103話 エレン、本領発揮する
30万文字全体で超えましたー。
よく書いたな自分……
ヴェルミナさんの体型が呪いのせいだという事を指摘した私。
その事にヴェルミナさん、そしてシャルルも驚愕する。
「えー!? おばさんの体型が呪いのせいってマジ!? 暴飲暴食のせいじゃ無かったの!?」
「何処に驚いてんだい!! あと、暴飲暴食してた時期なんて無いよ!!」
ヴェルミナさんはツッコミを入れた後、真面目な顔をして私を見つめる。
「で、どうして分かったんだい? 誰にも言っちゃいないはずなんだがね。カマをかけたって訳でもなさそうだ」
「その理由は簡単よ。私は魔力を“視る”事が出来るからね」
「魔力を視るだって……?」
疑うような目で私を見るヴェルミナさん。
だが、本当の事だ。
私が探知魔法で使用している『魔力視覚』。
それに映し出されたヴェルミナさんは、明らかにおかしい魔力を身に纏っていたのである。
「黒い魔力の糸がヴェルミナさんの体全体に纏わりついて……いえ、複雑に絡み付いてると言った方が正しいかもしれないわね。その糸が呪いだと思うんだけど……どう?」
ヴェルミナさんは静かに座り、少しの間沈黙する。
そして、意を決したかのように口を開いた。
「そこまで具体的に分かるなんて……どうやら本当のようだね。感じ取るならともかく、視る事が出来るやつなんて初めてだよ」
「え?」
思わずシャルルとミラの方を向く。
ミラは無言で首を横に振り、シャルルは。
「いや、魔力を視るってどういう事ー!? シャルルちゃんでも直接触った相手の魔力を感じ取るくらいしか出来ないのに〜!?」
「え……」
思わず言葉を失う。
探知魔法が珍しいとの自覚はあったのだが……まさかそこまでとは……。
まあそれは置いといてだ。
「ヴェルミナさん、その呪いについて詳しく聞いてもいい?」
「ああ。だが、その前に呪いのデメリットについて説明しておこう。呪いはね、とても扱いが難しいものなんだ。もし失敗すれば術者本人に返ってきちまう。だからこそ、慎重に時間をかけて構築する必要がある。そして、あたしは呪いの魔力を糸にして絡ませ発動する、『影紡師』というスキルを持っているんだ」
「……じゃあ、ヴェルミナさんにかかった呪いって……構築に失敗して返ってきた呪いって事?」
そう考えれば辻褄が合う。
だが。
「……いや、そうじゃない…………別に失敗して返ってきたわけじゃ無いんだ……」
「え? じゃあ一体……?」
疑問に思い聞き返すと、ヴェルミナさんは何故か言いにくそうな顔をし、私から視線を逸らし始める。
「……実はね……あたしは胸がない事にコンプレックスを持っていてね……」
「は?」
あれ? なんだか雲行きが怪しくなってきた。
おまけにヴェルミナさんに顔がどんどん赤くなってくる。
「そこである日、あたしは体を肥大化させる『肥大化の呪い』を自分にかけたのさ。その結果……欲張りすぎて呪いを強くしすぎちまってね……胸どころか……体全体が肥大化しちまったのさ……」
「「はぁ!?」」
あまりの事実に喉の奥から変な叫びをシャルルと一緒に上げる。
て言うか本当に何!? その理由は!?
