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カタクリズム:中編  作者: ウナ
クガネ外伝
56/72

第1話 黒鉄への道 其の一

【黒鉄への道】其の一







大森林に飲み込まれるように存在する国、ネネモリ

その外れにある小さな集落……ポロトに、

飢えに苦しむ一人の少年がいた


少年の名は"ウテルケ・タラニス"

(のち)に"爆殺のクガネ"と呼ばれ、恐れられた男だ


この物語は、貧しい少年が大悪党となり、

世に悪名を轟かせ、世界に死を取り戻す旅に出るまでの物語である


・・・・・


・・・



ポロトは、ならず者の一団が作った集落だ

強盗、殺人、強姦、人身売買、放火、詐欺……

ありとあらゆる犯罪者が集まっている


ここでは悪行は生活の一部であり、

善行など家畜にでも食わせておけと笑われてしまうだろう


ネネモリの民が恐れて近寄らない場所、それがポロトなのだ


この集落には6軒の家がある

家と言っても掘っ立て小屋のようであり、

なんとか雨風は凌げるが、快適とは無縁の環境だ


ならず者の彼等が何故一箇所に集まって争いが起きないのか?

それは、彼等が盗賊団という1つの大きな家族だからである


ラルアース地方で知らぬ者のいない盗賊団"オハチスェ"

安い依頼料で何でもする集団だ


奴らは富を求めていない、求めているのは快楽なのだ

生活する分の報酬はいただくが、それ以上は求めはしない

奴らは殺し、盗み、犯し、騙す、それらが好きでたまらない、

しなくては生きていけない、そんな連中だった


放火魔の両親を持つウテルケ少年は、

両親から放火の技術を学び、火に魅了されていた


しかし、彼にはこの集落にいる者達と違う点が1つだけある


彼はお金が好きだった

金さえあれば大半の事はできる、なのに何故求めないんだ?

いつも不思議に思っていたが少年は口には出さない、

そんな事を口にしたら美学がないと笑われるだけだからだ


美学? それで何が手に入る


少年の中でくすぶる火はゆっくりと静かに、だが確かに勢いを増してゆく

その火が炎となるのには10年という時を必要とし、

少年は青年へと成長していた


この頃のウテルケは、仲間の鍛冶師の元をよく訪れていた

叩く鉄から飛び散る火花、その一瞬の輝きに惹かれ、

オレンジ色から黒へと変わってゆく鉄の力強さを感じ、

鍛え上げられた強靭な鉄に、己を重ねていた


俺は鉄だ、飛び散る火花のように一瞬で相手を殺し、

黒い鉄のように強く、硬く、鋭い、俺は鉄だ

それに比べて……


鋼鉄のダガーを手に、ウテルケは集落を見渡す

みすぼらしい家、鼻の曲がる悪臭、不味い飯、

年老いた団長や両親、使えない奴らばかりだ


同年代の男が1人いるが、こいつも使えない

ナイフをまともに的に当てる事も出来やしない


老人連中もそうだ、もはや全盛期の身のこなしなど微塵もない

ゆるい仕事をし、怠惰に暮らし、ぶくぶくと太る家畜と同じだ

過去に見た血の滴る刃のような鋭さは、もはや見る影もない


美学などという甘えで生きるからこうなる

くだらない、実にくだらない

今の俺には、こいつらから学べる事は何一つないだろう


だから俺は出て行く事にした、

この腐った集落で共に腐るのは御免だった


「ウテルケ、どこへ行くっ!」


脂肪を溜め込んだ腹が重そうな父が言う

この醜い姿を晒して恥ずかしくないのか?

