131話 〇んでから助けよう
辺り一面雪が降り積もる白銀の世界。
灰色の分厚い雲が空を覆っており、絶え間なく大きな雪の結晶を降らせている。
吐く息も白く染まり、凍える風が私たちの体力を奪う。
ここが最下層を除けば最後のエリア、雪山エリアだ。
「想像以上に積もってるわね……」
絶えず降る雪のせいで視界が悪い上に、膝の高さまで降り積もった雪が厄介だ。
「歩くのに邪魔だわこの雪……うわ!?」
アルテナがこけて雪に埋もれる。
こんなのじゃまともに動けない。
砂漠の砂がかわいく見えてくる。
「さっさと着替えましょうか。ミラ、お願い」
「うん」
ミラが収納から防水加工された毛皮のフードやズボン、手袋、ブーツなどを取り出す。
しかもこれは私が弱い火魔法を魔法付与した特殊な雪山用装備。
魔力を通しやすいようミスリルの銀糸が含まれていて、魔力を流すことで内側を温かくできるのだ。
ちなみにミラは本体(箱)に毛皮のマントを巻き付けた。
「ミラ、次はアレを出して」
「わかった。えい!」
着替え終わった後、ミラは雪の上にあるものを出す。
砂漠エリアでも使った、後部にある大きな扇風機を推進力にして動くドラゴンスケーターだ。
頑丈な土のみで作ってあるから案外軽く、雪の上でも大丈夫なはずだ。
今回もこれに乗って雪山を進む。
砂漠よりスピードは落ちるだろうけど、傾斜はそれほどでもないし、十分これで行けるはずだ。
「よし、乗り込むわよ」
「はーい」
私が運転席に、ミラが後部座席に乗り込む。
「アルテナ、あなたも早く乗りなさい」
「……」
「アルテナ?」
どうしたのだろう?
なんか難しい顔をしながらこっちを見つめている。
「どうしたのよ?」
「……つまんないわ」
「え?」
「前回と攻略方法が同じじゃないの。もっとひねれなかったの?」
「はぁ?」
こいつは一体何を言っているのだろうか?
「確かにほぼ同じだけど……これが一番楽で確実な方法じゃない。何よ、歩けっていうの?」
「そんなつもりはないわ。ただせめて乗り物を変えなさいよ。氷で作ったりとかトナカイに引っ張ってもらって走るとか」
「夢見るのもいい加減にしなさいよあなた」
こっちは真面目にやってるっていうのに……。
頭が痛くなってくる。
まあ氷なら実現可能だとは思うが。
「仕方ないわね……ちょっと待ってなさい」
このまま駄々をこねられても困る。
ドラゴンスケーターから降り、氷魔法で氷のスケーターを作ろうとする。
その時。
「あ、ちょっと待ちなさい。もっと楽で確実な攻略法を思いついたわ!」
「え?」
そう言ってアルテナが何かを閃いた後、歩いて私とミラから離れていく。
「エレン様、アルテナ様は何をする気なの?」
「さあ……」
でもなんか既視感がある。
数十メートル離れたところでアルテナが止まり、両手を天高く上げる。
「……我に眠りし古の太陽よ、今再び目覚め我らを熱く照らしたまえ」
アルテナのフードが浮かび上がったと思うと、とてつもない魔力の高ぶりとプレッシャーが私たちを襲い、空に巨大な炎の弾が作られていく。
「うわ!?」
「まさか……!!」
砂漠エリアの時と同じだ。
まさかこいつ……!?
『その力を持って我らの道を開かん! 古の太陽』!」
魔法の詠唱が終わると、上空に巨大な炎の弾が勢いよく射出され天高く浮かび上がったと思うと、太陽のように私たちを熱く照らし始める。
その影響で、空の雲がどんどん晴れていき、まるで真夏のような天候に変えられてしまった。
「フッフッフ、どうよアタシの魔法は?」
「すごいけど……あなたも二番煎じじゃないの」
「ふ、でも効果は大違いよ。見なさい!」
真夏のような日差しが降り注ぐことにより降り積もった雪がどんどん解けていく。
「どういう事? いくら夏のような日差しとはいえ溶けるのが早いわ」
「フッフッフ、この魔法は雪を優先的に溶かすのよ。凄いでしょう?」
確かにすごい。
だけど……。
「あ、暑いよエレン様……」
「アルテナ、もうちょっと加減を知りなさいよ」
砂漠エリアの太陽に匹敵する日射が降り注ぐせいで、雪山装備を脱いでも汗がだくだくと流れてくる。
思わずミラに砂漠で使ったクーラー付きローブを出してもらう。
「まさか雪山エリアでこれに頼ることになるなんて……」
「涼しくなったー♪」
「ちょっと、アタシにもそれ寄こしなさい」
アルテナがこっちに近づこうとしたその時。
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
「「「え?」」」
突如地面が揺れるような音が響き周りを見渡すと、山の上に積もった雪が溶け雪崩となって襲い掛かってきた。
「ギャーーーー!!!」
「「あ」」
ドシャーー!!っと来た雪崩は一人離れたアルテナを飲み込み、そして沈黙する。
「これは……天罰かしら?」
天候を無理やり変えた報いが来たのだろう、恐らく。
さてどうしよう?
雪崩に飲まれたら十五分が限界だと聞くけど。
「エレン様、アルテナ様を助けなきゃ!」
「そうね……十五分経ってから探しましょうか」
「死んでから助けようとすんじゃないわよ!!」
アルテナが雪の中から顔を出す。
「アルテナ様、無事でよかった!」
「(チッ……)よかったわ。無事だったのねアルテナ」
「今隠れて舌打ちしなかったあんた!?」
「そんな事ないわよ」
「とにかくそのローブアタシにも寄こしなさい!」
雪崩に遭ったって言うのに元気な奴だ。
アルテナもクーラー付きローブをミラからもらい涼しげな顔をする。
「にしても、用意していた物が完全に無駄になったわね……」
この暑さじゃ雪山装備なんていらないし、おまけに雪はどんどん解けていき、もう地表が見えてるところもある。
これじゃあドラゴンスケーターで雪上を滑っての移動はできない。
アルテナの力技で事前準備がすべて水の泡になってしまった。
……なんか虚しい。
「はぁ……」
「何ため息ついてんのよ? ほら、さっさと進みうぎゃ!?」
雪が溶けたことでぬかるんだ地面に足を取られ、アルテナがベチャッ! っと顔から転び泥だらけになる。
「雪を溶かしたせいで弊害が発生してるじゃない」
まあこれは地面が固まるまで待てばいい。
その間にどう攻略を進めるか考えよう。




