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貴族院調査室

貴族院調査室です! その婚約破棄ちょっと待ってください!

作者: 若桜なお

貴族院調査室シリーズ①

単独で読めます。

続編はこちら→ 貴族院調査室です! ドアマット令嬢を作るのは違法です!

https://book1.adouzi.eu.org/n7291lk/

「ウィレミナ! よって貴様との婚約はこの場をもって破棄とする! そして私はここにいるエマを新たな婚約者として……」

「貴族院調査室です! その婚約破棄、ちょっと待っていただきます!!」


 第二王子アーサーの傲慢な宣言にかぶせるようにして、凛とした女性の声がホールに響いた。一瞬の沈黙と共に、かつんというヒールの音が続く。その硬質な音がしたほうへ、横にいる男爵令嬢の腰に手をまわしたまま、アーサーはこわばった顔を向けた。


「王族でありながら、捏造による勝手な断罪。公的な行事である卒業パーティーを私有化しての婚約破棄。こちら貴族院法のうち第三条と第八条、ならびに婚姻法第六条に抵触しております。裁判法第二条をもって、これより本件は第一級調査官ベアトリス・アスキスの名の下、貴族院の管理下に置かせていただきます」


 貴族院調査官ベアトリスは、身にまとったドレスの胸元から身分証のペンダントを引っ張り出すと、その身にかけていた変身の魔術を解いた。彼女の容貌が、一転して地味な少女のものから華やかな妙齢の女性のものへと変化する。


「ベアトリス先生……」


 王族として貴族院法を入学前から学ばされていたアーサーは、見覚えのあるその美貌にこわばった顔を青ざめさせた。彼女は貴族院を取りまとめる法服貴族ではない──貴族院をまとめる法服貴族は、法律家として長年経験を積まなければならないため、中年男性しかいない──が、その下で働く調査官の中では若く美しい女性として目立った存在であった。子ども相手にとっつきやすい相手として、何度かアーサーの授業を受け持ったこともあったのだ。


「テストの点数はよくても、きちんと理解はしておられなかったようですね、アーサー殿下」


 かつての教え子にかすれた声で名を呼ばれたベアトリスは、潜入捜査であらわになった諸々を脳裏に浮かべ、温度のない微笑を浮かべた。


  ◇


 メインリィア王立学園は、今ひとつの噂でひそかに盛り上がっていた。


「ねぇ、またエマさんが()()()()といちゃいちゃしてるわ」

「見事に高位貴族ばかり選んでいるのがなんとも見苦しいわよね。……ねぇ、見てくださいあの距離! 婚約者がおられる異性との距離としてありえませんわ! キーン様もなにを考えているのだか!」

「なにも考えていませんわよ、あの脳筋は。ああ、ウィレミナ様やオーレリア様たちが可哀想ですわ」

「……すみません、あの方たちはそんなに頻繁にいちゃついてるんですか?」


 口元を扇子で隠しながら噂話に興じていた女生徒たちは、突然の声掛けにびっくりして目を見開いた。見ると、まっすぐな栗色の髪を長く垂らした女生徒が、驚いた二人を見て慌てて言葉を続ける。


「お話し中に申し訳ありませんわ……ちょっと気になっていたところにお二人のお話が聞こえてしまって。あ、わたくし、先月魔術学院から転入してきたクリスティン・ハンバートと申します。淑女科一年三組です。トーレス様は同じクラスでいらっしゃいますよね?」

「え、ええ……ハンバート様とは先週のマナー実技で同じ班でしたわよね」

「覚えてていただけるなんて嬉しいです! トーレス様とお友達のお話に割り込むなんて無作法をして本当に申し訳ありませんが、あの一団があまりにも気になりすぎて……。あの方たちはなんの集まりなんですか?」


 クリスティンの言葉につられるようにして、女生徒──マリアンヌ・トーレスとジョアンヌ・ウィラシアは、軽い自己紹介ののち、彼女たちが口にしていた、今一番熱い噂について説明をし始めた。


「ハンバート様、真ん中にいる女生徒……エマ・スミッソン嬢はご存じ? 淑女科一年五組の生徒なんですけれど」

「クリスティンと呼んでいただけると嬉しいです、トーレス様、ウィラシア様。スミッソン嬢ですか……かわいらしい方ですね。春の花のような髪色が愛らしいです」


 まずは顔見知りであるマリアンヌが話し出したものの、クリスティンがエマの容姿を褒めた途端、マリアンヌの隣で渋面を隠そうともしなかったジョアンヌが堰を切ったように話し出す。


「かわいらしいのは見た目だけですわ。あの方、男性に色目を使う方として有名ですのよ? 入学してすぐに伯爵令息テオバルド・ザンディス様に言い寄ったと思ったら、ザンディス様のお友達として辺境伯家のキーン・ベルクマンとも仲良くなり、ザンディス様のお兄様である生徒会書記のギルベルト様とも仲良くなって、そのつながりで役員でもないのに勝手に生徒会室に出入りするようになる始末。今では副会長の侯爵令息ロイド・ハッシュベルド様と会長のアーサー第二王子殿下まで巻き込んで、あんな状態なのですわ!」

