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129話 敗走、そして衝撃の事実

「な……んで……」


 腹部を剣で貫かれたシャルルが膝をつき横向きに倒れる。


「シャルル!!」


 いったい何が起きた?

 黒スケルトンの姿はない。

 ただ剣だけがシャルルに突き刺さっている。

 魔法で切り刻まれる前に黒スケルトンが剣をシャルルに投げた?

 いや、今は原因を考えてる場合じゃない。

 倒れたシャルルに駆け寄ろうとしたその時、後ろからガキィィン!!と大きな金属音が鳴り響く。

 イサークとデュラハンが激突したんだろう。

 でもイサークなら大丈夫だ。

 あいつの防御力ならデュラハンの攻撃だって耐えられる。

 そしてスキル『ドМ魂』によるカウンターが……


「……は?」


 アタイは再び目を疑った。

 イサークは一方的に押し負け、デュラハンによりはるか後方まで吹き飛ばされた。


「嘘だよね……イサーク……?」


 吹き飛ばされたイサークはそのまま倒れ、ピクリとも動かなかった。

 いつもなら元気に立ち上がり「もっとしてくれ!」と言うのに。

 デュラハンとリビングアーマーの足音が、唖然としてたアタイを現実に引き戻す。

 

「……撤退だ……!」


 アタイは瞬時に逃げることを選んだ。

 もう探索とかそんなこと言ってる場合じゃない。

 すぐにシャルルに駆け寄り抱き上げる。


「ごめん……リー……ダー……」

「今はしゃべるな!」


 回復ポーションはある。

 だけどデュラハンたちが迫っている。

 使っている暇はない。

 

「逃げるよシャルル!」


 シャルルを抱いたまま敵に背を向けて逃げる。

 しかし馬に乗ったデュラハンのほうが早い。


「舐めるんじゃないよ!」


 このままじゃ追い付かれると思ったアタイは、片手でフレイルを力いっぱい馬に向けてぶん投げる。

 フレイルは馬を粉砕しデュラハンの機動力を奪う。

 これでそう簡単には追いつかれない。

 そのままイサークの元へも駆けつける。


「イサーク! 大丈夫!?」


 イサークは血を吐き出し気絶していた。

 鎧もひどいありさまだ。

 貫かれこそしてないがかなりの深さまで陥没している。

 でもおかしい、イサークがこの程度でやられるものだろうか……いや、今はどうでもいい。

 とにかく逃げることが第一だ。

 イサークは巨体で鎧も重いが、アタイの力なら運べないほどじゃない。

 イサークを何とか背負い町の出口まで急ぐ。


「急がないと……ちっ! こんな時に!」


 前から黒スケルトンの群れが現れる。

 来るときかなり倒したって言うのにまだこんなにいたのか。

 でも戦ってる場合じゃない。

 後ろからデュラハンたちも迫っている。


「通らせてもらうよ!」


 スキル「諸刃の刃」を発動し力を底上げしたアタイは二人を背負いながら高く跳躍し、黒スケルトンたちを飛び越え出口へ進む。

 しかし、追撃は止まらない。

 次々と前から黒スケルトンたちが現れ道をふさぐ。

 再び跳躍して飛び越えるも、弓を持った黒スケルトンが矢を放ち足に刺さる。


「くっ……こんなもの!」


 二人を背負い両手がふさがっている状況で矢を抜く暇はない。

 痛みに耐えながら走り続ける。

 まっすぐ走ればそこまでかかる距離じゃない。

 途中黒スケルトンが何度も立ちはだかり、矢で刺され、剣で切られ、それでもアタイは走り続けた。

 そして、町の入り口まで戻った時、すでにアタイの身体はボロボロだった。


「チッ……あともう少しだって言うのに……」


「諸刃の刃」はパワーを上げてくれるが防御力は下がってしまう。

 そのせいでアタイは掠っただけでも多くダメージを受けてしまう。

 イサークとシャルルの支援があったからこそ今まで安心して攻撃に集中していられたのだ。


「一人になっただけでこのザマか……情けないったらないね」


 でも階段までたどり着いた。

 登り切れば転移陣がある。

 ギルドに戻れば助かる。


「二人とも……もう少しだ……」


 額から流れる血で目がかすみ、よく前が見えない。

 二人を支える手が、体が震える。

 もう一歩動くのさえとてつもなくつらい。

 それでもアタイは階段を上っていく。

 みんなで生き残るために。

 そして……アタイは階段を登りきったところで意識を失った。

 

