154話 再利用で再登場
灰色の石と煉瓦で作られた風に見えるこの古城はあちこちにヒビや一部が崩れた場所がある。
でもマルタの話によると、ダンジョンの壁と同様で絶対壊れないように出来てるらしい。
だからこの中で魔法をバンバン撃てば自滅するから撃つなと言われた。
ち、面倒ね。
でも問題はないわ、代わりの方法がある。
「シールドあたーっく!」
『『『『『グオォォォォォ!?』』』』』
ミラがクリスタルシールドを横に構え、ドドドドドドド! という音を響かせながらブルドーザーのように古城の廊下を突き進む。
古城内には黒スケルトンやリビングアーマーなどの魔物や、前から矢が飛んできたり下からトゲが出てきたりする罠もあったりしたけど、ミラの怪力の前に、全部ギャグマンガのように吹っ飛ばされていった。
「ふ、あたしが戦うまでもないわね。いいわよミラ!」
「室内だから使える戦法とはいえ、こんなのアリですか!?」
ミラが蹴散らした後を追いかけるあたしとマルタ。
今アタシ達がいる場所はたぶん古城の中層といったところ。
すでにマルタが五年前にたどり着いた場所も通り過ぎ、頂上を目指して爆走していた。
「ふ、何よ。最下層ってわりに結構簡単じゃないの」
あたしがそう言ってニヤつくと、並走しているマルタが呆れた目をしてこっちを見る。
「アルテナさんとミラちゃんが異常なんですよ! 何なんですかこの力押しのダンジョン攻略は!?」
「なに文句言ってんのよ!? 元からそういう予定で突き進むって話だったじゃないの!」
「そりゃそうですけど限度ってものを考えてください!」
「はぁ? この非常時に限度を考えろっての?」
「そうなんですけど……! ああもう、頭がおかしくなりそうですよー!」
なんかまた頭を抱えて悶絶してるんだけど。
このクソうさぎは大丈夫かしら?
「にしても、このままならダンジョンコアも簡単にゲットできそうね」
「いや、そうとも言い切れないですよ」
マルタが真剣な顔をして反論してくる。
「何でよ? 五年前あんたらが負けた理由も結局ダヴィドって暗殺者のせいだったじゃないの」
「確かにそうですけど……私もこの先は初見です。何が待ってるかわかりません。それに守護魔物の存在も忘れちゃいけません」
守護魔物って確かダンジョンコアを守っているラスボス的な存在だったっけ?
「ふ、余計な心配なんていらないわ。何が来ようとアタシにかかれば余裕よ」
「だといいんですけどね……」
そんなやり取りをしていると。
「アルテナ様! う……うさぎのお姉さん! 階段を見つけたよ!」
先行していたミラが階段を見つけ、あたし達はさらに古城の上へと進んでいく。
廊下を進んでいくと、その先には古びた大きな扉があり、その中に入ると吹き抜けの大きな空間が広がっていた。
「なによこの部屋は?」
「大きいね……」
大きいだけじゃなく、ここだけ下はタイルのようになっていて、ほこりを被った煌びやかな装飾が飾られている。
吹き抜けの天井には朽ちたシャンデリアが吊るしてあって、部屋の一番奥には上へと続く大きな階段が存在した。
「……ダンスホールか何かでしょうか? 気を付けてください、何かあるかもしれません」
マルタが腰の刀を握りしめながら辺りを警戒する。
「ふん、関係ないわ。ここまで登ってきたし最上階も近い筈。早く先に進むわよ」
魔物の暴走は今も起こり続けているし、ここで立ち止まっている暇はない。
アタシ達は歩みを進め、部屋の中央に差し掛かったその時。
『よく来たな……愚かな冒険者達よ……』
「「「!!」」」
まるで頭に鳴り響くかのような不気味な声が部屋に響き渡り、あたし達は即座に武器を構える。
『だがここまでだ……。貴様らはダンジョンコアを見ることすら出来ない……。何故なら……ここで死ぬのだからな……』
「ふ、ずいぶん大きな口をたたいてくれるじゃない。誰だかわかんないけど、さっさと姿を現しなさい!」
大声で叫び声の主を呼ぶ。
『……いいだろう。その目に焼き付けよ……我の姿を!』
声の主がそう言うと、目の前の床から黒い霧が溢れ出し、前方を闇に包む。
そして闇の中に目のような青い炎が灯ったと思うと徐々に霧が晴れていき、無駄に豪華な黄金の鎧と王冠を身に着け、立派な大剣を持った黒いドクロの魔物が姿を現す。
「……あれ?」
「……え?」
どっかで見たようなその姿に、思わずアタシとミラは目を合わせる。
『カッカッカ……しかし、全員女とはな。もしパンツを見せてくれるなら特別に見逃してやっても……』
「その喋り方とエロさ! やっぱりあんた、あの時のエロ骸骨じゃないの!」
「が、骸骨さんだ!」
『いきなり何を言うってあーー! 貴様らはあの時の小娘共ー!!』
お互いに相手を指さして驚く。
間違いない!
