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112話 3つの切り札

 目的地のピラミッドにはちょうど良く入り口のような穴が空いていて、そこに入るためのスロープもある。

 あそこまで辿り着ければ確実に逃げられる。

 だが、巨大タイラントワームはドラゴンスケーターと並走しながら徐々にこっちへ近づいている。

 

「……巨大な上にスピードもあるなんて厄介ね。このままだと確実に追いつかれるわ」

「ふ、上等じゃない。あたしが返り討ちにしてやるわ!」


 そう言って助手席から立ち上がりデスサイズを向けるアルテナ。


「待ちなさい、あんなのと正面から戦おうなんて無謀よ」

「じゃあどうすんのよ!?」

「一応切り札が三つあるわ。正直あまり使いたくなかったけど……」

 

 だが、上手くいけば必ずあの巨大ワームを突破できる。

 こうなったらやるしかない。

 

「二人ともしっかり捕まってて。行くわよ!」


 プロペラが悲鳴のような音を上げ、今にも壊れそうな勢いまで回転速度を上げる。

 そのお陰で速度が上がったスケーターは、巨大ワームのスピードを超え、並走状態から脱する事に成功する。

 だが……。


「エレン様! ワームのスピードも上がってるよ!」


 どうやら相手はまだ本気じゃなかったらしい。

 すぐに並走状態に戻り、私たちの近くまで接近して来る。


「エレン!このままだとまずいわよ!」

「……やっぱりスピードを上げるくらいでどうにかなる相手じゃないみたいね……だったら……!」


 その直後、隣の地面が爆発し、巨大ワームがとうとうその大きな口を開け襲いかかって来る。


「た、食べられちゃうーーー!!」


 ミラが恐ろしさで悲鳴を上げる。


「エレン! 早くどうにかしなさい!」

「大丈夫。速さで負けてるなら、もっと速くなればいいだけよ! “ブースト”起動!」


 ハンドルの後ろにある隠しボタンを押す。

 その瞬間、ドラゴンスケーターの尻尾の先からゴオォォォ!!! とロケットのように炎が噴き出し、一気にスケーターを加速させる。

 直後、後ろからドォォォン!という音を出しながら巨大ワームが地面に潜って行く。

 無事攻撃を回避できたらしい。


「よし、ぶっつけ本番だったけどうまく行ったわね」

「ちょっとエレン! いつの間にドラゴンスケーターにブーストなんてつけてたのよ!?」

「昨日の夜、こんな事もあろうかとね」


 見張りをしていた時暇だったから機能を追加したのだが、それが功を奏した。


「だったらさっき普通のワームに追われてた時にも使えばよかったじゃない」

「魔力の充填に時間がかかるから頻繁に使えないのよ。それより油断しないで。まだあいつは追ってきてるわよ」


 巨大ワームは攻撃を躱された事に苛立っているのか、さらにうるさい叫び声を上げながら執拗に追って来る。

 しかし、いきなり地面に潜ったかと思うと、地上からその姿を消した。


「あれ? どこ行っちゃったの?」


 ミラがキョロキョロ見渡すが、巨大ワームの姿は見えない。

 

「何? もしかしてピラミッドまであと少しだし、あいつ諦めた?」


 アルテナの言う通り、すでにピラミッドは目と鼻の先だ。

 諦めたのなら良かったのだが……。

 

 

「違うわアルテナ。あのワーム、最悪の手段を取ってきたわ!」

「え、それって……なぁ!?」


 直後、ピラミッド前の地面が爆発し、巨大ワームが現れる。

 そして、私たちを待つかのように陣取ってきた。


「な、あいつ!!」

「エレン様! これじゃピラミッドに行けないよ!?」

「……随分頭が良いみたいね」


 まさか退路を断って来るとは思わなかった。

 先程逃げたワームも探知魔法でどんどん近づいてるのが確認できる。

 ここで左右に逃げてしまえば、あとは勝ち目のない鬼ごっこをするしか無くなる。

 なら、ここで取るべき行動は一つしかない。


「アルテナ、二つ目の切り札を使って巨大ワームを突破するわ。覚悟はいい?」

「ふん、今更何を聞いてるのよ? とっくに覚悟はできてるわ。さあ、あんたの切り札見せてやんなさい!」

「そう、じゃあ遠慮なく行くわね。任せたわよ」


 そう言いながらもう一つの隠しボタンをポチッと押す。

 すると、アルテナの座る助手席が揺れ始める。


「え、任せたってどう言う事? ってなんか椅子がガタガタし始め……ギャァァァァ!!!」


 そして、助手席からロケットが噴射され、アルテナは前方斜め上方向、正確に言えばワームの方へ吹き飛ばされて行く。


「エレン様! アルテナ様がワームに向かって飛んで行っちゃったよ!?」

「安心しなさいミラ。作戦通りだから」


 これが第二の切り札、名付けてアルテナキャノンだ。

 さっきあんなのと戦うのは無謀と言ったが、それは私達ならの話。

 アルテナ一人だったら“多少”の無茶はどうにでもなる。

 

