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真の勇者レベル10(4)

 俺たちはブレイブ・ローダーを近くの山の中に隠して、サンダーに乗って次の町に向かっていた。


「まずは、この大事な大事な現金一千万円也を、銀行に預けなくてはならないっす」

「そうだね。ええーっと、異世界信用金庫ならどこの町にでもあるから、すぐ見つかると思うよ」

 ミドリちゃんは、以前に目的の町に行ったことがあるというから、心強い。


 町に着くと、簡単な検問があった。

 旅の者だと言うと、簡単なチェックだけで通してくれた。

 俺が持ってた木刀も、刃物じゃないので、スルーされた。


「町内のネットワークサービスで、町の詳細地図を手に入れたでござる。魔法師殿の言う、銀行の位置も分かったでござる」

 ね、ネットワークって……。ここって、本当に異世界なのかなぁ。異世界の近代科学文明、発達しすぎだろう。その上、魔法とか使えるって……、何それ。ファンタジー感なさすぎじゃないか?

 でも、まぁ、便利なんだから許すか。

「うーむ、そうっすか。……なら、まずは銀行に向かって欲しいっす、サンダー」

 俺は、サンダーにそう頼むと、今は自動車に化けている勇者ロボは、何食わぬ顔でゲートをくぐって町の中に入った。


 町の大通りを通って銀行に着くと、俺たちは口座を作って現金を預ける手続きを取ることにした。

 俺は、手元に五十万円くらいを残して、あとの九百五十万円を普通預金で預けることにした。

 銀行の窓口でそう頼むと、店内がざわめいた。そりゃそうだろう。現金で九百五十万円なんて、普通は持ち歩かないもんな。って、それ以前に手に入れること自体が難しい。

 店員は、ちょっと顔を引きつらせて、

「しばらくお待ちください」

 と言って、中へ引っ込んだ。きっと、盗賊や偽札の類を警戒したのだろう。マネロンに使われたとあっては、信用問題になる。

 しばらくすると、俺たちは銀行の二階の応接室へ通された。

「お客様、初めまして。当信用金庫の支店長の、マツザキです。お見知り置きを」

「は、はぁ……。俺っちは、しがない旅の『勇者』です。こっちに来て、まだ一週間位っす。昨日、たまたまお宝を手に入れたので、この信用金庫に預けることにしたんす。何せ、現金は盗賊や詐欺師に遭ったら取られちゃいますからね」

 俺は適当にありそうな事をでっち上げて説明した。とは言うものの、殆どは本当のことなんだけれど。

「お客様の仰る通りでございます。ところで、当行をお選びになった理由は、如何様(いかよう)なことでございましょう」

 なんだか、こちらを探っているような感じ。ここは、正直に応えるか。

「いやぁ、仲間の一人がここの信用金庫の口座を持っていて、奨められたからっす」

 俺がそう言うと、ミドリちゃんが銀行のキャッシュカードを見せた。

「左様でございますか。いつも当行をご利用いただき、ありがとうござします。お客様のお持ちになっていた金額が金額ですので、まさかとは思いますが、偽札や事件に関係したもので無いかをチェックしていたのです。調査の結果、事件には該当するものはなく、お札もちゃんとした本物でした。要らぬ嫌疑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした」

「いやぁ、そりゃ金額が金額だから、疑われてもしようがないっすよぉ。アハハハハ」

 俺は、『あくまで異世界に来たての人の良い素人勇者』のふりをしていた。

 おかげで、疑いは晴れたようだ。だけど『神様にもらった』なんて、真っ正直に言える訳もない。これ以上内情を探られないように、穏便に事を進めないとな。

「ありがとうございます。お客様は『旅行者』と伺っておりますが、間違いございませんか?」

「その通りっす」

「それでは住所不定ということになりますので、申し訳ございませんが、掌紋とDNA登録をさせていただかなくてはなりませんが……。よろしいでしょうか?」

 え? 住所不定でも口座を作ってくれるんだ。異世界の信用情報って、どうなってんの?

 でも、背に腹は代えられない。DNA情報の登録くらい、安いもんだ。

 俺は、言われるままに承諾した。

「いいっすよ。それから、出来ればカードを今すぐ作ってもらいたいっすが……。できますか?」

「クレジット機能付きの、ICチップ内蔵のカードをすぐに作らせていただきます。では、この機械に手の平をお乗せ下さい」

 そう言って支店長は、タブレットPCのような機械を取り出すと、俺の目の前に置いた。

「これでいいっすか?」

 俺は画面に右手を押し付けた。しばらくして、ピッ、という音が鳴った。情報の採取が完了したらしい。

「ありがとうございます。では、お手続きをいたしますので、しばらくお待ちください。何か飲み物をお持ちしましょう。どのようなものをご希望で?」

「では、アイスティー二つと、オレンジジュースを一つお願いします」

 俺は、巫女ちゃんがオレンジジュースを気に入っていたのを思い出していた。

「承りました。では、しばらくお待ちください」

 そう言って、信用金庫の支店長は下がった。


「住所不定でも、受け付けてくれるんすね」

「ああ、ここは『異世界』だからね。それに、皆一度は『勇者』というものを経験した『元勇者』だから、その大変さはよく分かっているんだと思うよ。ボクが口座を作る時も親切だったし。さすがに、こんな高額じゃなかったから、応接室には通されなかったけどね」