「おお……思ったよりなんというか……ガツガツ婚活に励んでいる令嬢なんですね。五組ということは男爵ですか? 最初に仲良くなったのが二組男子(伯爵令息)というのもなかなかすごいですが、第二王子殿下とまでとは、下剋上狙いすぎですね。あれ? でも皆様婚約者がおられる方ですか……?」


 憎しみがこもった説明に、クリスティンは首をかしげて見せた。ふんっと鼻を鳴らすと、ジョアンヌはレースの扇子を掌に叩きつけるようにして勢いよく閉じ、憎々しげに吐き捨てる。


「テオバルド様以外、全員婚約者持ちですわ。当然でしょう? 皆様高位貴族なんですから、幼少期から婚約者がおりますわ」

「それは……皆様、なにを考えていらっしゃるのか」


 困惑した面持ちで、花のような女生徒と、彼女を囲む男子生徒たちを見るクリスティンに、マリアンヌがため息交じりにこぼした。


「わたくしのことはマリアンヌでよろしいわ、クリスティン。あのね、あそこの皆様は婚約者のことも家のことも、なぁんにも考えておりませんわ。アーサー殿下がエマ嬢とは仕事仲間で仲がいいだけ、勘ぐるのは失礼だとおっしゃられてから、まわりも許されてしかるべきといった様子でいらっしゃるそうですわよ。何度殿下の婚約者であるウィレミナ様やハッシュベルド様の婚約者であるオーレリア様、キーン様の婚約者のジョアンヌがたしなめても無視しておられますわ。ギルベルト様のところはとうとう婚約者のリリアンナ様が我慢の限界だと、白紙協議に入られているようですし、他の皆様もどうされることやら」

「あー……ウィラシア様、辺境伯令息の婚約者でしたか」

「わたくしもジョアンヌでよろしくてよ。リリアンナ様のところはザンディス家より家格が上ですし、見切ったら次の縁談も探しやすいお家ではありますから白紙撤回もできるのでしょうが……わたくしたちの婚約は、なにぶん辺境伯家からの申し入れで結ばれた縁なのもあって、なかなかこちらから切るのは難しいのですわ。政略結婚ですし、もう粛々と続けるしかないかと思ってはいるんですが……愛人として受け入れるには、ほら、あの方大勢侍らせているでしょう? あれがこのままだと思うと、さすがに受け入れがたくて」


 クリスティンはまるで高級娼婦だなと思ったが、さすがに口に出すのははばかられたため、嫌そうにため息をつくジョアンヌに同意を見せるかたちで頷いた。複数の男性を共有する女性を愛人として受け入れるのは、年頃の女性としてつらかろう。なにせ、貴族夫人の一番の仕事は家を継ぐ子どもを産むことである。潔癖な少女であればなおさら、あの娘を排除したいと考えて当然だと思う。


「それは……わたくしも無理ですわ。ジョアンヌ様が嫌がられるのも当然かと」

「ですわよね! ありえませんわ!」

「でも、スミッソン嬢は生徒会の役員ではないのですよね? 一年生が就任できるのは冬から。立候補者が発表されるのが来週で、来月頭に選挙があると伺いましたもの。なのに生徒会室にいりびたって、殿下のおっしゃる通りだとすればお仕事も手伝われているんですか?」

「それがね、クリスティン。夏前からずっといりびたっているそうなのよ。副会長のウィレミナ様がお仕事はさせないようにしているのだけれど、アーサー殿下たちのお茶入れ係として毎日いらっしゃるんですって」


 春に入学してすぐに上位クラスの伯爵令息と仲良くなり、続けてその伝手から辺境伯令息と距離を詰め、伯爵令息兄ともつながりをもって、そのつながりで夏前には生徒会の他の男子生徒たちともべったりの関係に?

 あまりの手際の良さにクリスティンは拍手をしたい気持ちになった。あと男子生徒たちはちょろすぎだ。特に第二王子殿下。色仕掛け対策の授業も王子教育の中で受けていたはずなのに、その体たらくでいいのか。お茶入れ係なんて生徒会には不要だろう。それは生徒会室付きの使用人の仕事ではないか。

 思っていた以上の現状に、クリスティンは深いため息をつきそうになり、ぐっと我慢する。


「そんなことになっていたのですね……。学園側、先生方はなにもおっしゃらないのですか?」

「生徒指導のジェイコブ先生が一度関係者から話を聞いてエマさんたちに注意をしましたのよ? でも当のエマさんは泣くだけで改善はされなかったの。取り巻きの筆頭がアーサー殿下なのもよろしくないわね。先生のご指導も聞き流してしまったようですわ」

