、取りまとめをする家臣団にはそれなりの領地を持っていた国人や大名の頭領だった者が就いた。もっとも、戦働きをする老練な者もいれば内政に携わる若者もいる。この辺は希望と適正で振り分けたよ。
俺は、矢滝城の城主から御伽衆の首領に復帰・・・ではなく四つの家臣団で問題が起きたら派遣される五つ目の家臣団のトップになった。名前はそのまま御伽衆だけどね。そして、普段は毛利領内の経済活動と戦で荒廃した場所の復興を差配する家臣団でもある。
九州統一が、豊後(大分南部)への強襲上陸作戦の成功と、以後それを支えた物資の輸送体制にあったことを、家臣全員に納得するまで説明したので、我々を侮る者はいない。多分。
それと俺の御伽衆への復帰に合わせて、拠点を広島城へと移した。まあ、石見銀山の開発と私鋳銭製造は俺の担当なので、それらを差配している矢滝城は俺の第二の拠点として確保している。あと今後、尼子氏と険悪な状況にならないとも限らないしね。
内政に関しては、九州の検地とそれに伴う大規模整備。外交は尼子氏と朝廷への支援と四国国人への圧力。伊予(愛媛)の河野氏は臣従することで話が進んでいる。南伊予を拠点とする西園寺氏と土佐(高知)西端を拠点とする一条氏は公卿なので、収入を保証すれば何とかなるかもしれない。
讃岐(香川)の三好とは若干の友好関係があるので何時でも支援できるよう早めに東伊予に侵出することを決定する。
- ☆ -
「今年の御伽衆としての活動方針を話しあいます。希望はありますか?」
俺の言葉に空気が締まる。御伽衆に所属する武将は、俺と補佐の司箭院興仙さん。情報部の今川貫蔵さん、世鬼煙蔵さん、服部半蔵さん。貿易担当の大内義隆くん、陶興房さん、龍造寺周家さん。
道路の整備を含む物流部の弘中興勝さん、伊作又四郎くん、鍋島清房くん、戸次親守くん、伊東祐充くん。
西海毛利水軍の福井元信さん、山県就相さん、日祖一徹、日祖徹男の計17人。九州を拠点にしていた武将が多いのは、当面は九州の経済振興がメインだからだ。
「師匠。対明貿易を任せて貰えますか?」
大内義隆くんが手を挙げる。すると福井元信さん、山県就相さんも「「某も」」と言って手を挙げる。もともと対明貿易は大内氏が手掛けていた事業である。是非もない。
「では、山陰から九州の海路は我ら親子が」
日祖一徹、日祖徹男の親子が手を挙げる。
「我は国内の海運の受け入れに従事しましょう」
陶興房さんと龍造寺周家さんが手を挙げる。
「では陶殿は本州と筑前(福岡北西部)を龍造寺殿はそれ以外の九州の各港をお願いします」
「「御意」」
ふたりは深く頭を下げる。
「では我らは、まず九州の主幹道路の整備と関所の廃止。楽市の整備ですな」
物流部の弘中興勝さんが音頭を取って宣言し、伊作又四郎くん、鍋島清房くん、戸次親守くん、伊東祐充くんが大きく頷く。なお、整備すべき九州の道路はゴッドアイアースで既に選定済みだ。
なので、若い彼らでもそう問題は起きないだろう。その辺は弘中興勝さんに気を配ってもらおう。
「うむ。事前の根回しは大事」
「ですよねー」
最後に全てをぶち壊す司箭院興仙さんだった。




