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元就の野望~全国版~。わたしはガチャを駆使して補佐します  作者: 那田野狐
第12章 九州統一編

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第3話 大友を詰めるために

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- 豊後と肥後の国境 畝方隊の陣中 -


「我ら毛利さまに従属いたしたく、畝方殿にお願いするために、まかり越しました」


 赤い鎧にタヌキ顔の宇土城城主の名和武顕さん(格上げ)と緑の鎧にキツネ顔の隈府城城主の菊池義国さん(格上げ)がそう言って深く頭を下げる。


「顔を上げてください」


 そう声を掛けると、ふたりは躊躇せずほぼ同時に顔を上げるので、改めてふたりの顔を見る。赤いタヌキと緑のキツネ。化かすという狡猾なイメージはなく、どちらかというとスナック菓子のマスコット用にデフォルメされた愛嬌のある、色々に攻めているコンビだ。

 なんでも、毛利氏が豊後(大分南部)の東の端に上陸して一月足らずで西の端まで踏破したのを知って、こちらに寝返ることを決断したらしい。

 ここまで快進撃できたのは、大友義鑑が豊前(福岡北東部から大分北部)を攻める為に豊後国内の男を傭兵から雑兵まで、ほとんど根こそぎにかき集めて連れて行ったのが原因だけどね。

 まあ、義鑑の実の弟である義国さんは別の皮算用を弾いているような気がするけど。


「その方らの考えは承った。ただ、最終的な判断は毛利の殿さまが行うので、時間と使い古した旗差しを100ほどお借りしたい」


 なるべく偉そうに話をする。威厳が0なのは今更か。


「時間は問題ございませんが、旗差しですか?それも使い古した」


 武顕さんが首を捻る。


「なに。豊前(福岡北東部から大分北部)の大友に肥後(熊本)の状況を目に見える形で知らしめる必要があるのです」


 イマイチ信用ならない兵士を前線に送るより、旗指を並べる方が遠目にも寝返ったことが解る。時間も費用も抑えられるからね。とりあえず武顕さんと義国さんには、周辺の国人への調略を、毛利氏に降る気があるなら旗指を渡すように依頼する。

 旗だけなら、戦局が再び大友に流れても言い訳はいくらでもできると言い含めることも忘れない。武顕さんと義国さんは大きく頷きながら陣地を出ていく。


「才蔵」


「はっ」


 どこからともなく才蔵さんが姿を現す。


「赤川殿と殿に手紙を書くので届けてください」


「御意」


 取りあえず、赤川就秀さんには落した国人衆の旗指を集めて元就さまの元に送ることの依頼と、ここまでの戦況を書いて元就さまの元に送ろう。あ、大内義隆くんにも送っておくか。




 - 豊前 香春岳城 -


 -三人称 -


「赤川又四郎(就秀)殿、畝方石見介(元近)殿より書状が届きました」


 そう言って、毛利家の外交を一手に担う口羽広良が書状を差し出す。


「ふむ」


 毛利元就は書状を受け取り、まず赤川就秀の書状に目を通す。どうやら大友義鑑は、今回の豊前遠征に国内の兵をほとんど全部率いてきたらしく、豊後南部の占領が順調であることを書き記している。たぶん畝方元近の書状も似たようなモノだろう。


「後で旗指を送る?」


 畝方元近の書状にある文言に首を捻る。


「ああ、偽計に使えという事か」


 遠巻きにでも旗指を掲げておけば大友兵の心を折り易いということだろう。送ってくるという事は、本物なら多少のハッタリは効かせることが出来るという事だと理解する。

 毛利元就は、秦時代末期に活躍した楚の武将である項籍(項羽)が、籠城する城の中で周囲から楚の歌が聞こえて来て、「劉邦は既に楚を得たのか?楚人の歌が多く聞こえてくる」と嘆いた話を思い出す。この辺の心理戦を提案してくるのが実に畝方元近らしい。


「毛利殿」


 どすどすと足音を立てながら大内義隆が毛利元就のいる部屋に入ってくる。


「どうなされたか」


「師匠から手紙が」


 大内義隆の言葉に毛利元就は苦笑いする。この男が自分の部下である畝方元近の元で学んだ時間はさほど長くないはずだが、よほどの衝撃があったらしく、畝方元近を師匠と呼んでいる。


「これを」


 大内義隆は懐から手紙を出すと毛利元就に差し出す。そこには『肥後は揺れています。筑後(福岡南部)は無駄なく揺らしていますか』とだけ書いてある。差出人は筆跡と花押(サイン)から畝方元近だという事が判る。そして、手紙の隅にこっそり押された茶釜狸印の勘合符。二重三重に偽造防止された手紙であることを推測する。


「おそらく毛利殿と調略の擦り合わせをして無駄なく計を進めよと・・・」


 毛利元就は、大内義隆の頭に三角の耳と尻に激しく揺れる尻尾の幻影を見たという。

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