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133話 アーシャの依頼

 アルテナのチート能力が炸裂し、楽に雪山エリアを攻略した私達。

 なんか崩れ落ちてるアルテナの背中をミラが引っ張りながら、ギルドのロビーに戻ってきた。


「あれ、マルタが見当たらないわね」


 冒険者たちで騒がしいギルド内でもマルタがいる受付はすぐ見つかる。

 何故ならそこには誰も並ばないからだ。

 でもそんなところは見当たらない。


「今日は休みかしら?」

「エレン様、ウサギのお姉さんならあそこにいるよ」

「え?」


 ミラが指さす方を見ると、マルタが受付で一組の冒険者パーティーの相手をしていた。

 珍しいこともあるものだ。

 だが。


「貴様いまなんつった!?」

「あれー? 聞こえなかったんですか? あなた達みたいな素人がダンジョンに入って無事で帰ってこれるわけないから帰った方がいいって言ったんですよ。難聴ですか? 病院行った方がいいですよ?」

「ふざけるな! 俺たちはこれからダンジョン攻略し世界に名声をとどろかせるその名も……」

「ププッ! あなた達のパーティ名とか興味ないですから! ていうか名声とどろかせたいならこんな田舎ダンジョンじゃなくてもっと有名なとこ行ってくださいよ! ひよっちゃいましたか!? ここなら楽にクリアできると思っちゃいましたか!? あ、入場の許可証は発行したのでどうぞ骨を埋めて来てください! まあダンジョンで死んだら骨も残りませんけどね! じゃあまたのお越しをお待ちしてます!」

「二度とこねぇからなこの野郎が!」


 マルタの毒舌爆速トークに冒険者たちは怒りながら行ってしまった。

 私達以外の相手をしているところは初めて見たが……なるほど、だれもマルタの所に並ばないわけだ。

 再び誰もいなくなったマルタの受付に向かう。


(どうやって声をかけようかしら……)


 前回のやり取りを思い出すと妙に声をかけづらい。

 いつもならアルテナに任せるところだけど、今は使い物にならないし。

 どうしようか迷っていると、マルタのほうが先に私達を見つけたようで、向こうから声をかけてくる。


「おや、カタストロフの皆さんお帰りなさい! ダンジョン攻略お疲れ様です!」

「え?」


 なぜか待ってましたと言わんばかりの満面の笑顔で私たちを迎える。

 なんか拍子抜けだ。

 

「ただいまマルタ。えっと……この前は……」

「ああ、そのことは忘れてください! それよりもこんなに早く帰ってきたってことは攻略失敗したんですね! まあそういうこともありますから落ち込まないでください! 笑いものとしてみんなに広めといてあげますから!」

「慰めてるのか煽ってるのかどっちなのよ」


 攻略が早すぎてなんか誤解されてるけど、いつも通りのマルタに戻ってて安心した。


「ところでポンコツさんはどうしたんですか?」


 マルタが体育座りしながらミラに引っ張られてるアルテナを見て言う。


「アルテナ様、大丈夫?」

「こんなつまんない攻略認めないわよ……」

「アルテナ、いつまでも落ち込んでないでシャキッとしなさい」

「ああ、攻略に失敗して落ち込んでるんですね! いやーポンコツさんがここまで落ち込むなんて思いませんでしたよ! 自分の実力が通用しなくて凹んでるんですね! ねぇどんな気持ち? 今どんな気持ちですか?」

「違うわよこのクソウサギ!」


 マルタに煽られアルテナが立ち上がる。

 とりあえず気力は戻ったようだ。


「マルタ、実はね……」


 太陽の事を言っても信じないと思うので、そこを伏せて事情を説明すると、マルタが口を開けて呆然とする。


「は? 雪山エリアを攻略した? マジで言ってますか?」

「ええ、そうよ」

「いやいや、冗談も大概にして下さいよ! たった一日ちょいであの極寒の氷雪地帯を突破できるわけが……」

「まあそう思うのも無理はないけど、アルテナが一人で全部何とかしたのよ。ねぇミラ?」

「うん、アルテナ様の魔法で全部倒してたよ」

「ふ、あたしにかかればこの程度余裕だったわ……はぁ」


 顔をそらしながらため息をつくアルテナ。

 いい加減尾を引くのは止めてほしい。


「しょ、証拠は!? 証拠はあるんですか!?」

「グリムフロストの死体を見せれば納得するかしら?」

「え……あの死神を倒したんですか!?」

「ええ、まあ」


 勝手に死んだんだけど、原因はアルテナの魔法だから間違ってない。 


「ふ、後は最下層のみってわけよ。早速明日にでも攻略を始めようかしら」

「アルテナ、頼むからそれは止め……」

「ふざけないで下さい!!」


 マルタが再び豹変し、拳を机にたたきつけながら叫ぶ。

 