「殿下がそのような態度だから、他も皆様も同様に? それでは学期末あたりにはお家の方へ連絡がいきますね」


 学園内は家格に関わらず先生の権力の方が大きいとされているが、王族の権力を笠に着た王子は舐めてかかっているのだろう。そして、王族の後押しを自分たちの安心感につなげてしまった少年たちもまた、教師を見くびってしまった。

 それは()()()()にもなるはずだ。

 指導だけで済めばいいけれど、と、クリスティンは自分たちの世界に浸る一団を見やって、やっぱり我慢しきれずにため息をついた。


  ◇


 来期の生徒会選挙は、卒業する三年生とこの春入学した一年生が入れ替わるような結果となった。つまりは、二年であった生徒会長、副会長二人、書記一人は続投で、会計二人と書記一人が一年生の新規役員である。


「また生徒会長を務めさせてもらうことになったアーサー・ホアン・メインリィアだ。新規役員である書記のエマ・スミッソンはみんな知っているな? では会計二人、自己紹介をよろしく」


 第一回の生徒会役員会で、アーサーはにこやかに新規役員の紹介をしていた。かわいがっているエマを会長権限で役員にし、あとは選挙で上位だった二人を迎える。本当なら鬱陶しい婚約者のウィレミナに副会長職を任せたくはなかったのだが、学校からの強い要望でそこは動かすことができなかった。


「領地経営科一年二組、ヘンリー・フォリオットです。前任者のジョージ先輩の推薦もあって会計になれました。一年間よろしくお願いいたします」

「淑女科一年三組、クリスティン・ハンバートです。編入したばかりですけれど、この学校のことをたくさん知ってよくしたいと思って会計に立候補しました。計算はとても得意です」


 ひょろりとした少年と、地味な印象の少女が新規役員だった。どちらも主張が強そうではないところがいい。二人の挨拶を受けたアーサーは、にこやかにうなずいた。

 この春から先輩方や婚約者から、部外者を役員室に留まらせるのはよろしくないと注意を受け続けていた身としては、御しやすそうな一年生が役員となったのは満足いくものだった。この二人をまるめこめば、生徒会の中でうるさいのは婚約者であるウィレミナ一人になる。愛する少女と楽しく学生生活を送れると、アーサーは上機嫌だった。


「役員の仕事は慣れているものが大半だ。気負いなく頑張ってくれればいい。さぁ、それではエミー、君も挨拶をしておくれ」

「はい、アーティ様!」


 第二王子から愛称を許されていることを隠しもせず、エマは立ち上がった。アーサーが今期の役員環境がいいと感じていたように、彼女もまた自分に有利な環境だと確信している。だからこそ第二王子の愛称を呼び、優越感に浸って公爵令嬢であるウィレミナ・スタインベルクを見やった。


(相変わらず愛想のない冷たい人ね。アーティがいるからまぁいいわ。あとはこの新しい会計の女が歯向かわないようにしておかないと。子爵令嬢(二組)だからと言ってわたしのことを下に見たら許さないんだから!)


 新しい会計の女──クリスティン・ハンバートは、栗色の髪に灰色の瞳といった、地味な子爵令嬢だった。男爵家の人間であるエマよりも上位貴族なのは気に入らないが、見たところ気も強くなさそうだし、なによりここで優位なのはまわりに愛されている自分だと、エマは思う。


「淑女科一年、エマですぅ。エミーって呼んでくださいねっ。ハリー君、クリスティンちゃん、同じ一年としてよろしくね!」


 自分的に一番かわいく見える笑顔で挨拶すると、アーサーを筆頭に仲良くしている男子生徒たちがこぞって拍手をしてくれて、エマは気分がよかった。気の弱そうな新規役員ヘンリーはもとより、女子生徒として警戒対象であるクリスティンも、にこにこと穏やかな笑顔で拍手をしている。たいていの女子生徒とは仲が悪いエマだったが、意外とクリスティンとはやっていけるかもしれないと希望を持った。ウィレミナ側(むこう)につくなら、その時にはアーサーたちにお願いして冷遇すればいい。

 笑顔の下にそんな計算を押し隠したエマの隣で、同じ書記のギルベルトが入れ替わりで立ち上がる。


「同じく書記のギルベルト・ザンディスです。領地経営科二年二組。エミーはずっと僕たちを助けてくれていたから、こうやって正式に迎えることができてうれしいよ」

「ギル様、わたしも嬉しいです!」


 隣でにこにことしているエマを見て、ギルベルトも破顔する。今日も後輩がかわいい。そう思っていることが透けて見えるようだった。


「次は副会長であるわたくしですわね。淑女科二年一組、ウィレミナ・スタインベルクですわ。去年に引き続き、副会長として恥ずかしくないように努めますので、皆様ご協力をよろしくお願いいたします」