「おばさんバカなのー!? 何そのくっだらない理由!? ちょーありえないんですけどー!」
「うるさいね! そんなこと分かってるよ! だから今まで誰にも言えなかったんじゃないか!」
「でもヴェルミナさん……幾ら何でもそれは無いと思うわ……」
「まあ……五十年も前だからねぇ。より美しくなりたいっていう、若気の至りってやつさ」
いや、それでも四百五十歳……まあ、そこはいいか。
「でもヴェルミナさん。それだったら解呪すれば良いだけなんじゃ?」
そう聞くと、ヴェルミナさんはため息をつきながら答える。
「はぁ……当然試したさ。だが、呪いは扱いが難しいが、解呪も同じくらい難しい。呪いを強くしちまったせいで解呪出来るやつが誰もいなくなっちまったんだよ」
「……一体どれだけ胸を大きくしようとしたの?」
「そうだねぇ……元々Aだったが、Hまで大きくしようとしてたかねぇ」
「「…………」」
心底呆れる私とシャルル。
同じ女性として気持ちはわかるが、流石に欲張りすぎだ。
ミラはよくわからず頭に?マークを浮かべているが……。
まあ、この話はここまでにしておこう。
今重要なのは……。
「ところでヴェルミナさん。私は呪いを教えてもらえるの?」
「なんだって? あたしっていう具体的な失敗例を見て、まだ教わる気なのかい?」
「いや、おばさんのは失敗じゃなくて自業自得なんじゃ無いの〜?」
「うぐ!?」
シャルルの的確なツッコミの矢がヴェルミナさんに刺さる。
確かに呪いの怖さは十分理解した。
だがその上で思ったのだ。
……私なら扱えるかもしれないと。
「ヴェルミナさん、一つ試してみても良いかしら?」
「試す? 何をだい?」
「ヴェルミナさんがかかっている呪いの解呪よ」
「何だって?」
ヴェルミナさんの顔が呆然とした表情になる。
それは当然だろう。
五十年もの間、解呪できなかったのだから。
だが、私にはある程度自信があった。
「どうせ失敗したって、今より悪化したりしないでしょう? だったら良いわよね」
「そりゃあそうだけど……ってちょっと待て! 勝手に近づくんじゃ無いよ!」
ヴェルミナさんの静止を無視し、私はヴェルミナさんの前に立つ。
物は試し、百聞は一見にしかず。
とっとと実践してみるに限る。
「ヴェルミナさん、動かないでね」
私はヴェルミナさんに向けて手をかざし、魔力視覚で呪いの糸を見ながら集中する。
複雑に絡み合っているが、ここは私のスキルの使い所。
絡み合っているなら解けば良い。
「……結び目を見つけたわ!」
魔力の流れから結び目を見つければ、あとはゆっくり解いていくだけ。
魔法で呪いの糸を操作し、慎重に……ゆっくり解いていく……。
最初は額から汗が滲むほど集中していたが、数分して糸の操作に慣れた私は、もう一つの結び目も解き、二箇所から一気に解いていく。
クルクルと糸を回転させながらどんどん解いていき、更に数分後。
「……これで……終わりよ!」
遂にヴェルミナさんから全ての糸を外すことに成功する。
その瞬間、ヴェルミナさんの体が眩しい光に包まれ始め……。
「な、なんだい!?」
「ちょ!? 何この光!?」
「ま、眩しい!」
皆が突如現れた光に驚き、私も含めて目を瞑る。
そして、光が収まった後、目を開けると……。
「もー! 一体何だったのさっきの光はってええぇえええええ!?!?」
シャルルが驚きすぎて腰を抜かす。
それもその筈。
ヴェルミナさんが立っていた場所には、長身ですらっとした、美しい裸のダークエルフが立っていたのだ。(ちなみに貧乳)
足元には着ていた人物が消えたかのようにでかい服が落ちている。
間違いない。
これがヴェルミナさんの元の姿だ。
「の……呪いが解けたと言うのかい……い、一体どうやって!?」
「どうやってって……解いただけよ」
「何だって……!? そんな繊細な魔力操作聞いたことも……ってそうだ! ちょっと待っててくおくれ!」
ヴェルミナさんが家の奥へ慌てて消えてしまう。
きっと鏡でも見に行ったのだろう。
数分後、戻ってきたヴェルミナさんは、胸部分を隠したチェニックとスカートを着て、満面の笑顔で戻ってきた。
「見るがいい! これがあたしの本当の姿だよ!」
そう言ってドヤ顔をしながら紫色の美しい髪を靡かせ、綺麗な褐色の肌を見せつけるポーズをとるヴェルミナさん。
これにはシャルルとミラも驚いたようで。
「ヴェルミナさんすごく綺麗!」
「くぅぅう! で、でも可愛さではシャルルちゃんの方が上だし〜?」
ヴェルミナさんの美貌を見て、そんな負け惜しみを言うシャルル。
「いや、可愛さならミラがいちば……」
「エレン! 本当にありがとう! あんたはあたしの恩人だ!!」
感激のあまりヴェルミナさんが抱きついて来る。
長身のお姉さんに抱かれる感触は……あれ?
