1話 パノプティコンと同族嫌悪
今日は何と、刑務所に向かっている。わーい。やった。監獄観光ですよ。
揺れる馬車内でイザベラさんからの、こいつ実は馬鹿ではなかろうかと言う生暖かい視線が突き刺さるけど…。
「こんなに燥ぐあなたを見ると、最初に私たちが出会った時にでも一度は刑務所へ入れるべきと思えてくるわね。」
違いますって、別に刑務所が好きとかじゃありませんから。
この時代って、ほら、パノプティコン型刑務所なんて殊勝なことをしていたんだからさ。
実際にそれを目にするってワクワクするじゃん?本物の観光スポットなのです。
パノプティコン型刑務所って21世紀では廃止されているけど、国有地なので取り壊すこともせず物好きな観光客向けの観光スポットとなっているんだよね。
そのパノプティコン型刑務所とは何ぞやと言う話なんだけど。
円形の建物の中に囚人部屋が壁側に並ぶようにして、建物の中心部に監視塔を設置。その中から周り全体を見回すことの出来る刑務所のことである。建物がコロッセウム見たいに円形。
これの何がいいかって、以前の時代までは考えようともしなかった発想から、囚人の福祉にも気を回した設計思想が詰め込まれているところ。
それをイザベラさんに説明する。
「功利主義のジェレミ・ベンサムはパノプティコン型刑務所を設計した時、彼は囚人を監視をより効率的に行うことを重点に置きました。それまでは巡回しながら監視をするしかない不便さ故、囚人には監視せずともいいよう、過酷な環境が強いられたようなんです。」
ここまで言ってこいつ何言っているんだろう見たいな目で見られるのではないかと顔色を窺ってみたら、イザベラさんは薄っすら笑みを浮かべていたのである。
「ちゃんと聞いているわ、続けて。」
「はい、人は見えないものに不安を覚えるもの。不安に押し潰されないよう、不安をもたらす存在こそが悪であると断定してしまうでしょう。囚人にはどれだけ痛みを与えても満足できない。不安を書き出されるのは囚人ではなく、意識の片隅に常にある人が持つ暗闇ですから。」
「理性の光で闇を照らす…。」
イザベラさんが感心したように呟く。英語で啓蒙、啓発はenlightmentと言うからね。
「個々人が幸せに暮らすことで、社会全体の幸福を最大化するべし。その考えには囚人ですら例外ではなかったのでしょう。残念なことに彼がまだ生きている頃には実現されませんでしたけど。」
人が間違いを犯したから、それを罰することこそ正義。
そのような考え方は、実は社会全体の幸福を低下させているだけではないのか。
そもそも囚人が罪を犯した事実と、囚人に不幸を強いる我々の間に、明確な繋がりなんて存在しないのではないのかと言う疑問もある。要するに悪い人に悪いことをするのは果たしていいものかと言う。
隔離からの更生は必要だとしても、それ以上をすることに何の意味があるのかと。
実際に囚人を更生させず罰することしかしなかった場合、囚人が社会復帰できずまた犯罪を繰り返すというパターンが多く見られる。
確かに一部の救いようのない根っからの悪人とか、それこそ心理学でいう反社会的人格障害に該当する、サイコパスやソシオパスのような精神異常者は社会に復帰させない方がいいかも知れないけど。
だけど彼らに不幸な状態を強いることで、回り回って社会の幸福低下にも繋がるなんて。
それは如何ほどのの思考の末にたどり着けるものだろうかと。
感情的になることなく、どこまでも理性を保ちながら、社会全体に取っての最善を考える。
その成果が、パノプティコン型刑務所には詰め込まれているのである。イギリスの学者によって考案されてはいたけど、最初にパノプティコン型刑務所が建てられたのはアメリカ。次にフランスでは大々的にこの仕組みを使うことに。
私が前に生きていた時代では、先進国の間で起きていた市民権運動と中産階級の台頭により、パノプティコンを監視社会の象徴みたいに扱っていた節があるんだけど。特にフランスの哲学者がその手の話を多くしていて。
確かに監視と言う面だけを見れば、理性を暴走させているだけではないかと言う見方も出来る。
日本でも明治時代に一部採用され、中央から監視するというアイデアだけ採用して円形ではなくとも囚人部屋の間に監視塔を設置するようなことはしていた。
なぜ円形にしてなかったのかは謎だけど。単純に円形で建築をする考え方に異質さを覚えたから?