「同じく副会長のロイド・ハッシュベルド。領地経営科二年だから、もしかすると教科棟でフォリオット君とは顔を合わせるかもしれないね。よろしく」


 ギルベルトが着席するのを待って、副会長二人が挨拶をする。ウィレミナの時に拍手をしたのは新規会計の二人のみだったが、その異様さには誰もなにも言わなかった。なんとなく流れた冷たい空気を押しのけるかのように、もう一人の副会長であるロイドが挨拶をする。


 そんな風にして生徒会は始まった。

 一見和気藹々と見えるその場で、クリスティンは笑顔を崩さないまま、噂の中心人物であるエマ・スミッソンと、彼女を取り巻く面々の関係を窺った。エマの天真爛漫な仮面を信じ切っている男子生徒たち。彼らに甘やかされ喋るばかりで仕事をしないエマ。その中で淡々と仕事を進めようと試みるウィレミナがひどく浮いて見える。敵地ともいえる環境で、けれども真摯に仕事に取り組むまじめな公爵令嬢に、クリスティンは感動した。が、顔には出さない。ちょこちょことだが、エマも自分を窺っていることを感じていたからだ。手駒として使えるかどうかと査定されているようだったので、軽く一線を引きつつも、敵対しない立場をとる。


(とはいっても、個別に公爵令嬢にはつなぎを取っておきたいな……。あれはそろそろ潰れるでしょ)


 王子妃の教育を長年受けているだけあり、ウィレミナ・スタインベルクの我慢強さはとてつもなかった。不快だろう諸々のことを、冷静な笑みでさばいていく。しかしながら彼女もまだ十七歳の少女なのだ。事前情報では真面目で礼儀正しく、かなり優秀で、おだやかで優しい性格とあった。婚約者にないがしろにされ、様々な場面で無視や冷遇を受け続けるのは、心身の健康によくない。事実、最近頭痛やらなにやらで養護室へ薬をもらいに行く姿が見かけられるという。


(正しくまじめに生きてる子には弱いんだよね、わたし)


 そうでなければこんな仕事やってられない、と、クリスティンは会議内容のメモを取りながら微笑んだ。


  ◇


 生徒会室やそれ以外でも絡んで来ようとするエマとその取り巻きをうまく流しつつ、クリスティンは一見おだやかな学生生活を送っていた。同じ会計のヘンリーはすでに取り巻きの一員だ。鮮やかな取り込まれっぷりに感嘆を禁じ得ない。プロの手際は美しい。さすがである。

 エマとうまいことやりつつ、ジョアンヌたち関係者から情報を取り込みつつ、一般生徒たちとも仲良くしつつやっていたクリスティンが、人の目を避けてようやくウィレミナ・スタインベルクに連絡が取れたのは、冬休暇に入る直前だった。


 もうそのころには、輝くばかりに美しかったウィレミナも、心労でやつれていた。所属学科の違う取り巻きたちや、学年が違うエマとは授業中に絡むことはないものの、ウィレミナを追い込みたい婚約者(アーサー)のたくらみもあり、様々な噂を流されて、学園全体から彼女は腫物のように遠巻きにされていた。

 公爵令嬢が春からずっとこんな風に逆境にさらされていたのだとすると、むしろよく保ったほうだと褒めたくなる。淑女科二年の教室では仲の良い友達がそばにいてくれたおかげだろうか。ウィレミナと仲の良いオーレリアも、生徒会役員(ロイド)の婚約者だったりするので他人事ではないのもあるだろう。


「すみません、副会長。この書類について確認したいことがありまして……お休みになっているところに悪いんですが」


 人目のない養護室の病室で、クリスティンは休んでいたウィレミナに声を掛けた。ジョアンヌ経由でオーレリアからクリスティンの打診は受け取っていたウィレミナは、上体を起こして差し出された会計の予算書を受け取りつつ、やわらかに微笑んだ。


「大丈夫よ、クリスティンさん。お話はうかがっているの。この件は早く片付けてしまわないと困りますものね」

「総会資料に決算書類を載せるので、書記のお二人に渡す前にきちんとミスがないか確認したくて……」


 予算書に挟まれた書類に目を通しつつ、ウィレミナは目を潤ませた。瞬きひとつで落涙(それ)を堪えた彼女は、ほっそりとした指で口元を隠す。


「ええ──ええ、これで間違いないですわ。大丈夫、自信をお持ちになって。正確な数字が並んでいるのを見て、わたくし安心してしまいました」

「それはよかった。副会長を安心させられてわたくしもホッとしました。それではこの手はずで参りますね」

「それにしても──こんなに早く結果を出そうとなさるなんて、わたくしの読みも甘かったようです。しかも他の人の──」

「副会長、もうお休みください。体調がお悪いのでしょう? 役員の皆様には本日欠席の旨は伝えておきますので」


 安心したのか、ほろりとこぼれたウィレミナのつぶやきに、クリスティンは言葉をかぶせる。大丈夫だとは思うが、誰かに聞かれていては困る。計画は漏れてはいけないのだ。

 その気持ちは伝わったのか、やわらかな微笑みのままウィレミナは頷いて再び横になった。


「すべてお任せくださいね」


  ◇


 冬休暇が終わり、三年生の卒業準備や春の入学式の準備で教師も生徒会も忙しくなってきた頃。さすがに仕事をさぼりがちのエマと取り巻きたちも仕事をするようになっていた。まぁ、主にアーサーとエマを除いてではあるが。


