表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】恋に恋する侯爵令嬢のこじらせ恋愛  作者: 狭山ひびき
再会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/44

2

「アリッサ、クリス様がね、素敵なのー」


 うっとりとした顔で語られるカトリーナののろけを、アリッサはうんざりした表情で聞いていた。

 クリス様が素敵、カッコいい、優しい……、それらの言葉は、もう耳に胼胝(たこ)ができるほど、さんざん聞かされたからである。

 カトリーナは紅茶に蜂蜜を落として、くるくるとスプーンでかき混ぜながら、ほう、と息を吐く。

 三日前、隣町にあるマカロンが美味しいと評判の店で、クリスとおしゃべりを楽しんだ。彼は優しくて楽しくて、もともと素敵だと思っていたが、カトリーナはその日一日でクリスのことが大好きになったのである。

 そして昨日、再びクリスと待ち合わせをして、一緒に散歩をして、風車小屋の近くでおしゃべりを楽しんだ。

 明後日は、この邸に招待している。


「お嬢様、幸せそうなところ水を差すようですが、クリス様がどこのどなたかもわからないのに、親しくするのはいかがなものでしょう?」

「あら、知っているわよ! 十年ほど前から隣町に住んでいるクリス様よ」

「それは知っているうちに入りません。悪い人だったらどうするんですか?」

「クリス様に限ってそんなことがあるはずはないわ」

「……その自信はいったいどこから来るんですか」


 アリッサがやれやれと首を振る。


「まあ、育ちのよさそうな方ですし、貴族か、貴族でないにしても良家の方なのでしょうけれど……。ただ、隣町はミルドワース伯爵の領地です。伯爵にはクリス様くらいのお子様はいらっしゃらなかったはず。自分の領地でもないのに、こんな何もないところに十年もいらっしゃるというのは、少し妙と言うか……。所作は王都にお住いの方のように洗練されているのに」

「きっと自然が大好きな方なのね!」


 カトリーナが紅茶を口に運びながらにこにこと笑えば、アリッサはがっくりと肩を落とした。


「お嬢様は本当に能天気でいらっしゃいますね」

「あら、アリッサが神経質すぎるのよ。もっとにこにこしていないと、素敵な恋は訪れないわよ」

「素敵な恋は必要ないので結構です」

「えー」


 カトリーナが口を尖らせる。

 アリッサがからになったティーカップを片づけはじめると、カトリーナはテーブルの上においていた本を手に取った。

 隣町の本屋で買った十七冊のうちの一冊で、お互い好きなのにすれ違う切なくも甘い恋の物語だ。

 しおりを挟んでいたところを開いて、続きを読みはじめながら、


「ああ、じれったいわぁ。どうして好きって言えないの? でも……、意地っ張りな男性もたまらないわぁ。わたしだったら……うふ、うふふふふ……」


 と、カトリーナが妄想の世界に浸って、お嬢様らしからぬ笑い声をあげはじめたのを横目で見ながら、アリッサは先が思いやられてため息をつくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