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132話 アルテナはやり直したい

 地面の泥が固まるのを待って大体30分後、だいぶぬかるみがマシになってきた私たちは行動を再開する。

 ドラゴンスケーターを改造し、下に車輪を作ることで普通の地面でも動くようにする。

 これで問題なく進めるだろう。

 ドラゴンスケーターを時速数十キロで発進させた私達は雪山(?)エリアを進み始める。


「ねぇアルテナ、砂漠エリアよりも暑さがきついんだけど」

「じめじめするよ~……」


 雪を溶かしたせいで湿気が強く、湿った暑さと風が私たちを襲う。

 クーラー付きローブでもきつい。

 砂漠のカラッとした暑さのほうがだいぶマシだ。


「文句言うんじゃないわよ! せっかく雪を消してやったのに」

「そういえばあの太陽いつまで続くの?」


 アルテナが魔法で作った太陽は、上空で真っ赤に燃えながらサンサンと輝いていている。


「さあ? 燃え尽きるまでじゃない?」

「何であなたが把握してないのよ」


 魔法はすごいのに適当だ。

 まあアルテナらしいと言えばそうだが。

 

「それにしてもなんだか寂しい風景になっちゃったわね」


 雪が降り積もり幻想的だった山はすっかり荒野みたいになってしまった。

 木も一応あるが、正直枯れているようにしか見えない。

 ここがダンジョンでよかった。

 外でやったら環境破壊もいいところだ。


「アルテナ、やっぱりあなたって邪神よね」

「なんですって!?」


 そんなやり取りをしながら一時間後、私はある異変を感じていた。

 

「魔物がいない……」


 ダンジョンには必ず配置されている魔物が姿形も見えない。

 探知魔法で調べても何の反応もない。

 おかしい、今まではそんな事なかったはず。

 その時、小さな反応を複数前方から感じ、スケーターを停止する。


「エレン、魔物はどこよ?」

「前から反応はするんだけど……」

「あ、エレン様! 何かキラキラしたのが落ちてるよ!」


 ミラが分身を飛ばし地面に落ちたものを拾ってくる。

 

「これは……氷の魔石ね」


 青白く輝き、冷気を発している。

 間違いない、反応の正体はこれだ。


「何で魔石が落ちてるんだろう?」


 ミラが首をかしげる。

 確かに魔石だけ落ちてるっていうのは妙だ。

 とりあえずいくつか落ちてた魔石を回収し、再び先に進むと今度は大きな反応が現れる。

 武器を構え進むと、分厚い白い毛皮で覆われた大きなサルの魔物が前のめりに倒れていた。



「何でこいつ倒れてんの?」


 アルテナが近づきデスサイズでちょんちょんと触れてみるも、何の反応もない。

 私とミラは警戒しながら回り込むと、猿の魔物はまるで毒でも飲んで苦しみぬいたかのようにひどい顔をしていた。


「このお猿さんに何があったんだろう?」

「誰かが先に倒したのかしら……いや、これは……」


 なんか原因がわかってきたかもしれない。

 そう思っていると、猿の口が少し動く。

 まだかろうじて生きていたらしい。

 猿は、かすれた声で一言発した。


『ミ……ミズヲ……ク……レ……』

「「……」」


 その言葉を最後に猿は息絶えてしまい、私とミラはすべてを悟った。

 

(アルテナの魔法で敵が全滅してる!!)

(アルテナ様の魔法でみんな死んじゃった!?)


 確かアルテナは氷を優先的に溶かすと言っていた。

 そのせいで元雪山にいた氷属性の魔物たちが生きていられなくなったのだ。

 そうでなくとも極寒の中で生きる魔物にこの暑さは耐えられなかったんだろう。

 さっき落ちていた魔石も氷のゴーレムか何かが溶けて無くなった跡に違いない。

 どうしよう、これをアルテナに言うべきか……。


「「……」」

「ちょっと、何じっとこっちを見てるのよ?」

「いや、その……」

「実はアルテナ様の魔法でもごご……!?」


 とっさにミラの口をふさぐ。

 本人が気づいてないしこの事実は言わない方がいい。

 まだ私達がいるのは二十一層。

 雪山エリアは二十五層まで続くのだ。

 もしこの事実を知ったら、魔物と戦いたいからもう太陽を出さないと言いかねない。

 

(ミラ、この事は秘密よ)

(う、うん。わかった)