ウテルケはそう思いながら気怠そうに答えた


「俺は出て行く、お前らにもう用はない」


「なんだと、お前……親に向かってなん」


目にも止まらぬ早さでダガーを抜き、父の口にそれを突っ込む

恐怖で震え、歯と刃がぶつかりカチカチと音を立てる


「その臭い口は閉じていろ」


静かにダガーを引き抜き、服の裾でそれを拭いてからしまう

歩き出すウテルケを父は止めなかった……いや、止めれなかった


彼は特別だった


ありとあらゆる犯罪のエキスパートたちの技術を、

あっという間に覚えてゆき、そして超えてゆく

彼が15の頃には既にほぼ全ての技術をマスターしていた


そんな彼は今16になる


肉体も成熟し始め、今や彼に敵う者はいなかった

両親ですら恐れるほどの才を秘めた青年、

それがウテルケ・タラニスという男だった


ウテルケが村の出口へと向かうと、

ぞろぞろと柄の悪そうな連中が集まってくる

どうやら父が団長にチクったらしい


獣臭い毛皮に身を包んだ、怠惰という肉を着る男、

それがオハチスェ盗賊団の団長"ザイギル・ネーロ"

20年前まではラルアース地方の誰もが恐れる男だったが、

今となってはその片鱗すら感じられはしない


「小僧、出て行く気か」


酒で焼けた喉から発せられる声は聞き取りにくく、

ウテルケはこの男の話は半分も理解出来なかった


「あぁ、もうお前らから学べる事は何一つない」


「そうか……」


団長は黙って腰にぶら下げる何年も使っていない剣を抜く

手入れすら怠っていたのか、錆が目立っていた

その刀身を見たウテルケはため息が漏れる


「何のつもりだ? まさか、この俺と殺り合うつもりか?」


ウテルケはダガーに触れる事すらせずに鼻で笑う

その老いた身体で何ができる、と彼は笑う

だが、団長ザイギル・ネーロは右の口角を上げて言った


「ケツの青いガキが、自分の力量すら知らぬとはな」


ザイギルは黒ずんだ歯を見せ、ペッと唾を地面に吐き捨てる

次の瞬間、ザイギルの巨体は一直線にウテルケへと向かい、

右下段から左上段への斬り上げを放つ


ウテルケはそれを半歩下がるだけでかわすが、

ザイギルの攻撃はこれだけではなかった


彼は斬り上げを放つと同時に、

左手に隠し持っていたショートエストックで突く


エストックは突きに特化した刀剣なため、

普通であれば通常の刀剣より長い物が多いが、

ザイギルはこれを隠し持つために短くしていたのだ


しかし、ウテルケ青年にはその一撃は通らない


彼は半歩下がった時に下げた左足をつま先立ちにし、

くるりと回転を加え、右足を浮かすと身体は横を向く

それによりエストックの直線的な攻撃をかわし、

同時に右肘をカウンターで入れた


肘が顎に当たった団長ザイギルはその場で崩れ、

泥水が溜まった水溜りに顔面から倒れ込む


その瞬間、ポロトの全員の動きが止まった


先程の団長の一撃を初見でかわせる者などいなかった

ここ30年は確殺とも言える一撃だったのだ

それをいともたやすくかわし、逆にカウンターを入れて倒してしまった

安酒で馬鹿になった頭でも分かる、強さの次元が違うという事が……


「じゃあな」


ウテルケ青年は少しだけ寂しそうにそう言い、

倒れる団長を跨いでポロトを出て行った


・・・・・


・・・



ウテルケがまず向かったのはラーズ国だった

ネネモリから南へと向かう街道を進み、

道中で行商人を襲い、食料と金と馬を奪う


奪った馬を一日中走らせ、潰れたので肉にし、

日も落ちて来たのでそれを焼いているところだ


挿絵(By みてみん)


