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*完結* MECHANICAL CITY  作者: Terra
#06. Please wait 決定
68/189

[19]




「さっき言ってた許可の下りだが。

あれば別に干渉しないって事か?」



軽々放たれた彼の言葉に、震えた。



「そんな…何でそんな平然とっ!?

おかしいじゃないっ!」



つい、怒りに叫ぶ。

発言に対する返答は無いが、彼の不安定な床を叩く踵は、僅かに後方に引かれた。






「死ぬな、起きてくれ、頼む。

そう願ってはみても、いざ起きられたら怖い。

そうなったら結局困るのか。

でも、生前の良い時の姿を見たいからと言って、薬品だの金属管だの使って、遺体の維持を実行したりもする。

高次な存在になろうだ、永遠の命を得ようだ何だで、人間の思考は進み、今や人工知能頼りになりつつある。

その先には何があるんだろうなぁ?」




彼は姿勢を前屈みにし、左に拳を作ると、もう片方でそれを強く覆い隠し始めた。

湧き出る思考や疑問を、適当に彼女に投げては、流す様に横目を向ける。

こんなやり取りにキリが無いと知りながら、この久方振りの感情は、口を勝手に動かしていた。




「こっちからすりゃあ、大昔からされてる人体解剖や、近年の防腐処理技術を例に派生させ、進化した人間様の誕生を実現させる実験をしてるだけだ。

あくまで論理で、試さないに留めておけばセーフで、良い子ってか。

思考が生まれた時点で、未来の開拓のスタートは切ってる様なもんだと思うがな。

長生きしてぇんならとっとと試さねぇと、命終わっちまうぜ。

この先どうせ、機械突っ込んでく可能性だってあんだ。

それを生きた状態でやるか、死んでからやるかだけの違いだろう?」




床を叩いていた踵は、止まった。

しかし未だ、握り合う手は解かれず、震えている。

そんな彼の様子など、ターシャには見える訳が無かった。




「自分が何言ってるか分かってる!?

何で今この流れで、解剖だの遺体だのって言葉が出て来るの!?

永遠の命!?訳分かんない事ばっかっ!

有り得ないでしょ!

自分達がしてる事が犯罪である、それを理解するのがそんなに難しい!?

どう考えても非常識でしょ!

罪を犯してる事に開き直って!

一体どんな生き方すりゃそんな風になんのよ!」




実に腹立たしく、焦燥は止まらない。

彼から流れる発言の内容に、整理をつける事なんてできず、パニックを起こす。

それでも、目前の犯罪者に自分の考えを貫こうとした。





それに必死なあまり、ターシャは気付いていない。

端でヘンリーが、イーサンの方へ静かに移動し始めていた。





徐々に鋭利な目に変わるイーサンに負けるものかと、ターシャは拳を握る。

後方に下がっていた彼の足に、力が入り、止まった。

それはどうも、故意に止めている様である。




「変人扱いすんならお互い様だぜ…

別にそちらも、健全で良い人間ばかりじゃねぇだろうがよ…」




先程の淡々とした口調から、低く、掠れた声に変化した。

それに合わさる眼差しは、終わりには光を失くし、ジリジリと彼女を()め上げ、怒りを滲ませる。




「何なのっ…それっ…!

あんた達なんかよりずっと真面目に生きてるわ!

こっちが怒ってるのに!

何でそんな目を向けられなきゃいけないの!?

勘違いも甚だしい、異常だわ!」




 事態は一変した。




最後の発言に被さる様に、イーサンの目から突如、正気が飛んだ。

椅子から激しく前方に飛び出し、彼女に掴みかかろうと右手を伸ばすが―




 その体は即、既に端に立っていたヘンリーの左腕により上体から抑えられ、再び椅子に強引に叩きつけられた。




伸びた右手は数回宙を掻き、左手は、制御するヘンリーの左腕を剥がそうと乱暴に引っ掻き、叩く。

しかし、彼の胴に巻き付くその黒い腕は、微動だにしない。




荒ぶる息は言葉になる事なく、ただ、宙に汗と唾液として散り、消えていく。

怒りに満ちた目で暴れる彼はまるで、我を忘れた猛獣の様だった。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 珈琲が出来上がった。 美味いのでイーサンも、飲めば良い。 はぃ、イーサン。 え?何か大変なのか。。 [一言] イーサンが言ってる?で、あってるかな。 どうも、連載切りに慣れていなくてf^_…
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