「エレーーン!! あんた一体何考え……あ」


 アルテナがこっちに向かって何かを叫んでいると、眼前に巨大ワームの口がある事に気づき、そしてそのままパクっと飲み込まれていった。


「え、エレン様! アルテナ様が食べられちゃったよ!!」

「大丈夫、問題ないわ」


 巨大ワームが敵の一人を食べ機嫌が良くなったのか、宙に向かって歓喜のような叫び声をあげる。

 だが、その直後。


『死の切り裂き《デス・スライサー》!!』

 

 アルテナの声がしたかと思うと、巨大ワームの胴体がぐにゅっと音を立てて真っ二つに裂け、体液が噴き出す。

 そして、中からデスサイズを片手にアルテナが飛び出した。

 

「ふ、ざまぁ見なさいこの化け物が!」

「凄い! アルテナ様がワームを倒して出てきたよ!」

「ええ、そうね」


  軽く流しつつも顔が少しニヤける。

  やっぱりアルテナの強さとタフさは信頼できる。

  だが、喜んでばかりもいられない。

  巨大ワームの斬られた上部分が胴体から完全に離れ、私とミラの上に落ちて来る。


「ミラ! 収納をお願い!」

「分かった! 収納!」


 ミラの収納の光が手から放たれ、落ちて来たワームの頭、そして残された胴体を収納する。

 これでピラミッドへの道は開かれた。

 あとは……!


「ミラ! アルテナの回収をお願い!」

「うん! 行くよアルテナ様!」


 ミラの分身がスケーターから飛び出し、アルテナの元へ向かう。

 

「ミラ!」

「アルテナ様!」


 そしてミラが無事アルテナを抱き抱えスケーターに戻ろうとしたその時。


「あ……」

「ミラ? 一体どうし……ぐへ!?」


 ふっ……とミラの分身が消え、アルテナが砂漠の地面に放り出された。

 

「え?」

「ごめんなさいエレン様……戻っちゃった……」


 いつのまにかミラが後部座席に戻っている。

 そうか、よく考えたら分身はスケーターみたいに早く動けるわけじゃない。

 本体から遠ざかった結果、ミラの分身が本体に戻ってしまったらしい。


「……しょうがない、アルテナ! あとは自分でどうにかしなさい!」

「え!? ちょっと待ちな……ギャァァァァ!?」


 アルテナの悲鳴が聞こえる。

 どうやら後ろから迫っていたワームたちに襲われてるらしい。

 まあどうにかするだろう。

 そう信じて、私は振り返らずそのままスケーター走らせる。

 そしてついにスロープを上り、ピラミッドの入り口まで辿り着いた。


「着いたわ……ふぅ……」


 スケーターを横向きにし、ザザーって音を出しながら停止する。

 なんとか逃げ切った。

 その実感が湧き、椅子に体を預けるように脱力する。


「エレン様、アルテナ様が……!」

「心配するだけ無駄よ。どうせすぐに……」

「こぉらぁーーーー!! はぁ、はぁ、エーレーンーー!!!」


 ほら来た。

 息切れしてるようだが無事みたいだ。

 おまけに、なんかワームを頭につけている。


「アルテナ様、大丈夫?」

「ええ、この程度全く問題無いわ。それよりエレン? ちょっと……なんか言ったらどう?」


 頭をカジカジ齧るワームを乗せ状態で睨みつけて来るアルテナ。

 ……ちょっと怖い。

 

「……やっぱりタフねあなた」

「巨大ワームに突撃させた挙句、あたしを見捨てたくせに第一声がそれ!? ふざけんじゃないわよあんた!!」

「いや、元はと言えばあなたがワームを呼び出す罠を踏んだのが原因でしょう? あなたが責任負うのは当たり前よ」

「うぐ……」


 正論を言われその場に崩れ落ちるアルテナ。

 まあアルテナの強さを信じていたからこそ、あんな作戦をとれたわけだが……。

 180度変わってなんか調子に乗りそうだから言わないでおこう。  


『カジカジカジ♪』

「あんたもいい加減あたしの頭を齧るなー!!!」


 そう言いながら頭を齧っていたワームを引き抜き、砂漠に放り投げる。


「せっかく楽しそうに齧ってたのに……」

「なんでワームに同情してんのよ!? 全く……ん?」

「どうかしたの?」

「そういえばあんた切り札は三つあるとか言ってたわよね? あと一個はなんだったの?」

「私の火迅ブーストフレアを使ってみんなで空中に離脱するって方法よ」

「最初からその手段を取りなさいよーーー!!!」


 そう言って再び崩れ落ちるアルテナだった。

ようやくピラミッドに辿り着きましたw

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