調味料など持っていなかったため、ただの焼いた馬肉だが、

腹の足しにはなる、今はこれでいい……今は、な


空を見上げ、星により方位を確認する

向かうべき方角が定まった……目指すはラーズの首都だ


彼が首都ラーズを目指すのには理由がある


数年前に仕事で訪れた時に見た首都は、

今まで見たどの街よりも綺麗で、魔道具の技術も高かった

この街には財が溢れている、そう感じたウテルケは、

真っ先にこの都を目指したのだ


まだ2日はかかる距離だが、急ぐ旅でもない

行商人から奪った食料もたんまりある、気ままに行くさ


誰にも指図されない本当の自由を手に入れた彼は、

寝転がりながら星を見上げ、木の枝で作った楊枝(ようじ)を咥え、

久しぶりに味わう静かな夜を堪能していた


虫の歌声と草木の揺れる音だけの世界で、

ゆっくりと訪れる眠りに身を委ねようとしていた時、

自然界には違和感のある規則正しい音が聴こえてくる


ドド、ドド、ドド……


馬の足音だ、数は3

野生の馬かとも思ったが、かなりの速度で駆けている、

おそらく誰かが乗っているのだろう


身を起こし、足で焚き火に砂をかける

既に焚き火の明かりが見られていたら意味はないが、

音が近寄ってくる方角的に木が遮ってくれたはずだ


脇腹に忍ばせていたクナイを抜き、逆手に持ち、

金属を編み込んだワイヤーをグリップにある輪に巻きつける

それを手に、足音が近づく道へと向かった


木の陰に隠れたウテルケ青年は、

闇夜と同化するように気配を消して様子を伺っていた


まだ距離は300メートルはあるだろうか?

