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140話 決戦前夜

少し恐怖演出があるので注意

 ギルドでの会議が終わり、すっかり日が暮れた中カルロさんの家に戻った私達。

 部屋でテーブルを囲み、攻略のための話し合いを始めようとしていた。


「エレン様、最下層ってどんな場所なの?」

「ちょっと待ってね」


 ミラに聞かれ、腰につけたいつものダンジョンマニュアルを開く。


「またそのクソうさぎが書いたマニュアル? 最下層の事も書いてあんの?」

「ええ、ほらここよ」


 ページを開きアルテナに見せる。


「どれどれ……『最下層は広い廃墟の奥に古城があるエリアとなっています! (ブラック)スケルトンを始めとした死霊系モンスターがじゃんじゃん出てきますよ! 古城ではさらにリビングアーマーやデュラハンなども出てきます! 数が多いので囲まれないよう要注意ですね! まあこれを渡された初心者冒険者がこんな情報知ったところで役に立たないでしょうけど! 無駄な知識を頭に入れられた気分はどうですか?』クックック、何が無駄よこの間抜けうさぎ」

「本に勝ち誇ってどうすんのよ」


 まあ今までさんざんマニュアルに煽られてきたし気持ちはわかる。

 でも書いてある情報はこれだけじゃない。


「アルテナ、次のページにも大事なことが書かれてるわよ」

「なになに……?『古城の頂上、恐らく玉座の間でしょう! そこには光り輝く何かがあります! 恐らくダンジョンコアですね! でも注意! ダンジョンコアの近くには、守護(ガーディアン)魔物(モンスター)と呼ばれる超強い魔物がいます! 戦いは避けられないので気を付けましょう! まあ出会いたくても出会えないでしょうけどね! ぷっぷっぷ」 ふ、あのクソウサギ。明日その守護魔物とダンジョンコアを持って帰ったらどんな反応するでしょうかね、クックック」

「はいはい」


 二回目は適当に流しておく。

 マニュアルに書いてあることは以上だ。

 そしてこれが最後のページでもある。

 

「なんだかんだ、お世話になったわね」


 初めてギルドに来た時マルタに渡されたこのマニュアル。

 うさん臭かったし目が滑る文章だったけど、これのおかげで事前に詳しくダンジョンの事を知ることができた。

 今度マルタに改めてお礼を言おうと思い本を閉じる。


「さて、これを踏まえたうえでどう行動するかだけど……私は一直線にコアへ向かうのがいいと思うわ」

「え? でも古城よ? 地下に宝物庫とかあるかもしれないじゃない」

「お宝!? ミラ探したい!」


 二人がロマンに心を震わせる。

 うん、こいつらは……。

 

