16.元 家庭科部
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引っ越しから数日。
私はかつてないほど暇を持て余していた。
前の家のころは外に出ないようにと言われていたけどその代わりにたくさんの本が与えられていた。
この世界の常識を学びたいと思っていたから、物語や魔法の本など、いろんな本を読んでいた。
私は基本的にインドア派の人間だから外に出れないことは別にストレスじゃなかった。
中学は吹奏楽部、高校は家庭科部といえばインドアさ加減は伝わるかな。
ただ、引っ越しの最中に本はどこかへ持って行かれ、場所がわからなくなった。
たぶんあの本はカイルかツィリムのだろうから、個人用の部屋にあるのかもしれないけど本人がいない時に勝手に入るのはちょっと気が引ける。
ということでやることがない!!
昼からイフレートが来たら買い物にでも連れてってもらおうと思うけど、現在旦那さんを送り出したばかりの午前9時前。
まだ3時間以上、ひとりだ。
料理でもするかぁ……
せっかくツィリムが私でも使える道具類を作ってくれたんだし。
元の世界とほとんど変わらない操作で扱えるんだから、すごいよねぇ。
この世界の料理は基本、雑だ。
素材が結構おいしくて、それに頼った味というか……
素材を焼くか茹でるかして、ソースをかける。
ソースの種類である程度のバリエーションを出すことが多い。
それ以外はあまりない。
そこで、私が今日作ろうとしてるのは茶碗蒸し!
あんまり蒸し器で作ったことないけど、レンジではよく作ってた。
出汁らしきものはあるし、卵もあるから出来るんじゃない?
分量が適当になっちゃうのがヤバいとこかな……
結果、2回ほど失敗したけど、うまくいった。
1回目は分量ミスで固まらず、2回目はすが入ってしまった。
3回目にできたのはちょっと割って中を見てもいい感じだった。
イフレートにあげようっと。
私の分は失敗作2つがあるからね。
そうこうしてるうちに昼ごはんの時間が近くなってきたから、味噌汁も作っておく。
正確には味噌じゃないから、味噌汁とけんちん汁の間みたいな味付けだけど。
「おはようございます、イズミ様」
「おはよう、イフレート」
ギリおはような時間帯にイフレートがやってきた。
「お昼ご飯にしましょうか。何がいいですか?」
「味噌汁と茶碗蒸しを作ったから、あと魚焼いて欲しいなって」
「味噌汁、ですか?茶碗蒸しと言うのは?」
「両方私の故郷の料理で味噌汁はツガリ(味噌と醤油の中間のような調味料)で作ったスープ、茶碗蒸しは出汁と卵を混ぜて蒸したやつ」
この世界の自動翻訳はいい仕事してくれてるんだけど、存在しないものは当然伝わらない。
「味噌汁はおいしいですね。少し北の方の料理に同じようなものがあります」
軽く味見しながら言う。
「ですが、この茶碗蒸しというのは……見たことない料理ですね」
「それイフレートの分だから食べて」
「ありがとうございます、いただきます。」
「固まっているのにトロトロしていて、不思議な食感ですね。おいしいです」
この世界の人にも茶碗蒸しが受け入れられてよかった。
「旦那さん方にも作ったら喜んで貰えると思いますよ」
イフレートにそう言ってもらえて素直に嬉しい。
晩御飯に食べれるようにみんなの分も作ろうかな。
茶碗蒸しがイフレートの舌にあうことがわかったところでお昼ご飯にしよう。
私が作った味噌汁と茶碗蒸しに加えてイフレートが魚を焼いてくれた。
純日本の朝ごはんって感じだけど、唯一許せないのが、主食が炊きたてご飯ではなくパンだってこと!!
この和食メニューにパンはきつい!
全然何も考えずに作ったけど!!
ないものねだりは置いといて。
気を取り直してごはんの配膳に戻る。イフレートの分は綺麗にできた茶碗蒸しだけど、私の分は失敗作かける2つ。
「イズミ様は茶碗蒸しがお好きなのですね。2つも食べるなんて」
「いやいや、違うよー。茶碗蒸し好きだけど2つ食べるほどじゃないし。単に失敗したから自分で消費するだけ」
「それは、申し訳ありません。それは私が食べますのでこちらをお食べください」
「大丈夫、大丈夫。失敗作でもおいしいし、イフレートにはおいしいの食べて欲しいから」
ふわりと綺麗な笑顔で笑ってくれた。
食べる人がこうやって笑ってくれるから、ごはんを作るのは楽しいんだ。
「それでは、お言葉に甘えて。いただきます」
「いただきまーす」
パンなのが納得いかないけど、おいしい。
食べながら午後の予定を訊いてみる。
「午後は何する予定?」
「少し買い物に言ってきます。頼まれたものもありますので」
「じゃあ私も連れてって欲しい!家にいるとすることなくて暇だから」
私の言葉に、イフレートは困ったように苦笑いした。
「……あまり外歩きはおすすめできませんが」
「なんで?」
「外を歩いている女性はほとんどいませんから、とても目立ってしまうと思います。それに、イズミ様は外で買い物したことがないですよね?せっかくなら、初めての買い物は旦那さんのどなたかと行った方が良いかと思います」
なるほど。確かにそうかも。
「むしろ、私と出かけたことがわかったらイフレートが旦那さんたちに怒られそう」
イフレートも頷いてるし、外出はまた今度の機会にしよう。
それはそれで暇なんだよなぁ。
「暇すぎるんだけど、何かすることない?」
「時間があるのでしたら、刺繍などはいかがですか?旦那様方のハンカチなどに刺繍をすれば喜んで貰えるかと思いますよ」
そういうもんか。
この世界の女性はそうやって暇を潰してるのかな。
「なら午後は刺繍をするとして、買い物するなら本買ってきてくれない?今まで読んでたやつはどこいったかわからなくて」
よく読んでいた本の題名をいくつか告げて、それに似たようなものを買ってくるように頼むと笑って快諾してくれた。
その後は元家庭科部員の腕を存分に披露し、旦那さんたちの持ち物に刺繍した。
ハンカチとかに刺繍するのはわかるんだけど、シャツとか靴下なんかにも刺繍をする。この世界の被服は魔術に頼ってるから、〇ニクロみたいにおんなじものをたくさん作るのは得意だけど飾りを付けたりするのは魔術では出来ないらしい。
だから刺繍は結構大事な女の人の仕事なんだそう。
男の人の間では自分の妻の自慢だというから、気合い入れてしなくちゃね。




