53.ラスキスのこと、どう?
「姫、楽しい時間を過ごさせて頂き、ありがとうございました。
是非とももっと交友を深めたいと考えておりますゆえ、どうかまた来ることをお許しください」
「うん、もちろん! 私も楽しかったし、また来てね」
ラスキスは、少し日が傾きつつある中をキラキラ馬車に乗って帰って行った。
話は盛り上がったし悪い子じゃないことも分かったし、見た目に反して結構真面目なようで、雑談よりも仕事とか制度の話が多かった気がする。
玄関ポーチまで出てお見送りしたけれど、皆は特に何も言わなかったので正解っぽい。
「イズミルとしては、どう思った?」
リビングに戻ったところですぐにカイルがそう聞いてくる。
「普通にいいんじゃないかと思うけど。結構真面目っぽいし、少なくとも私達の邪魔はしなさそうだから」
「普通と思いましたか。イズミルはやはり僕達とは少し違うようで、安心しました」
エルにそう言われても、意味がよく分からない。
「ん? どういうこと?」
「僕は男ですけれど、それでも見蕩れてしまうほどの顔ですから。
第五王子ラスキス殿下の美貌といえば、城下に響き渡るほどの評判ですし、御自身もそれをきちんと自覚して外交に使う方です。
もちろん今日もイズミルに気に入られるために気を使っていましたよね」
「うん、そうだね。あれだけのイケメンなら評判になるよ」
「それなのに、彼を『普通』と言えるのが凄いなと。
王宮としては、女の子を落とすのに最適な人選をしたつもりでしょうし、『ぜひぜひ旦那様になって!』と言うことを期待していると思いますよ」
エルにそう言われて、やっと気づいた。
確かに、超絶イケメンアイドルに求婚されたら全力でOKしちゃう人も多いかもね。
「でも、イケメンってだけなら皆で見慣れてるからね。特に、ラスキスの顔がめちゃくちゃ好みど真ん中って程じゃないし」
「そう。イズミの好みはおれだもんね」
ぐい、とアピールしてくるツィリムは、最近私の好みの仕草とか角度とかを研究し尽くしてきてて、本当に好みど真ん中だ。
「ふふ。これだけ一緒に居ててもまだ照れて顔赤くなるの、かわいい」
不敵な笑みを浮かべる天使君は本当に私の好みで、濃紺色の瞳に吸い込まれてしまいそう。
「もう、ツィリム! 私のことからかってるでしょ! そんなことして楽しい!?」
私のことを分かった上で照れさせてくるのでちょっと強めに言い返しても、その笑みが深くなるだけ。
「楽しいからやってるんだよ」
「もう!!」
こんなやり取りも楽しくて、みんなも笑っている。
「でも、ラスキス殿下よりもツィリムの方が好きだとは意外だな。
殿下は『顔だけ』と言われることもあるほどの美形だが」
「そんな言われ方してるの? 可哀想ね。
まあ、単に私の好みってだけだし、ラスキスも充分イケメンだと思うよ」
イケメンと評判のラスキスよりも好き、と言われたツィリムはとっても機嫌が良さそうだ。
この前、ラスキスの婚約よりも先に結婚式をしないと、と焦って不機嫌だった時とは雲泥の差。
「王宮の、ラスキス殿下の美貌で落とそう作戦は不発ぎみだが、イズミルが気に入ったなら良かった。
候補者は変えず、ラスキス殿下を婚約者にする方向で、話を進めていいか?」
こういう話が脱線した時に、はっきり意見をまとめてくれるカイルはさすがだね。
「んー、まあ、いいと思う」
「何か気になるところがあるか?」
真紅の瞳が心配そうに見てくれて、やっぱり私は大事にしてもらえている、と感じて嬉しくなる。
「まだ会って少し話しただけだからはっきり分からないんだけど。
強いて言うなら、私以外の、カイル、エル、ツィリムと全然話そうとしなかった所とか、カイルと少し話した時に、私相手の時と対応がかなり違った所が気になったかな」
「なるほど。それは、大切な視点かもしれないな」
カイルがしっかり頷いてくれた。
「これから皆と仲良くなって行けばいいと思うけど、私ばっかり見てるのはどうなのかな、って。
あと、私と仲良くしようとして少し無理してるのかもしれないから、それも不安かな。
本当のラスキスはどんな人なのか、もっとよく知りたい」
「本当のラスキス、とは?」
「うまく言えないんだけど、今回の話は、制度とかの内容が多かった気がするのね。
だから、次に会った時はラスキスの家族の事とか、仕事のこととかをもっと聞きたいな」
「なるほど。より一層深く知りたい、ということだな」
「それに、みんなももっと話をして欲しい。
五人で家族になるのに、私とラスキスしか話してないのはおかしいと思うから。
いくら王子様だって言ってもこの家では四番目だから、今の3人を蔑ろにされたら許せないと思うの」
「イズミル〜! やっぱり僕は、イズミルの夫にして貰えて、これ以上なくしあわせです!!」
カイルと話していたのに急にエルに抱きつかれてびっくりした。
「エルに喜んで貰えるなら、良かったよ」
「身分に囚われず、僕らのことを優先してくれるイズミルが、大好きですよ!」
勢いに任せてちゅ、と頬に口付けられて、照れてしまう。
「うん、私もみんなのこと大好きだよ」
照れていても、それだけははっきりと伝えたかった。
しばらくの間、週1程度で連載を再開致します。
ハイファンタジーで『《殲滅の魔女》は虚弱体質』という連載をしています。
そちらも併せてよろしくお願いいたします。