そんなことを思っていると。
「ここにいらっしゃいな。」
自分の膝の上をポンポンと軽く叩くイザベラさん。
うん?膝の上に座ろって?そんな馬鹿な…。
まあ、座ったけど…。後ろから抱きしめられる。ジェイと妙な共通点が出来てしまった。
「ご主人様、これは一体…。」
人の温もりに弱いのでちょっと幸せではあるんだけど。
「個々人が幸せに暮らすことで、社会全体の幸福を最大化するべし。」
なるほど…、納得。
そんないちゃつく時間があったんだけど、とまれそもそもなぜ刑務所なんてところに行ってるのかと言うと。
ジェイが保釈金を払いたいと思っているマチルダと言う人物を一目見たくて。
なんて、動物園のパンダじゃないんだから。
私の中では勝手にいかつい女海賊みたいになってはいるけど。それはそれで見たら面白いかも…。
そうじゃなく、何やらアランデールさんが自分の中で進めている計画があるようで。それが何なのか全貌を教えてもらえず。ジェイが危険な目にあう可能性もさながら、単純にマチルダとジェイの関係性の中に裏社会の何かしらの事情がある気がしてならなかったので。
それでイザベラさんに頼んだら。
「主人をこき使うメイドがここにいるわ…、ふふ。」
イザベラさんはそう楽しそうに笑っていたんだけど。
サドルトン家の法律家としての繋がりを使ったんだろう、ジェイの言うマチルダらしき人物が収監されている刑務所を突き止めることに成功した。
私じゃなく、イザベラさんが。
ジェイに直接聞いたところではぐらかされるのは目に見えていたし、アランデールさんは知っていても知らぬ存ぜぬを通されては打つ手がない。
特にこの時代の男女関係的な意味で、男性が考えてることに女性が口出しするのは難しい。ましてや自分の後見人であり、上流階級の人。
アランデールさん本人はあまり気にしていないみたいだけど、だからと甘えるのもね。
自分のご主人様に甘えるのはいいのかって、いいんじゃないかな…。
私たち相思相愛ですから。
恋愛ではなく家族愛とか、友愛とか、そんな感じだけど。そうだよね?一体誰に聞いているのやら。
それで別にアランデールさんが信用できないわけではなくて、アランデールさんが見落としているところがあったら大変でしょう。
一人で行こうとしたんだけど、イザベラさんからそれは良くないと待ったがかかって。
子供が一人で刑務所に行って、母親でもない相手の面会を申し込むなんて、ただの無茶であるとのことで。ご同行願わせてもらったわけである。
女性囚人の入る刑務所には待合室みたいな場所があって、ここで自分の子供とも面会できる。だからか少し周りがうるさい。
壁の方に木製の長い椅子が並べられていて、面会をする人は反対側にある椅子を引っ張ってきて座る感じ。面会を申請した側は窓を背にすることになる。
病院みたいな感じ?なんでこんな設計にしているのかな。
看守たちはと言うとお貴族様が訪問していることで気持ちなしかソワソワしているような…。
と言ってもずっとこっちに視線を向けているのも失礼になるはずで。
そんな感じでこんな環境なままでいいのかと戦々恐々としているのがありありと伝わってくる。
別に匂いとかはしないんだけどね。
囚人は真冬でも冷たい水をかけられて体を綺麗にさせられるので。そういえばもうすぐ冬なんだよね…。
それで実際のマチルダさんはと言うと。
「ただの盗人と聞いたけど、違ったかしら。」
イザベラさんにそう言わせるほどの美人さんだった。
ジェイが言っていたように長身で、ミディアムショートの黒髪に鋭い目つき。
見た目の年齢は20代後半くらい。大柄と言うか、がっちりしているような感じではなく、ただ水泳選手みたいに肩幅がちょっと広いだけ。
服で隠されてない前腕のところやふくらはぎは筋肉がついてるのがわかる。
