151話 ヴェインの戦い②
アタシ達の前に立ちはだかった赤と青の巨人、オーガとブルーオーガ。
ギルドへと逃げるためにはこいつらをどうにかしないといけねぇわけだが……。
「しっかし冗談きついぜ……」
赤いオーガはなんてことない。
だが問題は、上位種であるブルーオーガだ。
あたしも戦ったことはないが、普通のオーガとは非じゃない強さを持つと聞く。
「アーシャさん、どうするんだ?」
「ほかの魔物たちも近づいてくるわ」
さっきのオーガが倒されビビっていた魔物たちも、後ろからじりじりとこっちに近づいてくる。
強力な援軍の登場に戦意を取り戻しやがったみたいだ。
こっちには子供を抱いた戦えないカルロもいる。
早いところ決断しなきゃならねぇ。
「……アルフ、ケイト。雑魚は任せた。あたしはあの二体を相手にする」
そう言って、アタシはオーガたちの前に立つ。
「ちょっと待てよ!」
「いくらなんでも無茶だわ!」
「だがそれしかねぇだろう!」
魔物の群れが蔓延る中こいつらから逃げるのは無理だ。
倒して進むしかねぇ。
「行くぞオーガども!」
まずはさっきと同じだ。
オーガ達に向け正面から突っ込む。
それに対し、ブルーオーガが右手に持った大きな黒い棍棒をまっすぐ振り下ろしてくる。
それを避けて攻撃しようとするが、棍棒が地面に激突した瞬間強い衝撃波が起き、アタシは壁に吹っ飛ばされる。
「チッ! やっぱ普通のオーガとパワーが比べ物になんねぇな!」
吹っ飛ばされたアタシは空中で体を回転させ、壁に両足から着地し、跳ね返るようにブルーオーガの顔面に向け跳躍する。
「覚悟しなぁ!」
光属性を込めた渾身の一撃を振りかぶる。
しかし、ブルーオーガもそれに対し左手の拳で殴り掛かって来る。
そして互いの拳が衝突。
「ぐ……!?」
『グォ……!?』
結果互いの拳が弾かれ、アタシは後ろへ飛び、ブルーオーガはよろめく。
どうやら拳の強さは互角のようだ。
だが、相手は一人じゃない。
赤いオーガが、空中で身動きが取れないアタシに向かって拳を振りぬいてくる。
「しまった! ぐぅ!?」
腕でガードするものの、赤いオーガの一撃をもろに喰らったアタシは壁を破壊しながら吹っ飛ぶ。
「しくじったぜ……フン!」
アタシは瓦礫を蹴飛ばしながら勢いよく起き上がると、『聖闘士』のスキルで体を癒し、再びオーガたちと対峙する。
(クソ……二対一ってのが厄介だぜ)
片方を攻撃すればもう片方がカバーに入っちまう。
せめて赤いオーガを先に倒せればとも思ったが、向こうもこっちの力量を把握してるのか、ブルーオーガが前に立ち、それを阻んでいる。
「畜生……早く決着つけなきゃならねぇってのに」
このまま時間をかければ後ろで戦っているアルフとケイトが持たねぇ。
だが、攻めようにも隙が無い。
「せめて片方の動きだけでも封じられればいいんだが」
「ソレクライナラオヤスイゴヨウダ……」
「え……はぁ……!?」
急に後ろから声がし振り向くと、全身を黄金の鎧で包み、巨大な斧を持ったブルーオーガ並みの巨人が現れた。
いや、なんだこいつは!?
オーガに集中してて全く気付かなかった!
「イクゾ……フン!」
巨人はブルーオーガに向け突撃し、斧を斜めから両手で振りかぶる。
ブルーオーガは斧の一撃を棍棒で受け止め、鍔迫り合い状態になる。
「ナニヲシテイル……? ハヤクアカイヤツヲタオセ……!」
「あ。ああ! 助かったぜ!」
巨人がブルーオーガを相手にしてる間にアタシは赤いオーガの方に突っ込む。
向こうも激しく拳を振り下ろし攻撃してくるが鈍い。
あたしは拳を回避し、懐に入った所で跳躍。
さっきの奴と同じく光属性の拳でオーガの顎を打ち抜く。
『グウォォォォォ!?』
「よっしゃあ! 向こうは!?」
喜ぶ間もなく巨人とブルーオーガの方を振り向く。
すると巨人が力負けし、よろめいたところにブルーオーガの拳が巨人の頭部へと炸裂した。
だが。
「イマノハスコシイタカッタゾ……」
巨人はブルーオーガの一撃をものともせず、斧を捨てブルーオーガにつかみかかる。
なんて丈夫な奴だ。
そして、取っ組み合いの末後ろからブルーオーガを羽交い絞めにする。
「イマダヤレ!」
「ああ、恩に着るぜ!」
隙だらけとなったブルーオーガに突っ込み、全力のアッパーを顎先に食らわせる。
『グウォォォォォ!?』
顎先は一撃必殺の急所だ。
ブルーオーガでも耐えられなかったようで、そのまま動かなくなった。
「はぁ、はぁ……。やったぜ」
「アア、ミゴトナイチゲキダッタ」
巨人も倒したブルーオーガを捨て、一緒に勝利を分かち合う。
「へへ……そうだ! 三人は無事か!? なに!?」
後ろを振り向くと、自警団でも町の兵士でもない、傭兵のような奴らがアルフとケイトに加勢し魔物と戦っていた。
「なんだこいつらは? お前の仲間か?」
「クックック。こ奴らは我の部下よ」
巨人が答える前に、傭兵たちに守られながら小太りで金持ちっぽいオーラを出してるくせに囚人服と変な帽子をかぶったおっさんがやって来て答える。
「誰だお前は?」
「我はコレクターで大富豪のポットデーノ。そこの巨人は我一番の部下モーブだ」
巨人はおっさんの言葉にうなずく。
どうやら本当らしい。
「でもなんだその変な格好は?」
「うるさい! さっきまで独房に入れられてたのだ! おのれ……クリスウィスを奪おうとしただけでこんな仕打ちを受けるとは……!」
クリスウィスってミラの種族名だったか?