「ねぇハリーくぅん、これお願いしていーい?」

「これ先生から書記さんへの指示ですけど、僕がやってギルベルト先輩怒りませんか?」


 二年生集団が学年事情でまとめて遅れると連絡があったため、今生徒会室にいるのは一年役員であるエマとヘンリー、クリスティンだけである。

 ヘンリーとクリスティンは春の予算編成のために実費の見直しをしつつ、生徒会主催で行う卒業式後の謝恩パーティーの準備をしていたが、そこに先生から呼ばれて部屋を出ていたエマが、書類片手にやってきたのだ。なお、彼女は呼ばれるまで化粧直しをしたりお茶を飲んだりとのんびりくつろいでいた。


「議事録を記録珠だけにしようってギルと決めたんだけど、先生がそれじゃダメだっていうからぁ」

「記録珠は高価だし、会議の映像を丸っと見ないと内容把握できないから、時間のない先生たちは嫌なのかもですね」

「便利だし時間短縮できるからいいのにね。先生たち頭かったーい! ギルも書類作成で忙しいし、このままにしちゃおっかなぁ~」


 書記の仕事は全部ペアのギルベルトにまかせっきりのエマだったが、さすがにギルベルトの負担を考えたのかなんなのか、会議資料として残す必要のある議事録を、すべて映像と音声を記録できる記録珠ですませていた。便利ではあるが、非常に高価な品である記録珠を議事録代わりに使えるのは、ひとえにアーサーが甘やかしているからだった。


「これ、この前の総会の記録ですか?」

「そうなの。だから記録珠みっつも使っちゃったぁ」


 隣で聞いていてぞっとするが、そこを突っ込んではいけないとクリスティンは手元の書類の計算を確かめる。冷静に。静かに深呼吸をする。


(いやほんとによくこの空間に長いこと耐えたなウィレミナ様! だいたい記録珠ひとつで平民の約一年分の生活費がかかるんだぞ。スミッソン男爵家で出せるのかあぁん⁉)


 一代男爵ではないが、エマの実家であるスミッソン男爵家は領地をもたない宮廷貴族である。領地経営の負担はないが、その代わり宮廷内で仕事をして年金をもらって生活するため、気候や災害に左右されないものの、その分俸禄は高くはない。

 だからこそ高位貴族の夫人か愛人を目指しているのだろうが、あまりにも考えなしすぎてめまいがする。クリスティンはちらりと、手にした書類を職務の違うヘンリーへ押し付けようとしているエマを見た。そろそろ助け舟を出してあげるとしよう。後でその貸しは取り立てるけれど。


「掌サイズとはいえ、記録珠は箱に入れて管理するから場所も取りますしね。書記さんのお仕事が減るのは素敵ですけど、色々と現実的ではないと先生は思われたのかもしれません。エマ様、実はわたくし総会の議事進行のメモを取っておりましたの。個人的にあとから見返そうと思いまして。よろしければこちらお使いになる?」

「えー、クリスティンちゃんシゴデキ! ありがとう~!」


 書記なら自分でやっておけよ、と、調子よく人に仕事を擦り付ける人が嫌いなクリスティンは思ったが、表には出さない。一応ね、こちらもプロなので。


「エマ様のお手伝いができて嬉しいですわ」


 一見にこやかな空間が形成されたところに、四人の二年生がやってきた。


「アーティ、ロイディ、ギル、お疲れ様!」

「みなさんお疲れ様です」

「お疲れ様でした。会長、副会長、謝恩パーティーの議事進行と準備一覧が整いましたので、手順確認をお願いします」


 上から順にエマ、ヘンリー、クリスティンである。議事進行や一覧の作成は会計の仕事じゃないと思いつつ、クリスティンは副会長であるウィレミナとロイドに書類を渡しに行った。会長であるアーサーが確認するのは最後だ。まぁ、目を通しもしないでサインするのが目に見えるが、無視するわけにもいかない。