こいつ、ピラミッドでアタシ達にウザがらみしてきたエロ骸骨じゃないの!
『カッカッカ! まさかこうして再び相見えるとはな!』
「何で!? あんた死んだはずでしょう!」
『確かに我は一度滅んだ。だが、選ばれし者として復活を果たしたのだ!』
「は? どういうこと?」
エロ骸骨の言ってる事がわからず頭をかしげていると、話についていけずポカンとしていたマルタが口を開く。
「よくわかりませんが……アルテナさん達がここのダンジョンで一度倒した相手って事ですか?」
「そうだけど、何か知ってんの?」
「はい、それはきっと魂が再利用されたんですね。ダンジョンじゃよくあるんですよ。倒した魔物の魂を再利用して使い回す事が。記憶を保っているのはレアケースですけど……魔物の暴走の影響ですかね?」
「つまり、ただの使い回しって事?」
『誰が使い回しだ! 我が安っぽいような言い方をするな!』
ガンガンとエロ骸骨が地面を踏みつけながら怒る。
「でも……骸骨さんってピラミッドにいたよね? 何でここにいるの?」
『それは我の関することではない。 ダンジョンの意志によるものだ』
ミラの純粋な疑問にエロ骸骨がそう答える。
「はぁ? つまり左遷されたって事?」
『誰が左遷だ! 最下層の大事な場所に配置されたんだぞ! 昇格と言え昇格と!』
「アタシたちにぼろ負けしておいて昇格はないでしょ」
『貴様らが卑怯な手を使ったからだろう! は!? そういえばその作戦を考えた人でなしの女はどこだ!?』
エロ骸骨が慌てて周りをキョロキョロしだす。
「もしかしてエレンの事? あいつなら不服だけど別行動中よ」
『ほう、そうなのか。カッカッカ、なら不意打ちを警戒することはないな』
なんか前回の事が結構トラウマになってるっぽい。
まあ、気持ちはわからないでもないけど。
『さあかかって来い! 今度こそ正々堂々と勝負と行こうではないか!』
そう言ってエロ骸骨が大剣を構える。
けれど、あたしはなんかやる気が無くなってきた。
だってそうでしょう?
ここは最下層、ワクワクするダンジョン探索の終着点。
それなのに……出会うのはマルタに紅蓮の鉄槌、エレンが一度逃がした暗殺者。
魔物の暴走のせいで探索の余裕がないし、挙句立ちはだかるのも一度戦った相手って……。
なんか物語の終盤っぽい感じである意味盛り上がるけど、未知の冒険がしたいアタシとしてはつまんないことだらけ。
「一度倒された相手のくせにしつこいのよ! さっさとどきなさい!」
イライラしたアタシは、デスサイズを大きく振りかぶりながらエロ骸骨に向けて突撃する。
そして一瞬で間合いに入り、エロ骸骨に向け斜め上からデスサイズを振りぬく。
『バカめ! そんな単純な攻撃が我に通じるか!』
エロ骸骨も瞬時に反応し、大剣でデスサイズを受け止めようとする。
(ふ、バカね)
デスサイズを止めることなんてできない。
さっきのデュラハンのように、このまま大剣ごと真っ二つに斬り裂くだけ。
そう思っていた……しかし。
「……は?」
『ふ……(ニヤリ)』
デスサイズが大剣に止められる。
ありえない。
デスサイズは防御無視の刃。
ダンジョンの壁とか言うよくわからない例外があるけど、それ以外で止められるものなんて……!?
『カッカッカ! このまま我がソウルアーマーの餌食となるがいい!』
「な!?」
エロ骸骨の周りに青白いオーラの様なもの現れる。
いや、今まで見えなかっただけ。
よく見たら、デスサイズの刃は大剣に届いていない。
大剣が纏う青白いオーラに絡めとられていた。
そして、そのオーラはデスサイズを通じアタシに流れ込んでくる。
「うぐぅ……!?」
オーラが流れ込んできた瞬間強烈な頭痛が走り、まずいと思ったアタシはとっさにデスサイズを消し、回転しながら後ろへ飛ぶ。
「アルテナ様!」
「アルテナさん! 大丈夫ですか!?」
ミラとマルタが心配してくる。
「大丈夫よ……けれど、なんなのよ今のは!?」
デスサイズが通じないなんて……。
まさか、このソウルアーマーって……!?
『ご自慢の武器が効かなくてショックだったか? だが絶望はこれからだ。今から楽しみだぞ……貴様らが敗北し、自らスカートをたくし上げパンツをさらすその時がな……! カッカッカ!』
そう言って、エロ骸骨は高笑いを始めた。




