126話 考察とてるてる坊主
ダンジョンから帰った次の日の朝、アーシャさんから「ダヴィドで間違いねぇな!?」って聞かれた。
何かわかったことがあったのかな? 役に立てたなら何よりだけど。
今日は一人で人気のない空き地に来ている。
アルテナとミラは買い出しだ。
ダンジョン攻略で必要なものを買いに行っている。
でも大丈夫だろうか? 騙されて変なツボでも買わされて無いといいけど。
まあ物の価値がわかるミラがいれば大丈夫だろう。
そんなことがあれば止めるよう言っておいたし。
とにかく、私は私でやるべきことをやろう。
「まずは準備運動ね」
周囲に人がいないことを確認すると、私はマナを集め七属性(火水土風雷光闇)の魔法を発動、七つの丸い魔法球を作り出す。
それを空中でぐるぐる回したり、並べてみたり自由自在に動かす。
「よし、こんなもんかしら」
指をパチンとならし魔法球を消す。
これは魔力コントロールの練習だ。
私はアルテナの姉アステナに押し付けられたスキル「器用貧乏・改」により、強くなれないが究極の技量を持つ。
わかりやすく言えば、器用さのステータスだけカンストしたレベル1のキャラクターというところだろう。(経験値はもらえない)
おかげで魔力も全くないのだが、空気のように存在している自然の魔力、”マナ”を魔力に変換するという裏技を使っている。
そのおかげで私は魔法が使える。
ただ、この技は一般的じゃないし、マナを変換するにも時間がかかる。
そこで役に立っているのがマテツさんの魔導銃。
魔力の弾を自動で装填してくれる私の愛用武器。
これのおかげでマナ変換の手間が省け、圧縮した魔力の弾を素早くを撃てる。
魔法を込めることもできるから、属性をつけたり、ゴーレム生成や回復魔法も使えたりする。
まあこれは魔導銃の性能じゃなく私が後付けでやってることなのだが。
「さて、一つ試してみましょうか」
そこらへんに落ちてる小石に向けて魔導銃を向ける。
圧縮された魔法弾を、さらに圧縮させるイメージで集中し、引き金を撃つ。
「ぐ……うわ!?」
引き金を引いた直後ボォーーン!! と魔力が暴発し、大きく後ろに吹っ飛ばされる。
「いたた……この実験は失敗ね」
地面に転がった体を起こし何とか立ち上がる。
理想としては極限まで圧縮したレーザーのようなものが撃てるとよかったのだが、さすがに無理だったようだ。
この案は没にしよう。
「じゃあ次ね」
今度は魔導銃内部の魔力を一つの弾に集中するイメージをする。
いわゆるチャージショットといったところだ。
その結果。
「きゃああ!?」
情けない声を出して後ろに吹っ飛ばされる。
発射した弾はドォーン!! と大きな音を出し、小さなクレーターを作ることができていた。
だが、腕が悲鳴を上げるほど痛い。
衝撃が大きくなって耐えられなかったようだ。
「ひ、ヒール……」
痛みに耐えながらなんとか回復魔法をかける。
これも没だ。
威力があってもこんな自爆技二度とやらない。
「やっぱりそう簡単にはいかないわね……」
私がやろうとしているのは、より威力のある魔法の開発だ。
呪いはとても役に立ったし、『火迅』で空を飛ぶことにより機動力と体力不足を解決した。
でも絶望的にパワーが足りない。
ロック鳥も結局私じゃ傷をつけることはできなかった。
「せめて体を強くできればね……」
チャージショットもアルテナやミラくらい力が強ければ耐えられたかもしれない。
いくら威力のある弾でも発射する土台が弱ければ意味ないのだ。
どうにかする方法はないだろうか?