だが、先頭を走る者が松明を持っていたため姿は確認できた

身なりからして盗賊の類か……同業者というわけだ


なら遠慮はいらんな


クナイを道の反対側にある木の根本へと全力で投げ、

深く刺さったのを確認してから、

手元にあるワイヤーを目の前の木に巻きつける

この闇夜では視認できないであろう簡単な罠だ


数メートルほど下がり、身を隠したウテルケ青年は、

腰からダガーを抜き、静かに息を吸い込み、ゆっくりと吐く

首元へ下げていたマスクを上げ、口元を隠した


全身から溢れる殺気を消し、その時を待つ


先頭の馬がワイヤーに引っかかり、

その勢いでクナイは抜けてしまったが、

馬は悲鳴を上げて転倒し、乗っていた者は地面に叩きつけられる


2頭目の馬は慌てて回避しようとするが間に合わず、

2人目も落馬し、地面を転がっていた

最後尾の者だけが助かり、馬を止めてなだめている


俺は木陰から足音もさせずに飛び出し、

2人目の男の首にダガーを滑り込ませる

即死した男は悲鳴すら上げる事なく、

ほんの数秒だが残りの2人は俺に気づかなかった


先頭の男は派手に落馬したせいか、のた打ち回っていた

そこへ突如現れた見知らぬ者に(あばら)の隙間を刺され、

断末魔の悲鳴を上げながら絶命する


残るは1人……


馬上からこの一瞬の出来事を見ていた男は抜剣し、

片手で器用に馬を操り、剣を持つ右側を向けてくる


よく見れば身なりが転がっている2人とは違う

鋼鉄のプレートメイルを着込んではいるが騎士ではなく、

漂う荒くれ者の空気が傭兵といった感じだ


「野盗の類か」


馬上の男はそう言いながらも襲ってくる気配はないが、

相手は長剣装備で馬上にいるため、ダガー1本では不利なのは明白だ


ダガーと長剣の場合、リーチの差があるため、

勝つためには技量は3倍は必要と言われている

更に馬上の場合、技量は2倍以上必要と言われている


人間は上への攻撃に適していないため、

今のウテルケ青年は圧倒的に不利な立場にあるという訳だ

だが、ウテルケ青年は余裕の笑みすら浮かべている……


「賊を始末してくれたのは感謝する、

 そいつらが持ってる物を渡してくれれば危害は加えない」


どうやらプレートメイルの男は先の二人を追っていたらしい

しかし、ウテルケ青年にそんな事は関係ない


「分かった、だが少しは分け前をくれると助かるのだが」


ウテルケ青年はそう言いながらダガーをしまう

もちろんこれは嘘であり、油断させるためである

この程度の不利で目の前の金を諦める理由など無いのだ


幼い頃に詐欺師の知り合いから伝授された方法で、

彼はプレートメイルの男を騙す

先に自ら引く素振りを見せ、信用させるのだ


案の定、プレートメイルの男はそれを信じてしまい、

剣を鞘へと納め、ヘルムのバイザーを上げてしまう


「いいだろう、それを受け取ったら去れ」


ウテルケ青年はこの瞬間を待っていた


ダガーと長剣では抜くまでの時間に差がある

ほんの僅かな差ではあるが、その一瞬が生死を分ける差となる


男はプレートメイルで急所は守られており、

馬上なのもあり、ダガーの一撃で葬るのは難しいが、

今のこいつは人間の弱点を晒している……目だ


男が瞬きをする瞬間にダガーを抜き、そのまま投げた

目にも留まらぬ早さで抜かれたダガーに反応すら出来ず、

閉じられた目が開いた瞬間にダガーは目へと吸い込まれていった


刃渡り18センチほどあるダガーの10センチ近く刺さり、

その刃は脳まで達し、男は即死した


落馬した男の身体を足で転がし、片足を胸へと置いてダガーを抜く

ついでに男の外套でダガーを拭き、馬の手綱を木へと繋いだ


それからゆっくりと死体を物色したウテルケ青年は、

金の(さかずき)と、銀の女神像、緑翠石(りょくすいせき)のネックレス、

銀貨少々、銅貨少々、鋼鉄のプレートメイル一式などを手に入れる


素早さを重視しているウテルケ青年は、

プレートメイルを着る事など無いが、売ればそれなりにはなる

鋼鉄とはいえ、おそらく銀の女神像よりは価値があるだろう


これらの盗品は正規のルートでは売れないため、

通常の買取価格よりかは下がってしまうが、

少なく見積もっても4ヶ月は遊んで暮らせる額にはなるはずだ


死体を背の高い草むらへと転がし、地面に染み込んだ血には砂をかける

回収した宝を商人から奪った荷台へと乗せ、

木に繋いだ馬に引かせて移動を始めた


この場に居てはさっきの奴らの追手が来てしまうだろう

それを巻くための証拠隠滅である


道から逸れたため、あまり速度は出せないが、

日の出前には悪くない洞穴を見つけたため、そこで休む事にした

魔獣などが出る可能性もあるが、その時は馬が騒ぎ出すだろう


焚き火に乾燥した薪を数本放り込んでから瞳を閉じる

自分が思っていたより身体は睡眠を欲していたようで、

意識は溶けるように眠りと同化してゆく……


・・・・・


・・・



「お前はこの村の未来だ」


「ウテルケはいい盗賊になるぞ」


「よくやった、明日も頑張りなさい」


数々の言葉が耳に届いては消え、届いては消え、

目まぐるしさに嫌悪感すらあるが、

それらの言葉は全てポロトの人達の俺への称賛だ


「お前には才能がある」


「盗賊になるために生まれてきたような子だ」


「お前がいてくれて助かった、これからも頼むぞ」


どうして今こんな古い記憶が呼び起こされている?

……そうか、俺は村を出たのだ

まさか、この俺が感傷的になっているとでも言うのか?


ははっ、俺も人間らしいところがあるじゃないか

自分が可笑しくて笑ってしまう


「なぁに、食ってくには困らんさ」


「私はもう極めた、これ以上の鍛錬は無意味なんだよ」


「適当でいいじゃないか、適当で」


今度は胸糞悪い言葉の数々が届く

怠惰で、怠慢で、醜く、愚かな奴ら……だから俺は出て行ったのだ

奴らとの緩やかな死などまっぴら御免だ


俺は火花のように、一瞬だが凄まじい輝きを放ちたい

叩き上げられた鉄のごとく、強くありたい

より強く、鋭く、そして……奴らよりも黒く


そう、俺は黒鉄(くろがね)になりたい


・・・・・


・・・



昼過ぎの強い陽射しがまぶた越しにも届き、

半強制的に眠りから連れ戻され、ゆっくりと目を開ける


「……昼過ぎか、寝すぎたな」


昨日は色々あったせいか、思ったより疲れていたらしい

慣れない一人旅というのもあるのだろうか?

気を引き締めなければならないなとウテルケ青年は深呼吸した


新鮮な空気と共に、馬の獣臭さに混じって鼻を刺激したのは、

よく知る魔物の臭いだった……小鬼(ゴブリン)