ただ生活してできる筋肉じゃなく、たくさんの運動で出来たアスリートを連想させる筋肉。ヴァイキングの女戦士かな。
「あんたか、あたしなんかが見たいと思った物好きなお貴族様は。」
そして最初の一言がこれである。
てっきりジェイと同じアイリッシュかと思ったけどニュートラルなアクセント。
敬語と言うか、目上の人に言う喋り方もあるにはあるけど、マチルダさんはそれをしないのか知らないのか。
ニュートラルなアクセントは、ヨーロッパ各地から中産階級や熟練工の移民を広く受け入れている、南ロンドンでも中心街に値するところで使われるものである。
マーガレットちゃんが使ってるアクセントもこれなんだよね。
なぜかと聞いたら、自分が通っていた寄宿学校では皆このアクセントを使っていたから。
「用があるのは私じゃなく彼女よ。」
イザベラさんは私の肩に手を置いて少し後ろ隣りに立っていた私を前に出した。
「初めまして、マチルダさん。ルミと言います。ジェイの友人です。」
「メイド?あいつ、純真無垢な顔してあたしが捕まったからと貴族家のメイドをたぶらかしたの…。まだ子供よね。お嬢ちゃん、今何歳?」
少し屈んで目線を合わせて聞いてくるマチルダさん。名前はあまり覚えたくないのかな…。
ちなみにイザベラさんはと言うと看守の人が用意してくれた高級そうな椅子に座ってふんぞり返っている。足を組んで、指を組んで。
「十歳で、ジェイとはただの友人です。恋人ではありません。」
私も壁から椅子を持ってきてマチルダさんの前に座りながら言う。
「そう言わされているだけじゃないならいいけど。」
マチルダさんがあまり私の言うことは信じられないのか、イザベラさんを見る。
「同じベッドで寝る仲らしいわ。」
ご主人様が悪乗りをしておられる。
「今すぐ私をここから出してくれたらあいつを一発ぶん殴ってやる。」
結構いい人なのかな?と言うかそこまで反応することってある?単にロリコンが嫌いとか?
「違いますから。今のはご主人様の冗談です。」
「あら、主人の意図を勝手に決めつけるメイドがおりまして?」
決めつけじゃないし。
マチルダさんはその短いやり取りを見てから片方の眉を上げて、ふっと笑ってから頷いた。
「ただの主従関係じゃないってことね。それで、何の用?可愛いメイドが綺麗なご主人様を連れてきてまでする話って。」
「ダービー兄弟のことを教えてもらいたくて。」
私がそう言うとマチルダさんは眉をひそめた。
「胸糞悪いごみ屑野郎と傍若無人な変態野郎のことならジェイに聞けばいい。」
確かにジェイが言っていた通り口が悪いかも。
「マチルダさんにも聞いてみたかったんです。」
何かあるかもって私の感が囁いているんですよ。
「貴族家のメイドがそんなの知ってどうするの?」
「あなたこそ、それを知ってどうするつもりかしら。」
イザベラさんから飛んでくる援護に助かるけど、イザベラさん、初対面の人には容赦ないんだよね…。
「それもそっか…。ルミだったかな。」
結構簡単に引き下がる。やはり上位の階級を尊重しないといけないと思ってはいるのかな。
「はい、ルミです。あの、小さいほうと大きい方って聞きましたけど。どっちがどっちなんですか?」
「名前知らないの?ウィリアムとジャック。小さいほうがウィリアム、大きい方はジャック。」
「それは知ってます。そっちじゃなく、マチルダさんの言い方が誰を指しているのかわからなかったので。」
「胸糞悪いのがウィリアム、傍若無人なのがジャック。会ったこともないんだね。」
ジャックはジェイのところへ行ったときに何回も見てると思う。あの大柄な男性のことだよね。いかつい顔のおっさん。
「二人って、何か悪いことをしているんですか?違法行為とか。」