「ロマンを求めるのを否定はしないけど、現状を考えなさい。時間がないし、今回は失敗が出来ないのよ?」


 今回の攻略には町の運命がかかっている。

 寄り道をしている場合じゃない。


「うん、やっぱダメだよね……」

「ち、わかってるわよそんな事。言わせてくれてもいいじゃないの」


 一応二人もわかってはいたらしい。

 安堵しながら話を続ける。

 ミラが前に立ち、敵の攻撃をガードしながら道を開く。

 アルテナが敵を蹴散らし、私は状況に応じて指示、サポート。

 一直線にコアを目指し、守護者を倒してダンジョンコアを奪取し、魔物の暴走(スタンピード)を止める。

 シンプルかつ、一番堅実な作戦だ。


「ふーん、あんたがさっき言ってた準備ってのはこの話し合いだけ?」

「いや、まだあるわ。アルテナ頼みがあるんだけど」

「なに?」

「あなたの()()をちょっと貸してくれない?」

「双剣を?」


 マテツさんに作ってもらったアルテナのサブウエポン、ミスリルで出来た赤と黒の双剣を受け取りちょっとした細工を施していく。

 おそらくこれは役に立つはずだ。

 ただ、細工の内容を伝えるとアルテナがなんか「イメージが……」とか言って嫌そうな顔をしていた。

 なんでだ。


 その後も細かい話し合いをし、話がまとまった所で部屋の明かりを消す。

 明日は決戦だ、夜更かしをするわけには行かない。

 しかし、最下層は「紅蓮の鉄槌」を含めたいくつもの冒険者が過去挑戦し、攻略出来なかった危険な場所。

 ミラが怖がって眠れないか心配だったが……。


「怖いけど……エレン様とアルテナ様が一緒だから大丈夫!」


 そう言って少し後に本体の中で横になって寝息を立て始めた。

 昔はあんなに憶病だったのに。


「強くなったわね……それに比べて」


 私は緊張でさっぱり眠れる気がしなかった。

 

「ミラの心配をしてる場合じゃなかったわね……ん?」


 気付くと、隣のベットで寝ているアルテナも何やら落ち着かない様子をしている。

 

「どうかしたのアルテナ?」


 まさかアルテナも緊張してる?

 そう思って声をかけると。


「いやー、明日が楽しみすぎて眠れないのよ」

「……あんたね」


 呆れた。

 まあそんなタマじゃないとはわかっていたけど。


「町の命運をかけてダンジョン攻略に挑むのよ! 物語の主人公みたいで燃える展開じゃない!」

「全く……ブレない奴ね」


 この状況ですら、アルテナにとっては冒険を彩るスパイスみたいだ。

 

「何呆れた声出してんのよ? あんただってこれまでの冒険楽しかったでしょ?」

「楽しくなんて……」


 これまでの冒険を振り返る。

 カルロさん、アーシャさん、マルタ、ドン・ガイさん、そしてミラ。

 いろんな人と出会いがあった。

 時にはブルーオーガやラディアドレイクみたいな強敵を相手にしたり、砂漠や雪山に挑んだり、様々な冒険をした。

 それが明日終わる……。


「……まあ悪くなかったわ」


 気付けば自然にそう返していた。

 アルテナがこっちをニヤニヤと見てくる。

 ちっ、面倒くさい。


「安心しなさい、ダンジョン攻略が終わってもまだまだ冒険は続くんだから。次はどこへ行こうかしらねー?」

「…………」


 そうだ、私はなにを勘違いしてたんだろう。

 こいつにとってはただの通過点に過ぎないというのに。

 つまり、私はまだまだこれからこいつの冒険に付き合わされるというわけだ。

 寂しさが消え、一気に頭が痛くなった。


(はぁ……早く帰りたい……)


 現実逃避がしたくなり、マルタのマニュアルを布団にもぐりながら開く。

 明日のためもう一度情報を確認しておくのも悪くはない。

 その時。

 

「……あれ?」


 先ほど読んだ、最下層の事が書かれている最後のページの端が少しだけぺらっと折れていることに気づく。

 その先にはまだ見ぬページがあった。

 開こうとすると、ページがくっ付いていてうまく開かない。

 気づかなかった原因はこれのようだ。

 

「水でも垂れたのかしら?」


 ページが破けないよう丁寧に剝がすと、そこには……。


『でも……最下層で一番警戒しないといけないのは……仲間から目を離さないことです……。さっきまで隣で笑ってたのに……みんな……死んでいく……。何かが来ます……冷たい殺意が私の後ろに……止めて……ヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテ!!!!!!!!!


……最下層に……行っては……だめです』

「なっ……!?」


 まるでホラーに出てくるような文章に体が震え、思わず声を出す。


「ちょっとエレン、どうしたのよ?」

「……何でもないわ」


 反射的にそう返す。


「ふ、思い詰めすぎでしょ。私たちがやればいいのはダンジョンをいつも通り攻略するだけなんだから」

「うん……そうね」


 アルテナは私がまだ緊張してると誤解したようだ。

 隠れてもう一回本を開く。

 

(これは一体……)


 過去、マルタが豹変した時の事を思い出す。

 その時も、最下層の話題をしていた時だった。

 そしてこの内容……。


(……嫌な予感がするわね)


 ダンジョンを攻略するだけ……果たしてそうだろうか?

 何かが起きる気がしてならない。

 そう思いながら、夜は更けていった。

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