 

「……ここは?」


 気づいたらアタイはベットに寝かされていた。


「助かったの……?」

「カーシャ! 起きたのか!?」


 隣を見ると、ベットの横でアーシャ姉さんが座っていた。

 視線を動かし確認するとほかにも複数のベットが置かれていて、そこがギルドの医務室であることが分かった。


「ったく心配させやがって!」


 顔には涙を拭いた跡があり、目にクマが出来ている。

 かなり心配させてしまったらしい。


「ごめん姉さん……そうだ! シャルルとイサークは!?」


 慌てて体を起こしベットから出ようとする。

 しかし、体にうまく力が入らない。


「無茶すんな! 傷は治癒ポーションで治ってるが、体力は戻ってねぇんだからな」

「そうみたいだね……」

「おや、目が覚めたみたいだね」


 医務室のドアを開け、ギルマスが入ってくる。

 相変わらず逆三角形の海パン姿。

 彼は椅子を置き、アタイの近くに座る。


「ギルマス……イサークとシャルルは?」

「安心してくれ、二人とも無事だよ。かなり危なかったけどね。二人は今別室で寝ている」


 ギルマスが言うには、アタイたちは転移の間で血だらけで倒れているところを発見され、すぐに医務室に運ばれ治療されたらしい。

 それからアタイは三日間眠っていたとの事だ。

 

「そうか……よかったよ……」

「さて、起きて早々で悪いが、何があったか聞かせてもらえるかい?」

「おい、目が覚めたばっかだってのに……」

「良いよねえさん、話させて」


 アタイは最下層で起きたことを二人に話した。

 古城へ向かったこと、デュラハンたちと戦ったこと、シャルルとイサークが深手を負い逃げ帰った事を。


「なんか二人がやられた理由がよくわかんねぇな」

「ふむ……確かに異様だね。二人に何があったんだい?」

「わからないよ」


 単純に油断か、敵の力量を見誤ったか、罠にかかったか。

 あたしは二人がやられるその瞬間を見ていない。

 これは本人たちに聞くべきだろう。

 

「二人に会わせてくれない?」

「止めとけ、あの二人はまだ目を覚ましてないし、お前も動ける状態じゃねぇだろう」


 姉さんの言う通り、体に力が入らない。

 傷はポーションで治っても、流した血や消耗した体力までは戻らないのだ。

 アタイはしばらく寝ているしかないらしい。


「しかし君たちまでもがこうも簡単にやられるとは……生きて帰れたのは奇跡だといえるね」

「ええ、正直舐めてたわ……くそ!」


 ライバルの追い上げに焦り、自分たちならいけると慢心した結果がこのざまだ。

 自分の無力さに虫唾が走る。


「こんな姿見られたら『カタストロフ』の連中に笑われちまうね……」

「笑うことはねぇだろうが……うーん……」

「……」


 二人が目を合わせて気まずそうな顔をしている。

 いったいどうしたのだろう?


「……カーシャ君、実は……君に言わなきゃいけないことがある」

「言わなきゃいけない事?」

「……君にとってはショックな事実かもしれないが、すぐ知ることになるだろうからね」

「……! まさかイサークとシャルルに何か!?」

「違う、実はね……『カタストロフ』の三人がダンジョン攻略を進め、ついさっき最下層まで到達したんだ」

「……は?」


 思わず耳を疑い姉さんの方を見ると、無言で頷いて肯定する。

 アタイが寝てたのは三日のはずだ。

 そのわずかな時間にいったい何があった!?

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