表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

146/158

146話 和解と殺意

 アルテナ side


 正面からクソウサギの刀とあたしの双剣がぶつかる。

 さっきと同じ鍔迫り合い状態。

 こいつはスピードは高いけど、パワーはそれほどでもない。

 このまま押し切ってやろうとしたその時。


「うぐ……!?」


 クソウサギの前蹴りが腹部に当たり、あたしは後ろに吹き飛ばされる。

 最初からこれを狙ってたのねこいつ……!

 体勢が崩れたところにすかさずクソウサギは追撃で斜め右上から袈裟斬りを仕掛けてくる。

 それを左手の剣で何とか防ぐと、流れるように返しの刃で斜め下から斬り上げてくる。

 それも右手の剣で防ぐと、今度は体を回転し、無防備になったあたしの右側の腹に向け回し蹴りを放ってくる。

 さすがウサギ、足癖が悪い。

 だけど。


「調子に乗んじゃないわよ!」

「ぐ……!?」


 あたしは膝蹴りでクソうさぎの回し蹴りを弾く。

 そして、バランスを崩したところに左の剣で突きを繰り出す。

 けれど、クソうさぎは瞬時に後ろへ飛び、突きを躱し距離を取った。


「……ふん、なかなかやるじゃないですかポンコツさん。ちょっと驚きましたよ」

「ふ、あんたこそ結構やるじゃない。最後の蹴りを防げなかったらまずかったかもね」

「頭が悪い癖にそういう判断はできるんですから……むかつきますね本当に!」


 そう言うと、クソうさぎは腰を低くし、抜刀の構えをとる。

 すると、冷気が刀に集まり始めた。

 

「これならどうですか!『霜刃乱波(そうじんらんば)』!」


 クソうさぎが抜刀しながら刀を振りぬくと、冷気を帯びた斬撃があたしめがけて飛んでくる。

 それを避けると、クソうさぎは連続して斬撃を飛ばしてくる。


 「ふ、数撃ちゃ当たるとでも思ってんの!?」

 

 クソうさぎに向けて、次々に放たれる斬撃を横にかわしながら突っ込んでいく。

 このまま双剣の間合いに持っていこうとしたその時、足がつるっと持っていかれる。


「げ!?」


 足元を見ると、斬撃が飛んだ部分の床が凍っていることに気づく。

 やばい、狙いはこっちだったか。

 完全にやられた。

 

「もらいましたよ! 抜刀術『氷刃一閃(ひょうじんいっせん)』!」


 氷に足を取られ、前のめりに倒れようとしていたあたしに向かって、クソうさぎがものすごいスピードで突っ込んでくる。

 このまま倒れれば間違いなく斬られる。

 

「クソ、やられた! とでも言うと思った!?」


 倒れる瞬間左手の双剣を地面に突き刺し、それを軸に上へ飛びあがり、クソうさぎの一閃を躱す。


「な!?」


 そして、空中で右手の双剣に炎をまとわせ、上から攻撃を仕掛ける。


「喰らいなさい! 『爆裂剣(ブラストブレード)』!」


 クソうさぎに向け空中から剣をぶん投げる。

 クソうさぎはとっさに躱すけど、それは想定内。

 剣が地面に突き刺さった瞬間、ドカン! と爆発を起こし、クソうさぎを大きく吹き飛ばす。


「うわぁ!?」


 吹き飛ばされたクソうさぎが地面を転がり倒れるのを見ながら地面に着地すると、地面に突き刺した双剣を回収した。


「どうしたの? まさかもう終わりとか言うんじゃないでしょうね?」


 あたしがそう言うと、クソうさぎは息を切らしながら立ち上がる。


「やってくれましたね……。どうするんですか? 服が焦げてボロボロじゃないですか。もしかしてこのまま私を他人に見せられない姿へ変えて楽しむつもりですか? いやーそんなポンコツさんにそんな気色悪い趣味があったなんて驚きですね!」

「ふ、そんな減らず口を叩けるってことはまだまだ余裕そう……何よその目は」


 クソうさぎが怒りを込めた鋭い目でにらみつけるのを見て、あたしは警戒する。


「こんな目にもなりますよ……ポンコツさん、どうして()()を出さないんですか?」

「は? 何の話よ?」

「とぼけないでください。実際見てはいませんが、ギルドへ登録された情報によれば、あなたは『デスサイズ』と『邪眼』というスキルがあるはずです。何故それを使わないのかと聞いてるんです」

「……ああ、そういう事ね」


 確かにここは開けた場所。

 デスサイズは存分に振るえるし、邪眼だって見るだけでいいんだから当然使える。

 じゃあなぜ使わないか?