チッ、と舌打ちをしてダガーを抜く

まだ馬が暴れていないところを見ると近くはないようだが、

この悪臭は間違いなく奴らだ、遭遇する可能性は極めて高い


ネネモリでよく使われる小鬼(ゴブリン)除けのお香など持って来ていないため、

大急ぎで防衛の準備を始める


小鬼(ゴブリン)……体長1メートルほどしかない小さな魔物だ

人間の子供のような体格だが、長い鼻と大きな耳が特徴だ

慢性的な栄養失調のため下腹が出ており、

黄色がかった皮膚は薄汚れていて茶色くなっている


動物の毛皮や植物を身体に巻いている事が多く、

人より遥かに劣るが知性を持つ魔物でもある

そして、石などの武器を使う事でも知られている


単体では恐ろしくはない魔物だが、小鬼(ゴブリン)は群れる習性がある

その数は群れによるが、少なくとも20……最悪の場合は数百だ


洞穴の深さは3メートルほどで、高さは1メートル50無いくらいだ

入り口が見つかりにくいため選んだが、

それが逆に仇となった……木々が邪魔で視界が悪いのだ


入り口は狭いので防衛しやすいと言えばしやすいが、

これではいつ敵が近づいて来ても分からないため、

常時警戒態勢でいなければならない


しかし、小鬼(ゴブリン)はそれほど恐ろしい魔物でもないのも事実だ

火さえ絶やさなければおそらく襲われる事はないだろう

馬は洞穴には入れないため諦めるしかないが、

荷台の方は洞穴に入れてしまえば大丈夫だ


荷台を洞穴に入れてから、周囲を簡易的な罠で囲む

草と草を結び、その輪に木の枝を曲げて通し、

外れれば音が鳴るという仕掛けである


枝によるダメージこそ無いに等しいが、

近づいてくる小鬼(ゴブリン)に気づければそれでいい


更に、洞穴の入り口に向かってダガーで削った杭を何本か突き立て、

火薬の詰まった炸裂玉やクナイを並べてゆく、

火が消された場合を想定しての準備である


起きたのは昼過ぎだが、この準備だけで既に日は傾いていた

小鬼(ゴブリン)は夕暮れから夜にかけて行動する事が多いため、

彼の迅速な判断と対応は正しかったと言えるだろう


下手に移動して小鬼(ゴブリン)の群れと遭遇しては、

いくら彼が強かろうと数の暴力には勝てないからだ


「ラーズには小鬼(ゴブリン)は少ないと聞いていたが……くそっ」


洞穴を出てすぐのところに4箇所焚き火を設置し、

しばらく火が消えない程度の薪を焚べてから洞穴へと戻る


幸い、食料は豊富にある、

ここで何日か足止めを食らおうと問題はないが、

馬を失うのは痛い……最悪プレートメイルは諦めるしかないか


そんなことを考えていると、

20メートルほど離れた位置からパチンッという音が響く、

先程作った音がする罠が発動したのだ


木々に遮られ、発動した罠の位置を確認する事は出来ないが、

ギャッという小さな悲鳴が耳に届き、奴らが現れたのだと理解する


奴ら……小鬼(ゴブリン)


ガサガサと草木を揺らしながら迫り、馬が騒がしくなる

音が洞穴の中で反響し、正確な数こそ分からないが、

少なく見積もっても50近くはいるだろうか……


くそっ、予想より多い


早く現れてくれたのは精神的にも肉体的にも助かるが、

思ったよりもかなり多いその数に反吐が出る


ウテルケ青年はダガーを逆手に持ち、

もう片方の手で投げクナイを2本構えた

狭い洞穴内で身を屈め、最悪を想定して彼は臨戦態勢になったのだ


鼻の曲がるような悪臭が濃くなり、

動物の腐敗臭と嘔吐物を混ぜたような臭いに顔をしかめる


「こんな場所で死んでたまるか」




彼の長い夜は始まったばかりだった……






今回から始まりました【クガネ外伝】

彼の人生を描く物語なのでお楽しみに!


ただ、この物語は悪党の物語でもあります。

あまり彼に幻滅しないでくれると嬉しいです!




おまけ




2019クリスマス用のマナ・マクリール

挿絵(By みてみん)




お正月用のサラちゃん

挿絵(By みてみん)




各章の舞台

挿絵(By みてみん)

ちなみにこの地図はあの世界で一番正確な地図というだけであって、

正確な位置は多少ズレていたりします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 火花のように一瞬でも強い光を放ちたい。盗賊団との決別するシーンが印象的でありました。 ゴブリンの容姿や生態などもよくわかり、読んでいて姿が思い浮かぶようでした。 彼らが放つ匂いと、クガネの…
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