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111話 逃走とミラの逆襲



 ミラが叫びながら咄嗟にクリスタルシールドを頭上に出現させる。

 鍋の蓋のように私達を覆ったシールドは、一斉に飛びかかってきたワームの攻撃をガキン! と防ぎ、弾き飛ばすことに成功した。


「ミラ、よくやったわ! アルテナ、運転を変わって!」

「ち、分かったわよ!」


 今がチャンスだ。

 素早くアルテナから運転席を奪い返し、スケーターのハンドルを握る。

 

「またワームが来るわ! 二人とも、頼むわよ!」

「任せなさい!」

「うん!」


 再び飛びかかってきたワームの攻撃をアルテナが剣で切り裂き、ミラが盾で防いでいく。

 その間にスケーターを急発進。

 大きな砂煙とワームを残し、その場から離脱した。

 

「うう……怖かったよ……」

「うぐぐ……あいつら、スケーターを破壊するなんて許せないわ!」


 少し涙目になるミラと、いきどおるアルテナ。  


「でも、逃げられてよかったね」

「そうね、流石にちょっとビビったけど……逃げ切ったしもう大丈夫……」

「二人とも、悪いけど気を抜くにはまだ早いわよ。後ろを見なさい」

「え、後ろ? ……げぇ!?」


 後方から砂漠を滑走し逃げる私達を、砂漠を泳ぐように追跡する数十のワームの軍団が迫っていた。

 『キシャァァ!』という不気味な叫び声を上げながら時折り地中から飛び出し、その恐ろしい大きな口と牙を見せて追ってくるその姿は、まるでホラーに出てくる怪物を彷彿とさせる。

 しかも探知魔法で確認すると、周囲からまだワームがこちらに迫っている。

 

「このままじゃまずいわね……」

「ふ、問題ないわ。こんなの蹴散らしちゃえばいいのよ!」


 そう言ってアルテナが立ち上がり、魔法の詠唱を始める。


「我に宿し炎よ! 眼前の敵に降り注げ!『炎の雨(ファイヤーレイン)!』」


 アルテナの頭上に十数個のファイヤーボールが現れ、ドォン! ドォン! ドォン! と小規模の爆発を巻き起こしながらワームに降り注いでいく。


「ふ、ざまぁみなさい!」


 ワームの姿が無くなり、勝ち誇るアルテナ。

 だが。


「アルテナ、おかしいわ! ワームの反応が消えてない!」

「え?」


 再び後ろを見ると、ワーム達が再び地面に顔を出し始める。

 どうやら危機を察知して、地面に潜り回避したようだ。


「ち、こいつら厄介ね! どうすんのよエレン!?」

「こうなったら……ピラミッドまで逃げるしかないわね……!」


 一番いいのは階段まで逃げることだが、何処にあるか分からない以上その選択は危険だ。

 当初の予定通りピラミッドに行くしかない。


「それまでアルテナは左右から来るワームを、ミラは盾で後ろから来るワームを防いで頂戴!」

「うん!」

「任せなさい!」


 私は運転に集中だ。

 前からワームが来ても『マジックシールド』なら防げるだろう。

 この作戦は上手くいき、順調に進んでいたその時だった。


「向かい風が……!」


 一際強い向かい風と砂が私達を襲う。

 そのせいで速度が一瞬落ちてしまい、後ろにいるワーム達との距離が縮んでしまう。

 それを好機と見たのか、一斉にワーム達が地面から飛び出し襲いかかってくる。


「させないもん!」


 数十匹を超えているワームの攻撃をクリスタルシールドと持ち前の怪力で防ぐミラ。

 だが、それでもワーム達は執拗に飛びかかり、徐々にミラの心を抉って行く。


「ミラ、大丈夫!?」

「う、うん……だ、大丈夫……」


 そう言うが、声が震えている。

 ワームが怖いのだろう。

 その時、一匹のワームがシールドの上を飛び越え、『キシャァァ!!』と叫び声をあげながらその大きな口と円形状に生えた牙でミラに襲いかかって来る。


「い、いやーーーーー!!」


 涙目になりながら咄嗟に両手に持ってたシールドを収納し、ワームをビンタで遥か遠くまで吹き飛ばす。

 そして。


「も、もう来ないでよーー!!!」


 さっきのでパニックになったのか、泣きながらミラはクリスタルシールドではなく、オーガブレイカーを手に出現させる。

 

「ミラ! ハンマーじゃワームを防げ……」

「えーーーい!!!」


 ミラが本体から離れ、船の外へと飛び出す。

 そして、地面に向けて思いっきりオーガブレイカーを叩きつける。

 その瞬間。


 ドォォォォォォォォン!!!


「「うわ!?」」


 強烈な衝撃が巻き起こり、スケーターが吹き飛ばされる。

 空中を舞ったスケーターを上手く操作し、何とか倒れないよう地面に着地すると、後ろには大きな陥没が出来ていた。

 

「な、何よあれ……!?」

「まさかさっきの一撃で……!? ミラは!?」


 確かスケーターの外に出ていたはず。

 しかし。


「うう……怖かったよー……」


 そう言いながら後部座席にあるミラの本体から分身が出て来る。

 なるほど、本体である木の宝箱から離れると分身は本体に戻るのか。

 

「ありがとうミラ。あなたのお陰で助かったわ」

「やるじゃないミラ!」

「え、ミラ役に立てたの? えへへ……嬉しい♪」


 満面の笑顔になるミラ。

 本当ならここで抱きしめたいところだが、そんなことをしてる暇はない。

 すぐにスケーターを再発進させ、ピラミッドへ急ぐ。


「エレン、ワームの姿が見えないんだけど?」


 アルテナがそう言いながら辺りを見回す。

 

「どうやら、ミラの一撃がかなり効いたみたいね」


 探知魔法で確認したが、すぐ後ろまで迫っていたワームは陥没した地面の中で動かなくなっている。

 どうやら衝撃で気絶してしまったらしい。

 近づいてきていたワームもさっきのにびっくりして逃げて行ったようだ。


「なーんだ、じゃあもう大丈夫じゃないの」

「よかったー」


 アルテナとミラが安堵の表情を見せる。


「そうとも言えないわよ。連中はすぐ戻って来るだろうし、あまり時間をかけてはいられな……!?」


 その時、探知魔法に巨大な何かが引っかかる。

 

「エレン、一体どうし……うわ!?」

「きゃぁ!?」


 突如、まるで地震のような衝撃が走り、スケーターが揺れ動く。

 左方向を見ると、砂漠の大地がまるで飲み込まれるように陥没し、そして爆発した。

 

『ギシャァァァァァァァァァァァ!!!』


 現れたのはワームだった。

 さっきのワーム……いや、ラディアドレイクやロック鳥すら比べ物にならない、数十メートルの巨体を持つ怪物だった。


「な、何よあの巨大なワームは!?」

「お、大きい……!」


 アルテナは驚愕し、ミラは恐怖で震える。


「全く……ピラミッドまであともう少しだっていうのに……」


 あえて名をつけるとしたら巨大タイラントワームと言ったところだろうか。

 こいつもきっと罠で呼び出された奴だろう。

 こうなってしまったらしょうがない。


「来るなら来なさい怪物ワーム。私の“切り札”……見せてやるわ」


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