 それは単純な理由だ。


「簡単なことよ、この勝負には()()()()からよ」

「どういうことですか?」

「だってこれは真剣勝負の場よ? 使ったら卑怯じゃないの」


 デスサイズは刀だろうが容赦なく斬り裂くし、邪眼で麻痺させればクソうさぎは動けなくなる。

 その気になれば一瞬で決着をつけることだってできる。

 けれどそんな勝ち、この場ではおもしろみどころか、何の価値もない。


「そんな勝ち方したところで何になるのよ? 正面からあんたを実力でぶった倒す。そうじゃなきゃ、実力を示したことにならないわ」

「……プッ」


 何故かクソうさぎが吹き出す。


「あはは……なんなんですかその理由は……。まるで私がポンコツさんに試練でも課してるようじゃないですか。そんなつもりはないんですけどね。でも……」


 クソうさぎはニヤッと笑いこっちを見る。


「……嫌いじゃないですよ、そういうの」


 クソうさぎはそう言うと、今まで以上に腰を深く落とし、抜刀の構えを取る。


「今から私が持つ全力の一撃、お見舞いしてあげます。まさか避けるなんて臆病者なマネしないでしょうね?」

「ふ、望むところよ」


 こっちも双剣を構える。

 クソうさぎからは妙に圧が感じられない。

 まるでただのカカシにも見える。

 ……だからこそ油断はできない。


「こっちもとっておきを見せてやるわ。炎と闇よ、我が剣に集え」


 赤の双剣イグニスに炎を、黒の双剣アビスに闇の魔力を纏わせ、交差して刃を合わせる。

 炎と闇、それぞれの魔力を交わらせ、黒炎を纏った双剣を作り出す。


「闇の炎に焼かれて消えなさい! クソうさぎ!」


 渾身の力を込めて高く跳躍し、黒炎を纏った双剣を振り下ろす。


「永久に凍りつくがいいです……ポンコツさん!」


 クソうさぎからまるで、閉じられた蓋が開いたように圧が溢れ出し、一瞬で空中にいたあたしの目の前まで移動し、今までと比べものにならない冷気を凝縮した刀を抜刀する。

 そして。

 

「『極氷絶斬(ごくひょうぜつざん)』!」

「『黒炎斬(イクリプス・ブレード)』!」


 互いの剣技がぶつかり合い、大きな爆発が起きた。



           ※


 マルタ side


 最後に放った一撃は、単純かつ、私が持つ最高の一閃でした。

 ですが。


「かはっ……」


 私は力負けし、地面に強く叩きつけられながら倒れました。

 持っていた刀はぶんぶんと空中で舞いながら、遠くの地面に突き刺さりました。

 武器もない、立てる力もない。

 言い訳する余地もなく、私の完敗でした。


「あたしの勝ちよ、クソうさぎ」


 気づけば大の字になった私をポンコツさんが見下ろしていました。


「やれやれ……ポンコツさんに負けるなんて……カッコ悪いですね。今日が私の……黒歴史になりそうですよ」

「ふん、言ってくれるじゃない。……どうしてそこまでしてあたし達を止めたかったのよ?」

「……また言わせるんですか? どんだけ私を辱める気ですか?」

「だってあたし達とあんたって、冒険者と受付嬢、それだけの関係だった筈でしょ?」


 ポンコツさんが怪訝な顔をしながら聞いてきます。

 まあ……確かに疑問に思うところですね。

 

「……ポンコツさん達のせいですよ。冒険者を煽るいやらしい受付嬢。そんな所に貴方達は進んで通うんですから。おまけに楽しそうに冒険してダンジョンを攻略していって……。なんか昔を思い出しちゃったんですよね。仲間と楽しく冒険してた時のことを……。だからこそ、私みたいな思いをして欲しくないって考えちゃったんですよね。我ながらバカなもんです」

「……」

「まあでも、負けてしまったのでしょうがありません。さっさと先に行って下さい。……ちゃんと生きて帰ってくるんですよ……」


 もう私にできることはない。

 そのまま目を閉じようとしたその時。


「なに勝手に終わった空気出してんのよ? あんたにはまだ働いてもらうわよ」


 そう言って、ポンコツさんは私に手を伸ばします。


「……どういう事ですか?」

「私と戦った傷くらい、エレンが回復すれば治るわ。その後、一緒にダンジョンを攻略するのよ」

「はい?」


 驚きのあまり変な声が出ます。


「そもそも最初から気に入らなかったのよね。あんたの仲間が簡単にやられた理由、そんなに知りたいなら他人に任せてないで自分の目で確認しなさいよ」

「……貴方のいうことは最もですけどね、トラウマなんですよ? 行こうとしたら足が震えて立てなくなるくらいやばいんですよ? だからこそ行けなかったんじゃないですか」

「ふ、そんなの知ったこっちゃ無いわ。それに、あんたよりずっと強いあたしが一緒なのよ? 怖がる必要なんてある?」

「……はぁ。ずいぶん勝手ですね。そんなに言うなら……」


 私はポンコツさんの手を取り、ゆっくりと起き上がります。


「責任取って私を守って下さいよ。()()()()さん」

「ふ、わかったわよ()()()


 起き上がった時、気づけば互いに名前で呼び合ってました。

 これは心が通じ合ってしまったと言うことでしょうか?

 何というか、恥ずかしいですね。

 ……悪く無いですけど。


「エレン、マルタの回復を……」


 アルテナさんがエレンさんを呼んだその時。


「マルタ! 後ろ!」

「え?」


 エレンさんが私に向けて叫んだ瞬間、既視感のある殺意が背後から私を襲いました……。

これが今年最後の更新になりそうです。

拙い作品ですが来年も読んでいただけたら幸いです。

ではみなさん良いお年をー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