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元就の野望~全国版~。わたしはガチャを駆使して補佐します  作者: 那田野狐
第2章 有田中井手の戦い編

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第6話 有田城に吹く嵐の前のなんとか

閲覧・感想・ポイント評価・ブックマーク・誤字報告ありがとうございます


1517年(永正14年)6月


 武田元繁が山縣郡今田城に入城して先ず行ったのは、今田城周辺を拠点にする国人に対する従属命令だった。そもそも安芸武田氏は、甲斐武田第5代当主武田信光が承久の乱の恩賞で安芸(広島)守護職と安芸国佐東郡を得て佐東銀山城を拠点にした縁から始まる。しかし武田信光の死後、安芸守護職は分裂した武田信時系の武田氏が引き継ぐことになるのだが、勢力は徐々に衰退していく。


 再び安芸に武田氏が勢力を取り戻すのは、甲斐武田9代目当主である武田信宗が安芸守護職を引き継ぎ安芸に下向し武田山に銀山城を再建させた頃だ。続く甲斐武田10代目当主の武田信武は安芸の南朝側勢力と戦うため次男の武田氏信を送り込み、武田信武の死後は武田氏信がそのまま安芸守護を受け継ぐ形で安芸武田氏として独立することになる。

 もっとも、安芸守護職は武田氏信が安芸国内の南朝方の討伐に失敗したことを理由に剥奪される。だが、太田川流域に強固な地盤を持っていた武田氏信を恐れた幕府は武田氏信を佐東郡の分郡守護に任じる。(なぜ剥奪したし)


 武田信在、武田信守、武田信繁、武田元綱と代を繋ぎ、現在の当主武田元繁は佐東郡・・・現在の広島市西区の一部、安佐南区の大部分、安佐北区の一部。山縣郡・・・安芸太田町、北広島町。安南郡・・・現在の安芸郡及び矢野の三郡を支配。さらに数年前に、厳島神主家の争いに介入し、東方を支持した際に手に入れた佐西郡大野河内城・・・現在の廿日市市大野。更に言うなら厳島の対岸までを支配下に治めた小大名でもある。


 まあ、ものすごく簡単に言えば、安芸の真ん中を広く支配している実力者からの従属命令だ。しかも、もともと山縣郡は、武田方である壬生氏・有田氏・今田氏の領地である。国人衆はつぎつぎと武田氏に従属していった。



「予想、通りに、なった、な」


 元就さまが、俺の贈った槍を振りながら声を掛けてくる。当然のことだが槍の穂先にはカバーがしてあり刃は露出していない。で、元就さまが言う予想通りというのは、武田元繁の有田城攻めが秋になったことだ。

 そもそも、入城から出陣まで一気呵成にいくなら、2月に入城することはない。農作の主力である米は、5月までには田植えの準備を終わらせなければならない。また、自分たちが食べるための麦・粟・稗・豆も重要な農作物であり米だけを育てる訳にもいかないのだ。

 2月に攻め込み、少しでも戦が長引けば、農繁期に多大な影響を与えるからね。


「そう、ですね」


 元就さまの振り回す槍を受け流しながら俺は答える。何をやっているのかと言うと、俺が元就さまに槍術を教えている。なにしろ元就さま。努力を他人に見せたくないタイプの人だ。いろいろ時間を空けては俺の元に来てこっそり槍の稽古をしている。

 稽古と言っても、人に教えるスキルは無かった(過去形)ので、最初は俺の持つ槍術スキルによる型を披露して素振りをして貰う。あとは時間が許す限り打ち合いをしていた。


 元就さまが10回打ち込み俺が全部受けて1回反撃。つぎに俺が10回打ち込み元就さまが全部受けて1回反撃。元就さまの攻撃が入れば元就さまの打ち込み回数が減り、俺の攻撃が入れば元就さまの打ち込み回数が増える。

 最初は元就さまが30回攻撃して、俺が1回打ち込む!みたいなことになったが、流石は武家の頭領。田植えが済んだころにはお互いに実戦に近い打ち合いにまでになっていた。元就さまのステータスのスキル欄には、会ったときには無かった槍術がしっかり記載されている。


「では次は、太郎三郎殿」


「おう」


 志道太郎三郎広長さんが愛用の槍を持って俺の前に立つ。槍の穂先は当然のことながら以下同文。ちなみに志道広長さんは、初めて元就さまと出会ったときに一緒にいた二人のうちの一人だ。志道広長さんとは最初から実戦形式の打ち合い。というか志道広長さん本気です。目が違います。

 結局、俺も志道広長さんも青あざだらけになりました。



「この田植えの手法はどんな意味があるのかのう」


 稽古が終わり、四郎と六郎太の家の縁側で湯飲みに入った水を啜りながら元就さまが笑う。


「真っすぐ植えることで雑草の排除の手間を省き、間隔を開けることで育成を助けるとか」


 志道広長さんも湯飲みの水を飲みながら唸る。


「お待たせしました。蒸かし上がりました」


 俺は竹籠・・・蒸篭(せいろ)を抱えて家の奥から出てくると、志道広長さんが小躍りしながら蒸篭を受け取る。志道広長さんは、俺が献上した唐芋(サツマイモ)の甘さと旨さの虜になった人だ。


「おお」


 志道広長さんは蒸篭のなかに鎮座する大振りの蒸し上がった5本の唐芋(サツマイモ)のうちの一本を取り出し俺に渡す。毒なんて入ってませんよアピールのため半分に割って皮ごと丸かじり。暫く時間を置く・・・

 何も起きないことを確認して、今度は志道広長さんが一本を取り出し丸かじり。それから暫く待って、ようやく冷めてしまった芋を元就さまが食べる。ま、芋を収穫するとき畑からの直送で焼き芋パーティにするのでそれまで熱々の芋は我慢してください。

 なお、唐芋(サツマイモ)は育てやすく、量が確保でき、ある程度の保存ができ、甘いので元就さま支配下にある幾つかの村での生産に入っている。

 飢饉の対策は大切。


「さて、武田の情報を聞こうか」


 2本の蒸かし芋を腹に納めた元就さまは悪い笑顔を浮かべた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後書きのステータスの表記ですが、一般的な足軽や武将のステータスが設定されていればその表記がなければ、主人公だけ表記があっても比較対象がないためチートがいまいちわかりにくいと感じました。
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