「クリスティンさん、ありがとう。これで大丈夫よ」

「職務外なのに悪いね。あ、ついでにパーティーで使う用の記録珠を預かっていてもらってもいいかな?  当日僕ら副会長はばたばたしそうだから」

「記録珠!」


 箱に入った記録珠を渡してくるロイドに、頼まれたわけでもないエマが口を挟んでくる。ちょうど記録珠の話をしていたためだろう。


「ほらぁ~! ロイディも記録珠使ってるんだもん。書記が使ってもいいんじゃない?」

「たしかにね」

「謝恩パーティを残しておくのは今後の参考資料になりますし、来年度予算に組み込んでもいいかもしれませんね」


 にぎやかな役員たちの会話を聞きつつ、準備は整ったかな、とクリスティンは満足げに頷いた。


  ◇


 そして卒業式当日。三年生たちが卒業の式典を行っている間、クリスティンたち生徒会役員たちは、学園の使用人と共に謝恩パーティーの準備にいそしんでいた。エマは最初だけ手伝うと、パーティーの身支度があるとアーサーと共に支度用の部屋へ行ってしまったが。


「エマさんが戻られたら、わたくしたちも準備に行きましょうね」

「そうですね」


 ウィレミナの誘いにクリスティンは頷いた。二人とも現在は制服姿だが、主催者としてパーティーに出席するため、役員たちも正装する必要があるのだ。


「私たちも支度しに行くか?」

「殿下が戻られてからだろう、ギルベルト」

「ヘンリー君に任せても……」

「謝恩パーティーが初めての一年生だけに任せるのは、先輩としてよろしくないと思うけど?」


 エマと二人きりで姿を消したアーサーが気になるのか、早く支度室へ行きたいとギルベルトは主張しだすが、まだ準備は終わっていないとロイドが押しとどめる。たしかに二人がいなくなってから、身支度にかかる以上の時間が経っているのでギルベルトの気持ちもわからないことはないが、今行ってもらっては困るのだ。


「ギルベルト先輩、僕はじめてなので、先輩たちに色々教わりたいんです……すみません」

「あ、そ、そうだよな。すまないね、ヘンリー君」


 線の細いヘンリーが頼りなさげな表情を浮かべたせいか、ギルベルトが頭を搔く。悪い人ではないのだが、なにぶん恋に目がくらんでいる伯爵令息は面倒だなと、クリスティンは作業をしながらそう思った。

 まぁ、クリスティンが知る男性も、恋人に向ける視線は他とは違っていたし、私的な部分で恋人が異性と関わるのは非常に嫌がったので、その気持ちはわかるけれど。


「ただいま戻りましたぁ!」


 明らかに化粧とは関係なく頬を上気させたエマと、彼女の腰を抱くようにしてエスコートしているアーサーが戻ってきたので、残りの四人は支度に向かおうとしたが、帰ってきたエマを取り囲むギルベルトとロイドは、自分の支度は放り投げたまま、着飾ったエマを褒めたたえ始めた。


「エミー、とても綺麗だ! イヤリングもよく似合っている!」

「ヘンリー君、先に支度室へ行っててもらえるかな? ああエマ嬢、贈ったネックレスをつけてくれたんだね、嬉しいよ」


 どうやら装飾品は先輩たちからの贈り物のようだった。ドレスは王子殿下から贈られたものであることを、クリスティンは知っている。また、ウィレミナには贈られていないことも。


「クリスティンさん、行きましょう。殿方と違ってわたくしたちの準備には時間がかかるわ。先輩方にご迷惑をおかけするわけにはいきません」


 婚約者には興味がないとでもいうように、ウィレミナはクリスティンを伴うとさっさと支度室へ向かった。

 さぁ、仕上げをしなくては。パーティーに遅れるわけにはいかないのだ。


  ◇


 美しく着飾った卒業生たちがホールで歓談をする中、パーティーの始まりを告げるためにアーサーが一段高く設えられた壇上へ上がる。

 壁際でその姿を眺めながら、クリスティンは笑みを浮かべた。


 考えなしの王子の計画は事前に把握してある。よりによって先輩の卒業記念である謝恩パーティーを台無しにしようとしているとは、計画を知るまで思いもしなかったクリスティンである。

 これまでの言動的に、冷静に学園外で関係者を集めて行うとは思わなかった。あと一年我慢して自分の卒業式の時にやらかすかと思っていたのだが、対象者は思っていた以上に短気であり、また短絡的でもあった。自分以外が被る迷惑を考えられない王族はいらんな、と、不敬罪になりそうなことを思う。


「先輩方、ご卒業おめでとうございます。このおめでたい日に、私もひとつおめでたい話をしたいと思います」


 全然おめでたくないし、迷惑だ。当初予定していた挨拶文とはまったく異なることを口にしたアーサーに、クリスティンは深呼吸をする。隣にいるウィレミナの身体がこわばるのがわかった。彼女もまた、今日の計画を知っている。


(協力者はたくさんいるから大丈夫ですよ、ウィレミナ様)


 ちらりと対岸を見ると、渋面のロイドとぼんやりしたギルベルトの横で、ヘンリーが目配せをしたのがわかった。


「──愛を知らない僕に愛を教えてくれた。それがエマ・スミッソンです。しかし彼女を快く思わなかった我が婚約者、ウィレミナ・スタインベルクはあろうことか彼女に嫌がらせをし続けた! 淑女科でも、生徒会室でもです! おいで、エミー。さぁ、僕の隣に」