「大きい方は娼館で女が病気になっても死ぬまで放置してても眉一つ動かさない。小さい方は…、多分何人か殺してる。自分で殺しているのか人にやらせているのかはわからないけど。」
想像以上にやばかった。
「なぜあなたがそれを知っているのか教えてくれないかしら。」
イザベラさんからの質問。確かにそれは気になる。
「色々あるけど…、警察にも話してるんだからそっちから聞いてもいいんじゃない?わざわざ貴族様がこんなところに入って来なくても。」
あまり言いたくないのかな。
「盗人の分際で貴族の決定に口出すつもり?」
ご主人様が怒っていらっしゃる。顔色は普段と同じなので、本気で怒っているような感じはしないけど。だけど言葉の重さは無視できないでしょう。
「なら自分で調べてみたらどうなの。盗人の言葉なんて聞く価値もないのでしょう?」
そこで強く出てくるって、結構強情なのかな。
「私たちはあなた一人のためにここにいるわけではないわ。私たちの時間を使わせていることを自覚なさって?それとも貴族が使った時間の重さを尊重しないような人間にどこまで出来るか試してみる?」
どうなるの?気になる…。限界点がよくわからないんだよね。
さすがに処刑まではされないと思うけど、しつけと言って殴られるくらいなら平気で行われるような世の中だと言うことは知識として知ってはいる。
見たことはないんだけど。ちなみにこの時代、下位の階級から上位の階級を攻撃した場合、より重罪となる。貴族以外は明確に定められた身分制度がないのになぜ判断できるのか。
まあ、イギリスって成文法じゃなく不文法(Common Law)なんだよね。
判例に基づいて判決を下すので。空気を読めとかそういう?
「いや…、やめておく。」
「ならその汚い口で私とルミが聞くことは何でも答えてみなさいな。出来るわよね?」
今日のイザベラさん…、怖い。怖いのである。そんな姿も凛々しくて格好いいけど。
マチルダさんの顔は真っ赤になってる。怒ってるのかな。
「わかった、わかったから…。知ってることなら全部答える。質問は何だったかな。」
「二度言わせる気?」
「あんたの迫力で忘れただけだから。」
「なぜあなたがそれを知っているのかと、お嬢様はお聞きになされました。」
またエスカレートしそうだったので私が言うことに。
「まあ…、あまり子供に聞かせる話じゃないと思うけど、いいの?」
いいんです。面白そうだし。
「彼女、見た目は人畜無害そうだけど、何がどうしてそうなったのか、中身は私よりも成熟してるわね。」
そんな風に見られてたのかと、ちょっとだけショックを受ける。
これからはおばあちゃんみたいに話そうかな。イザベラや、婆やの語る物語を聞いておくれ…、みたいな。
わーい、って燥ぐイザベラさん。
そんなしょうもないことを考えていると少しだけ長い話が始まったのである。
「わかった。後悔しても遅いから。うちは…、代々精肉店をやっていた。ある日賭場で殺された動物を売りさばくとためと親父に接触してきて。それを断ったからとウィリアムに殺された。兄たちはオーストラリア行きの船に載せられて、残ったのはあたし一人。母親はジャックの娼館で娼婦になったけど、一年も経ってないのに病気になって死んだ。母親が娼婦をやって稼いだお金で学校を通ってのを知ったのは母親が死んでから…。馬鹿らしいでしょう?」
あまりにもあまりな話に何も言えない私と、座ってる椅子から少し前のめりになって話を興味深げに聞いているイザベラさん。
「哀れではあるわね。それで?」
結構えぐい話だと思ったけど、イザベラさんったら容赦ない…。
「あたしは学費が払えないから退学。母親が死んだ場所と同じところで娼婦になるしかないって言われたけど。馬鹿じゃないんだからその手に乗るわけがない。奴の手が届きそうにないところへ逃げようとしたけどお金が足りなくなった時に、貴婦人が落ちて娼婦をまとめる酒場があると聞いて。そこでジェイと会ったんだけど…。これでいい?」