「そんなこと絶対に認めませんからね!」

「マルタ……?」

「ちょっと? この前といい、どうしたのよクソウサギ?」

「だって……!」

「おや、何の騒ぎかな?」


 私達が困惑する中、ギルドマスターのドン・ガイさんとアーシャさんがやって来る。


「なんでアーシャさんも一緒に?」

「カーシャの見舞いのついでだ、ちょっと町の事で相談があってな」

「ていうかあんたら知り合いだったの?」

「彼女は自警団のリーダーだからね。ギルドはダンジョンだけじゃなく町を守る役目も担っているし何かと話すことがあるのさ」


 なるほど、ドン・ガイさんが海パン姿の変人だという事を除けば不思議じゃない。

 

「それで、マルタ君は何を騒いでるんだい?」

「……何でもないです。カタストロフの皆さんが雪山エリアをあっさり突破したって聞いて驚いてただけです。私は用事があるので失礼します」


 顔をそらしながらそういうと、またマルタはギルドの裏へ去ってしまう。


「ちょっとクソウサギ、素材の話とかがまだ……」

「行かせてやってくれないかアルテナ君。彼女にも事情があるんだよ」


 そう言ってドン・ガイさんがマルタをかばう。

 いったいどういう事だろう?

 聞きたいところだが、また日を改めた方がよさそうだ。


「代わりに僕が対応しよう。その前に雪山エリアを突破したというのは本当かい?」

「ええ、そうよ」

「マジか? カーシャ達もかなり苦労してたっていうのに驚いたぜ」

「ふふ、これで最下層到達パーティが二組になったわけだ。ダンジョンが攻略されるのも近いかもしれないね」


 まあそのためには最下層を攻略しないといけないわけだが。

 カーシャさん達でもボロボロにやられたのにクリアできるのだろうか?

 正直行きたくない。

 でも。


「クックック、期待してなさい。あたしたちカタストロフが最下層を攻略してダンジョンコアを手に入れてやるんだから! あーはっはっは!」

「はぁ……」


 私の気も知らず腰に手を当て高笑いするアルテナ。

 あー胃が痛くなってきた。


「エレン様、大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ」


 ミラにまで心配されてしまった。

 とにかく最下層は今までになく力を入れて準備をしなければならない。

 生き残って無事元の世界に帰るために。

 改めて決心を固める。


 その後、雪山エリアで手に入れた(拾った)魔物の素材や魔石をギルドに預け、カルロさんの雑貨店に戻ったその夜、就寝しようと思っていた私たちのところにアーシャさんが訪ねてくる。


「お前ら、ちょっといいか?」

「アーシャ、こんな時間にどうしたのよ?」

「わりぃな。ちと大事な話があるんだ」


 大事な話とは何だろう?

 

「まずはカーシャ達の事だな。三人とも無事目を覚ましたぜ」

「シャルルちゃん目を覚ましたの?」

「それはよかったわ」


 ひとまず安心だ。

 ミラも嬉しそうな顔をしている。


「まあ体は弱ったままだからしばらく安静にしてないとだけどな」

「ふ、てことはしばらくあたしたちの独壇場ってわけね。クックックあだぁ!?」

「少しは心配しなさいよ」


 とりあえず頭を魔導銃で殴っておく。


「それで、次の話が本題なんだが……お前たちを見込んである依頼をしたい」

「アーシャ、もしかしてそれって冒険者としての?」


 アルテナが目を輝かせ食いつく。


「ああそうだ、詳しいことは明日ギルマスを交えて話す」


 ドン・ガイさんを含めて?

 ただの依頼じゃなさそうだ。


「内容によるわね。アーシャさん、その依頼って一体……?」

 

 アーシャさんは少し考えるそぶりをし、意を決した表情で言う。


「影無関連の依頼だ」

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