 楽に攻略するためだ。

 ミラには固く口留めしておく。


「よし、とっとと先に進みましょう」

「え? でもこいつに何があったのかわかって……」

「きっと別の冒険者が倒したのよ。ほら、さっさと行くわよ」


 適当にはぐらかしさっさと先に進む。

 アルテナが気づく前に攻略を終えなくては。

 その後、魔物の襲撃がないまま下へ降りる階段を楽々見つけた私たちは次の階層へ進む。

 そして、二十二層に降りると再び極寒の雪山が広がっていたので……。


「アルテナ、よろしく」

「ふ、任せなさい」


 とっとと太陽を出してもらって雪を溶かし、魔物を全滅させてもらう。


(よし)


 心の中でガッツポーズし、再び先へ進む。

 太陽を出す魔力が心配になったが、アルテナに聞くとまだまだ大丈夫らしい。

 相変わらず異常な魔力だ。

 さすがチート女神。

 この調子なら一切の障害なく攻略できるかもしれない。

 その後も数時間で階段を見つけ続け、雪山エリアに突入してから一日後、私達は二十五層にたどり着いていた。


「何でどいつもこいつも死んでんのよ!?」

「さあね」

「うう……」


 道中、魔物の死体と落ちた魔石しか見かけてないアルテナが不満を爆発させる。

 さすがにもうそろそろ気づきそうだ。

 ミラも黙っているのが辛くなってきた様子だし早く攻略してしまおう。

 この階層にギルドへ戻る転移陣があるはず。

 

「先に誰かが倒したんでしょ」

「そんな感じには見えなかったけど?」

「それよりも早く階段を見つけ……っ!?」


 強い魔力反応を感じ取り辺りを見回す。

 すると、山の上に青く輝く毛並みをした巨大なオオカミの魔物が四足で立ち、こちらを見下ろしていた。


「わぁ……キレイなオオカミさんだ!」

「やっとまともな奴が出てきたわね! あいつはなんていう魔物!?」

「あれは……この雪山エリアのボス『グリムフロスト』よ」


 巨大な体躯で雪山を軽快に走り、強力な牙と爪、氷のブレスで獲物を狩るまさに死神。

 生態系の頂点に立つ魔物だ。

 めったに出現しないはずなのに運が悪い。

 

「相手にとって不足はないわ! かかってきなさい!」

「ミラ、守りは任せたわよ」

「わかったエレン様!」


 ドラゴンスケーターを降り、それぞれ武器を持って迎え撃つ準備をする。


『ゴォォォォォォォォン!!』


 それを見たグリムフロストも空に向かって吠えると、一気に山を下り襲い掛かってくる。

 緊張が走ったその時。


『ヴォォンッ!?』

「「「え?」」」


 グリムフロストの足がもつれ転び、そのまま山を勢いがついたまま転がり落ち、ドシーン! と目の前に落ち砂埃が巻き起こる。


「ケホッケホッ……何が起こったの?」


 砂埃が晴れると、グリムフロストは舌を出しぴくぴくした状態で死にかかっていた。

 どうやら雪山の王者もアルテナの魔法で相当弱まっていたらしい。

 まさかコケてこんな無様な姿をさらすことになるなんて……。


「……ねぇエレン、もしかして今までの魔物ってアタシの魔法のせいで……?」


 あ、やばい。

 気づかれた。


「そ、そうだったのね……全然わからなかったわ」

「嘘よ! あんたが気づかないわけないでしょ! 知ってて黙ってたわね!」

「うんそうだけど? だからなに?」

「開き直ってるんじゃないわよ!」

「そもそもこの魔法を思いついたのはあなたでしょ」

「知ってたら使ってないわよ! こんなつまらない攻略認めないわ! 雪山エリアを最初からやり直すわよ!」

「そんなことしてたら紅蓮の鉄槌に先を越されるわよ?」

「うぐ……せめてこいつとはちゃんと戦わせなさいよ! こいつにヒールをかけなさい!」

「何で敵を回復させないといけないのよ」

「いいからさっさと!」

「エレン様、アルテナ様、オオカミさん動かなくなっちゃった」

「「え?」」


 どうやら変なやり取りをしてる間に死んでしまったらしい。

 よし。


「じゃあしょうがないわね。ミラ、グリムフロストを収納して頂戴」

「わかった」

「こんなの認めないわよーー!!!」


 自分の魔法が原因のくせに何を言ってるんだか。

 結局、アルテナが駄々をこねながらも私たちは転移陣を見つけ、雪山エリアの攻略を一日半程度で終えてしまうのであった。

 楽できて本当に良かった。

 本当の本当に良かった。

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