そういや以前ミラを奪おうとして返り討ちにあった変な成金バカがいたって聞いたな。
まあ、今はどうでもいいか。
「まあなんだ、手を貸してくれてありがとな」
「ふん、我らもギルドへ逃げる最中に偶然出くわしただけだ。お前たち! さっさと行くぞ!」
ポットデーノのおっさんが傭兵たちとモーブに呼びかける。
アタシ達も共に行こうとしたその時。
『グォォォォ……』
さっき倒したブルーオーガが目を覚まし、フラフラと立ち上がる。
どうやら完全に仕留められていなかったようだ。
「チッ、頑丈な奴だぜ。今度こそ仕留めてやらぁ!」
「アーシャさんダメ! 止まって!」
「なに?」
ブルーオーガに向け突っ込もうとしたところをケイトに止められる。
一体何だと思った次の瞬間、銀色に輝く強力な光線が建物を貫通し、ブルーオーガに命中する。
『グォォォォ!?』
その光線でブルーオーガは黒焦げとなり、今度こそ地に沈んだ。
「な、なんだ今のは!?」
ケイトが止めなかったらあたしも光線の餌食になっていた。
そして、『ギャオォォォォ!!』という耳が痛くなるほどの咆哮を響かせながら、全身黒い岩の様な鱗を持ち、背びれの代わりに魔石を一列にはやした巨大なトカゲが現れる。
「おお……こいつはラディアドレイクだ! なんと立派な姿をしているのだろう!」
ポットデーノのおっさんが歓喜の声を上げる。
コレクターの魂が燃えているのか?
「バカか!? そんなこと言ってる場合じゃねぇぞ!」
ラディアドレイク……こいつはエレンたちを追い詰めた鉱山エリアのボスだ。
さっきの光線はこいつのブレスに違いない。
「好き放題町で暴れやがって……!」
ラディアドレイクはこっちに気づくと、背びれの魔石を光らせ、口を大きく開ける。
あれは間違いない、さっきのブレスだ。
「またブレスが来るぞー!」
「モーブ! ブレスを食い止めろ!」
「ハッ!」
モーブがポットデーノの命に従い、あたしたちの前に立ち仁王立ちの姿になる。
そして銀色のブレスが放たれ、モーブはそれを一身に受けた。
「ウグ……!? オノレ……!!」
モーブは膝をつきながらもそのブレスを耐える。
なんて耐久力だ。
「大丈夫か!?」
「……モンダイナイ」
そう答えるが、かなりキツそうだ。
何発も持たないだろう。
だが、容赦なくラディアドレイクは再びブレスを吐こうとしてくる。
「チッ、今度こそヤバいぜ……」
「おやおや、鬼神のアーシャともあろうものが、弱音を吐くとは情けないねぇ」
「え?」
声がする方向を見ると、誰かが建物の上に立っていた。
長く美しい銀髪に褐色の肌、長い耳を持つその人物は、ラディアドレイクに向け弓をまっすぐ構えると、矢じりに火花が点いた矢を放つ。
その矢は完璧な精度でラディアドレイクの口に命中すると、爆発を起こした。
「ギャオォォォォ!?」
口の中を爆破され、ラディアドレイクが後ろ向きに倒れる。
「まあ、こんなものだね」
「あ、あんたは誰だ?」
アタシには心当たりがない。
だが、誰かに似ているような気がする。
「おや、そういえば痩せた後に会うのは初めてだったかい?」
その人物は屋根から華麗に降り、アタシ達の前に立つ。
「私だよアーシャ。五十年前からこの町に住んでいる、ダークエルフのヴェルミナさ」
そこそこ懐かしいキャラ続々投入中です。
覚えてる人いるかな?