 送辞でもなんでもない私的な、かつ人前で話すようなことではない婚約の話を始めた第二王子に、卒業生やその家族たちはざわついているが、当の本人は恋人の男爵令嬢を壇上に呼び寄せると、酔ったようにありもしない断罪を始めた。

 曰く、持ち物を破損された。水を掛けられた。階段から落とされそうになった。陰口をたたかれた。無視された。どれもこれも公爵令嬢が男爵令嬢に報復としてやるにはお粗末な、物語でよく見たような罪状である。


「ウィレミナ! よって貴様との婚約はこの場をもって破棄とする! そして私はここにいるエマを新たな婚約者として……」

「貴族院調査室です! その婚約破棄、ちょっと待っていただきます!!」


 第二王子アーサーの傲慢な宣言にかぶせるようにして、クリスティンの声がホールに響いた。一瞬の沈黙と共に、かつんというヒールの音が続く。その硬質な音がしたほうへ、横にいるエマの腰に手をまわしたまま、アーサーはこわばった顔を向けた。


「王族でありながら、捏造による勝手な断罪。公的な行事である卒業パーティーを私有化しての婚約破棄。こちら貴族院法のうち第三条と第八条、ならびに婚姻法第六条に抵触しております。裁判法第二条をもって、これより本件は第一級調査官ベアトリス・アスキスの名の下、貴族院の管理下に置かせていただきます」


 クリスティン──いや、貴族院調査官ベアトリスは、身にまとったドレスの胸元から身分証のペンダントを引っ張り出すと、その身にかけていた変身の魔術を解いた。彼女の容貌が、一転して地味な少女のものから華やかな妙齢の女性のものへと変化する。


「ベアトリス先生……」


 王族として貴族院法を入学前から学ばされていたアーサーは、見覚えのあるその美貌にこわばった顔を青ざめさせた。彼女は貴族院を取りまとめる法服貴族ではない──貴族院をまとめる法服貴族は、法律家として長年経験を積まなければならないため、中年男性しかいない──が、その下で働く調査官の中では若く美しい女性として目立った存在であった。子ども相手にとっつきやすい相手として、何度かアーサーの授業を受け持ったこともあったのだ。


「テストの点数はよくても、きちんと理解はしておられなかったようですね、アーサー殿下」


 かつての教え子にかすれた声で名を呼ばれたベアトリスは、潜入捜査であらわになった諸々を脳裏に浮かべ、温度のない微笑を浮かべた。


「さて、先ほどアーサー殿下が述べられた、ウィレミナ様の罪状ですが、すべて冤罪であることをわたしたち貴族院調査室は把握しております。もちろん、証拠も取り揃えております」


 そう言うと、ベアトリスはスカートの隠しポケットから記録珠をひとつ出して見せた。ベアトリスの言葉を合図に、ロイドとヘンリーも記録珠や書類を手に前へ出る。


「アーサー・ホアン・メインリィア殿下。ウィレミナ・スタインベルク嬢への冤罪、王命に背く勝手な婚約破棄、結婚相手として法に認められていない家格の令嬢と勝手に婚約を結ぼうとした罪で、貴族院への召喚を命じます。こちらは貴族院の承諾と、国王陛下の承諾を経た正式な召喚です」


 書類を手にしたヘンリーが、アーサーに告げる。


「あ、申し遅れました。同じく第一級調査官のナサニエル・アスキスです。さぁ、殿下の御身を王宮へ! 卒業生の皆様、お騒がせして申し訳ありません。出し物は終わりましたので、軽食をつまみつつご友人や先生方とご歓談をどうぞ。ご卒業おめでとうございます!」


 一礼すると、ヘンリー──もとい、ナサニエルもまた、変化魔法を解いて襟元から身分証を取り出す。背の高さは変わらないものの、華奢で頼りなかったその姿は、一瞬にして体格のいい冷徹な容貌の成年男性と変わる。


「な、なにをする!」

「やだぁ!」


 ナサニエルの指示に従って、ひそかにホールに配置されていた貴族院所属の騎士団が、アーサーとエマの身柄を拘束して速やかに姿を消した。


「クリスティンさん──いえ、ベアトリス様とおっしゃるのね」


 騒ぎを起こした二人が消えたものの、あまりの衝撃にざわついたままのホールに、ぽつんとウィレミナの声が落ちる。ベアトリスは笑顔を浮かべて悲劇の公爵令嬢の方を向いた。


「ええ、ベアトリス・アスキスです。ウィレミナ様とは幼少期にお会いしたことがありますね。なんて言うとわたしの年齢がバレてしまいますが。ああ、そんな顔はなさらないで。今までおつらかったでしょう。証拠を引き出すために、このバカげた劇を殿下の計画のまま遂行させてしまってごめんなさいね。正式な婚約解消は別途王家と公爵家で行うそうですが、一応証人としてウィレミナ様も貴族院にご足労いただくこととなりますので、ご了承ください」