「固い……」
思わずボソッと呟いてしまう。
胸部分に顔が当たっていたのだが、一切の柔らかさが感じられなかったのだ。
「うぐ!?」
ショックを受け、膝から崩れ落ちてしまうヴェルミナさん。
まあ、でもこれはしょうがない。
それよりも……。
「この呪いの糸、どうしようかしら?」
手の上に浮かばせている糸の束を見ながら言う。
解くことはできたものの、私にはまだ呪いの糸を処分する仕方がわからなかったのだ。
どうしようか困っていると、ヴェルミナさんがハッとした表情になって起き上がり、私の両肩を掴みながら迫って来る。
「そうだエレン! その呪いの糸、あたしの胸だけに絡ませてくれないかい!?」
「え?」
「そうすれば今度こそあたしは巨乳になれる! 頼む! やってくれたらあたしが知る限りの呪いの使い方を全て教えてやる!」
あんな目にあったのにまだ諦めてなかったのか……。
……正直オチは見えているのだが、まあいいか。
「よし、じゃあ頼むよ!」
「ええ、分かったわ」
「おねぇさ〜ん? 後でシャルルにもお願いできない〜?」
「はいはい、後でね」
シャルルを適当に流し、私は先ほど解いた呪いの糸をヴェルミナさんの胸に絡ませ……られる部分はなかったので、縫い付ける感じで糸を操作し、結ばせていく。
そして、すべての糸を胸につけると、ヴェルミナさんの胸がみるみる膨らんでいった。
「お、お、おお!! つ、ついにあたしが巨乳になる時がき……」
パァン!!
「え?」
胸が大きくなりすぎて、ヴェルミナさんのチェニックが弾け飛ぶ。
「も、もういい!? もう大きくならんでいいから止ま……うわぁああああ!?」
静止も虚しく、胸はどんどん大きくなっていき、最終的に私の身長を超えるほどの大きな胸に成長し、ヴェルミナさんはそれに押しつぶされてしまった。
「え……な、何これ……」
「うわーでっかいおっぱいだー!」
「……ま、こうなるわよね」
体全体を膨らませていたものを胸に集中させたのだ。
寧ろ、五十年前この結果にならなくて幸運だっただろう。
「え、エレン……あたしが悪かった……また、解呪を頼めないかい?」
「ええ、良いわよ。呪いをレクチャーしてくれたらね」
「え!?」
ヴェルミナさんの顔色が青くなる。
でも、ここはしっかり反省してもらわないといけない。
ニヤァッと私は笑みを浮かべ……。
「だって胸を大きくしてくれたら教えてくれる約束だったでしょう? じゃあ今教えてもらわないと」
「え……で、でもこの状態じゃあ……」
「そこは何とかしなさい。大丈夫。私は飲み込みが早いから、そんなに時間はかからないわ。もし教えるのが大変で時間がかかったとしても大丈夫よ、数日でも、一週間でも付き合うわ。と言うわけで、この状態で、今すぐ、教えてね?」
「ひ、ひぃぃぃぃ!? シャ、シャルル! 助けておくれ!」
恐怖のあまり悲鳴を上げ、助けを求めるヴェルミナさん。
でも、無駄だ。
「シャルルは暫くミラと一緒に出かけてくれない? もしダメだったら……さっき胸を大きくして欲しいってシャルルも言ってたわよね? それを先に……」
「み、ミラと一緒に遊びに行きたいかな〜! じゃあおねぇさん! ヴェルミナおばさんをよろしくねー!」
「え!? シャルルちゃん!?」
ヴェルミナさんを見捨て、ミラの手を引っ張りとっとと逃げるシャルル。
よし、これで邪魔者は誰もいない。
「じゃあヴェルミナさん。早速レクチャーお願いね?」
「だ、誰か助けておくれーー!!!!」
……その後、結果的に一時間くらいでレクチャーは終了。
ヴェルミナさんは猛反省し、二度と胸を大きくしようなど言わなくなった。
呪いの糸も扱い方がわかり、作り出すことも消すことも可能となった。
ただ、呪いを扱えるというのはイメージが悪いので、この事は言いふらさないようヴェルミナさんとシャルルに約束してもらった。
そしてその夜。
「はぁ……はぁ……な、何とか戻って来れたわ……」
松葉杖をつきながら、ボロボロになったアルテナが家に戻ってきた。
うん、これはちょうど良い。
「おかえりアルテナ。早速だけど実験に付き合ってくれない?」
「え? 実験って何の?」
「呪いの」
「はぁ!? いや、ちょっとま……ギャァァァァ……」
……その後、アルテナの悲鳴が夜に響いたとか響かなかったとか。