そう思って思考を巡らせる。
「無駄だと思うけど一応やってみようかしら……」
そう思い魔力を両腕に纏わせ、そして近くにあった自分と同じ大きさの木箱を両手でつかむ。
「持ち上げられるかしら……えい!!」
私が挑戦しようとしているのは「身体強化魔法」。
これでうまくいけば木箱くらい持ち上げられるはず
しかし、木箱うんともすんとも動かず、後には息絶え絶えになった自分が残った。
「はぁ……はぁ……やっぱ無理ね」
私のスキル「器用貧乏・改」は魔法による身体強化も許してくれない。
以前マテツさんが身体能力を上げる魔導具を持ってきてくれたが、その時もうまくいかなかった。
「駄目ね。技術でパワーを補おうとする方向性がそもそも間違ってたわ。みんなみたいにはうまくいかないわね……」
私はヴェインに来て色々な人と知り合い、分かったことがある。
それは、みんな魔力を使って戦っているという事だ。
例えばアーシャさん。
彼女は人離れしたスピードとパワー、そして自身の回復ができる「聖闘士」というスキルを持っている。
アルテナとアーシャさんが戦った時「魔力視覚」で見ていたのだが、魔力を体に纏わせ、回復の時も魔力を使っていた。
つまり、彼女の強さを支えているのは魔力なのだ。
今まで会ってきた人物皆がそうやって魔力を使いスキルを発動している。
魔法との違いは、魔力を外に出すか自分の中で使うかという違いだろう。
魔力が多い=強いという法則がこの世界では成り立ちそうだ。
「でも、みんなはそのことに気づいているのかしら?」
以前ヴェルミナさんとシャルルに魔力を見れると言ったら驚かれた。
それに直接人に触れないと他人の魔力を感じ取れないとも。
そこから導き出される答えは、この世界の人々は魔力を感じ取る能力が秀でてないという事だ。
自身の魔力は感じ取れるみたいだし直接魔力に触れないとわからないのだろう。
だとすると、私が普段から探知魔法として使っている「魔力視覚」と「魔力感知」はこの世界では貴重という事になる。
「私もまだこの世界の常識に慣れてないわね……」
マナを魔力の代わりに使うという裏技を魔導銃のおかげとしてごまかしているように、探知魔法も何かしらごまかす必要がありそうだ。
「となると、やっぱこれかしらね……」
ポケットから鑑定モノクルを取り出す。
これのおかげでそういう能力があると今後はごまかしていこう。
鑑定という貴重な魔法を使える魔導具であることには変わりないし。
「さて、今日はここまでにして帰りましょうか」
進展はなかったが、方向性は何となく定まった。
パワーがないのは受け入れて、どこまでも技術の方向性を極めるしかないのだ。
相手を効果的に邪魔したり、呪いみたいに扱いづらいけど強い魔法を探すか練習するべきだろう。
「あとは……」
鑑定モノクルを手に取り見つめる。
ユニークスキル。
私にも扱えない特殊な魔法。
以前アステナがユニークスキルについて意味深な事を言っていた。
もし方法がわかれば私にも扱えるかもしれない。
今はちんぷんかんぷんだけど、いろいろ試行錯誤して行こう。
そう思いながらカルロさんの店に戻ると、アルテナとミラが戻ってきていた。
「早いわね、もう買い出しは終わったの?」
「エレン! それどころじゃないわよ!」
「え?」
なんかアルテナが慌てている。
ミラも暗い顔をしてアルテナの横にいる。
「いったい何があったの?」
「『紅蓮の鉄槌』がダンジョン最下層攻略に踏み出したのよ!」
「カーシャさんたちが?」
カーシャさん、イサークさん、シャルル。
あの三人がとうとう攻略を始めたらしい。
「うぐぐ、どうしたら……!?」
「何をそんなに慌ててるのよ? カーシャさんたちが心配?」
「クリアされたらダンジョンが無くなっちゃうじゃないの!!」
「あ、そっちの心配なのね」
ダンジョンコアを奪取されたらダンジョンは無くなる仕様だ。
つまり、もし攻略に成功されたら私たちのダンジョン冒険は終わりという事になる。
だからアルテナはこんなに焦ってミラは暗い顔に……ん?
「どうしてミラは暗い顔をしてるの? 友達のシャルルが心配?」
「そうじゃなくて……えっと……その……エレン様、ごめんなさい」
「え?」
ミラが申し訳なさそうに頭を下げる。
どうしたのだろう……ってまさか……。
「アルテナ、買い出しはどうなったの?」
「あ、そうそう! 露店でこんなのを見つけたのよ! なんでも昔勇者が使った伝説の剣らしいわ! あたしとした事がなんて掘り出し物を見つけちゃったのかしらフッフッフ」
そう言ってアルテナはドヤ顔しながら煌びやかな剣を私に見せる。
「へぇ……ちなみにいくらしたの?」
「いやーさすがに有り金ほとんど使っちゃったわ! でも必要出費よね!」
「そう、鑑定」
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『伝説の勇者の剣』
普通の鉄の剣にメッキや安い光物をつけて豪華に見せた物。
特別な効果なし。
買ったものは後悔に苛まれる。
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「……ねえアルテナ、明日もう一回買い出しに行くから晴れにして頂戴」
「は? あたしに天気を変える力なんてないわよ」
「いや、あんたは女神なんだからやればできるわよ。というわけで……」
「え、ちょっと待って!? いったい何を……ギャァァァ……!!!」
その夜。
「おいエレン、またアルテナがいないがどこへ行ったんだ?」
「てるてる坊主にして二階から吊るしておいたわ」
「……てるてる坊主ってなんだ……?」
主人公達達の挿絵を載せてみました。
1、2、71話にもそれぞれ載せてあります。