「ええ、ええ、わかっております。大丈夫です、わたくしは大丈夫ですから──」


 両手を胸に引き寄せ、言葉を詰まらせながら頷くウィレミナの姿に、そっとロイドが寄り添う。


「ロイド卿もご協力感謝いたします」

「オーレリアに頼まれたからね。だいぶ疲れたけれど」


 ナサニエルの謝辞に、ロイドは片手をあげて笑って見せた。取り巻きの中に入り込んだ二人の心労は、その外にいたベアトリスや、攻撃対象とされていたウィレミナとはまた違ったものだったが、疲れたのには変わりはなかった。


「そんな……エミー、どういうことだ……殿下がなされたことに、エミーは関係ないじゃないか」


 ひとり状況に取り残されているギルベルトが、呻きながら頽れた。初恋に目を曇らされた少年は、現実を受け入れがたいようだった。

 床をたたきながらわめく彼も、騎士団によってホールから退場させられていく。


「さて、私たちも退室しようか。ここにいては皆様の迷惑になるしね」

「いなくなっても、かけてしまった迷惑は消えないわよ。本当に申し訳ないったら」


 人生で一度しかない卒業パーティーを台無しにされた三年生には申し訳なさすぎると、ベアトリスは額に手をやった。どうにかして内々にすませたかったが、王子の暴走は止められなかったのだ。


「忘れられない卒業式になってしまっただろうね。しばらく語り草に困らない」

「そういう問題じゃないのよ、ネイト」


 次の仕事は詰まっている。この件の裁判の準備はすませているが、彼らがおとなしく受け入れるとも思えなかった。学園内で取った証言や、エマが取り巻き一人一人と親密にしている映像をもとに、罪を認めさせる必要がある。

 謝恩パーティーの支度室でのあれこれが写された記録珠を手にして、ベアトリスはため息をついた。もう在校生は春休暇に入ってしまっているので、マリアンヌたち協力者たちへは手紙を書こう。


(マリアンヌ様とオーレリア様、そしてジェイコブ先生が貴族院に通報してくださったから間に合ったんだもの。ジョアンヌ様は婚約解消されるなら、調査員に勧誘してもいいわね)


 仕事は待ってくれない。意外と貴族院は忙しいのだ。


「帰ろうか、ビー」


 珍しく潜入先が被った夫が、にこやかに手を差し出す。エスコートを受けながら、ベアトリスは微笑んだ。


「ええ。ではお先に失礼いたしますわね、皆様」


 断罪した自分たちが残るのは一番ふさわしくないと、教師たちとウィレミナ、ロイドに後を託してホールを出る。

 室外へ出ると、人目がないためかナサニエルが頬にキスをしてきた。嫉妬深い夫がその感情を隠しきったのは仕事中だったからだ。それがひと段落したからか、家の外なのに親密さを求めてくる。普段なら躱すベアトリスだったが、今日は好きなようにさせることにした。


「逃げないの、珍しいね」

「ネイトは、目の前でかわいい女の子の取り巻き化していく夫を、黙って眺めていたわたしを労わるべきかと思って」


 ご褒美が必要でしょ、わたしたちにも。そう告げて笑うと、嬉しそうに夫も笑ったのだった。

この後、裁判で完全有罪判決を食らって、殿下は離宮で蟄居。エマも学園を退学して修道院へ行かされます。エマの取り巻きたちも婚約破棄されたり(ギルベルトとキーン)学園を辞めさせられて領地に戻されたり(キーン)と、罰を食らいます。ギルベルト兄弟は学園に残りますが、針の筵です。


生徒会役員が四人も減ってしまって春から次の選挙まで大丈夫なのか心配ですが、副会長二人が追加メンバーを募集してどうにか運営していったので大丈夫でしょう。

ウィレミナ様は新しい婚約を王家が調えたので、幸せになります。お疲れ様!

ロイド先輩は婚約者とラブラブなまま卒業して結婚するでしょう。


また、生徒指導のジェイコブ先生は貴族院調査官出身のおじいちゃん先生で、ひそかに学園の不備をみまもっていた設定でした。学園にはほかにも貴族院所属の先生がいます。

学生たちの自治を見守りつつも、しゃれにならないトラブルになった際調査がしやすいように、全員身元は伏せられていますが、それぞれ貴族院への連絡手段を持っています。


今回の出来事は、ジェイコブ先生、オーレリア様、マリアンヌ様の三人から通報があったので、潜入捜査ののち貴族院(裁判所)召喚となりました。詳しい断罪とざまぁはそちらで行われた模様です。

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婚約破棄系って王子や高位貴族が男爵令嬢のハーレム構成員に成り下がってるのを把握してない・卒業までの遊びで放置する駄目な大人が多いから、まともな大人ばかりで安心した。 婚約者の令嬢が断罪回避で必死にどう…
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