「ロンドンはいつから娼婦で溢れる場所になったのかしらね。」
「さぁ?女が落ちるとそこしか行けないかもしれない。あんたも気を付けたほうがいいんじゃない?」
マチルダさんがそう言った瞬間、ヒュンと風音がして壁にナイフが刺さる。マチルダさんの頬から一筋の傷跡が出来て、少しだけ血が流れた。
「次はないわ。」
私は慌てて壁に刺さったナイフを抜き、それをイザベラさんに渡すと袖の下に消えた。消えた…?くノ一かな。
マチルダさんも顔から少しだけ血の気が引いてるし。
今のはマチルダさんが悪いと思うから、フォローは出来ないかな…。
周りを見ると看守たちもちょっと腰を浮かしてからぽかんと口を開けてみてる。
これが俗に言う殺気…。
視線をまた周りからマチルダさんに戻すと顔色はもとに戻っている。この人、結構度胸あるよね。
「父親の不審死については警察が調べてなかったんですか?」
話を振ってみると。
「騒がしかったことは覚えてる。」
普通に答えた。
「盗んだものは全部没収されたんですか?」
「そうだけど。」
「証拠になりそうな…、日記とかは見つかってません?」
「奴らの中にそんな殊勝な性格をしているのがいると思う?」
見たことないから知らないけど、別にどこぞのRPGゲームみたいに日記をつけてプレイヤーに見られてしまうような間抜けで繊細な犯罪者がいてもいいんじゃないかな。
それからはジェイとどうやって知り合ったのか、ジェイは今どうしているのかを十分ほど話した。イザベラさんは茶々を入れることもなく静かにマチルダさんを見つめている。何かを考えているような目。
何を考えているんですか?そう聞いてみたかったけど、今のイザベラさんは刃物のように鋭くて、何も聞けそうにない。
「最後に聞きたいことがあるんですけど、盗みが成功したらどうするつもりだったんですか?」
そろそろマチルダさんとの会話も終わりにしようとそう質問をする。
「アメリカ行きの船に乗る。あいつは自分の体のことを気にしてたから、上客として乗るのは拒まないでしょう。」
「アメリカに知り合いでもいるんですか?」
「いない。最後の質問じゃなかったの?」
「本当にこれが最後です。ジェイはマチルダさんにとってどういう存在なんですか?」
「手のかかる弟。それ以上でもそれ以下でもない。」
なるほど。
「わかりました。では。」
「付き合ってあげたんだから、ここから出してくれない?」
マチルダさん、全然懲りてない…。
「死体として出るのはどうかしら。」
それに対してイザベラさんの辛辣な言葉がさく裂。
「いや、今のなしだから。さよなら、次合うことがないように祈っています、おっかない貴族様と変な名前のメイドちゃん。」
「さよなら、身の程も知らないな盗人さん。」
私は軽く手を振るけど、マチルダさんは肩をすくめるだけだった。
そして私たちは椅子から立ち上がり、後ろに向かって歩く。
刑務所から出て、馬車に向かって歩いて。
馬車に入ってため息を一つ。
「マチルダさんは確かに無礼だと思いましたけど、ご主人様は毎回無礼な人にはそのような対応をしていらっしゃるんでしょうか。」
「違うわ、ルミ。彼女はね、私と…、似てるから。似てるのに、それしかできないなんて。哀れに思ったの。」
それは性格的なところが?それとも何か、もっと根本的なところで似てるってことなのかな。私も前世では私と似たような考え方を持つ人と幾度も話したことがあるんだけど、普通に楽しかったんだよね。
それとも、自分と同類の人間が刑務所に入ってるのに思うところがあったのかな。
そういえば…、せっかくパノプティコン型刑務所に来たというのにその中身…。
見てないや。