 ミドリちゃんに説明してもらって、俺は妙に納得してしまった。

 しばらくするとノックがして、感じのいい女性店員が飲み物を運んできてくれた。

「あ、これは勇者様と飲んだことがあります。おいしいですぅ」

 よし、思った通りだ。巫女ちゃんに、オレンジジュースを頼んでおいてよかった。


 それから三十分くらい待ったろうか。再びコンコンとノックがして、支店長が戻ってきた。

「お手続きが終わりました。あとは、この書類とカードの裏面に署名をなさってください。あと、暗証番号を十桁の数字でこの機械にご入力ください」

「分かったっす。まずは署名をして、暗証番号は……これこれこれと。これでいいっすか?」

「はい、これでお手続きは全て完了しました。こちらがお通帳で、こちらが当行のキャッシュカードになります。キャッシュカードはクレジット機能付きですので、都を含めて辺境地区の全ての町村の契約店舗でお使いになれます。暗証番号は、くれぐれも大切に管理していただくようお願いします。今後とも当行──異世界信用金庫をご贔屓にしてくださると幸いです」

「ありがとうっす」

 こうして、俺は銀行口座とクレジットカードを手にしたのだった。


 俺たちが銀行の駐車場に戻ると、サンダーは空調を効かせて待っていてくれた。

「さぁて次は、ガススタとかを探してサンダーを洗車してもらわないとな」

 乗り込んだ俺がそう言うと、すかさずサンダーの声が返って来た。

「かたじけのうござる。拙者のナビによると、この道をまっすぐ行ったところに、ガソリンスタンドがあるようでござる」

「じゃぁ、そこにしようか」


 俺たちは、ガススタへ行って店員に最上級のワックス洗車を頼むと、その時間を利用して昼食を摂ることにした。

「何にするっすかねぇ。肉は昨日飽きるほど食ったっすから、……なんかあっさりしたものが欲しいっすね。蕎麦とか素麺とか……、刺し身もいいっすよね」

 俺が昼食のジャンルを考えていた時、すぐ隣からこんな声があがった。

「あ、あれは……。勇者様、あれは何でしょう?」

 巫女ちゃんが何かを見つけて、それを指差しているようだ。その先に見えていたのはと言うと、

「ああ、巫女くん。あればハンバーガーショップだよ」

 とミドリちゃんが説明する通り、そこに見えたのはフランチャイズのファストフード店だった。

「巫女くんは、まだ行ったことが無いのかい?」

 重ねてミトリちゃんが訊くと、

「はい、前の町ではパスタとピザというものを勇者様にごちそうになりました」

 と、巫女ちゃんも応える。


(そっかぁ。あの時はファミレスに行ったんだっけ。しかし、異世界にも進出していたとは……。マクド恐るべし)


 俺は、久々に見つけたファストフード店に、興味が移ってしまった。

「ん~、それじゃぁハンバーガーにするかぁ。現金を五十万も持ってるのに、なんかチープだけど……。まぁいっか」

「そうだね。ボクもハンバーガーは久し振りだよ」

 と言う事で、俺たちは若者らしく安上がりなハンバーガーでお昼にすることにした。

 なんだか、ますます『異世界ファンタジー』から遠ざかっているような気がしたが、『異世界』なんだから何でもありなんだろう。とうとう俺は、細かい設定を気にしなくなった。既に感覚が麻痺していたのかも知れない。


 店に入ると俺たちは行列の後ろに並んだ。順番を待って自分達の番が回ってきたところで注文と支払いを済ませて番号札を受け取ると、店内の空いているテーブルを見つけて陣取った。

 程なく、注文した品物がアルバイトと思われる女性店員に運ばれてきた。馴染みのジャンクフードの紙包みからは、懐かしい匂いがほのかに漂ってきていた。

「勇者様ぁ、これはどうやって食べるのですか?」

 巫女ちゃんは、初めて見るハンバーガーの包みを前にして、困惑していた。

「巫女くん、これは、この包み紙を開いて手に持って、こうかぶりつくんだよ」

「そうっす。美味いっすよ」

 勝手を知り尽くしている俺とミドリちゃんは、さっさと包を手に取るとハンバーガーにかぶりついていた。

 それを見様見真似で、巫女ちゃんもハンバーガーにチャレンジした。

「え~と、こうして、こうですか。……ハグ。ングング。……あ、なんか美味しいかも」

「折角異世界に来たのに、異世界人にハンバーガーの食べ方を教えるなんて、ちょっと奇妙っすね」

「あはは、そうだね勇者くん。おや、勇者くん、その本は?」

 ミドリちゃんが、俺のリュックを見て尋ねてきた。それは、俺がこの異世界に連れてこられて間もない頃に本屋で買い込んだ『異世界 魔法大全』だった。魔法師のミドリちゃんが興味を示すのも道理だ。

「ああ、これね。これは、最初の町で本屋に寄った時に買い込んでおいたヤツっす。まだ、全然見てないっすがね」

 彼女は少し真剣な顔をすると、俺にこう願い出た。

「勇者くん。良かったらソレ、貸してくれないかな。ボクももっといろんな魔法を覚えて、勇者くんたちの手助けをしたいんだ」

 こんなどこの本屋ででも買えるような物に、価値なんかあるのかな? それに、

「ミドリちゃんは、これまで充分に俺たちに貢献してきたっす」

「そうです、魔法師様。魔法師様のお力で、随分と助けられてきました」

 俺と巫女ちゃんは、揃って同じようなことを言った。しかし、ミドリちゃんは譲らなかった。

「いや、ボクがそうしたいんだよ。敵は、これからも強力な魔獣(モンスター)を送り込んでくるだろう。今のボクの魔法じゃ、機械魔獣にさえ通用しない。それで、皆が怪我をしたり死ぬようなことがあったりするのには、もう耐えられないんだ」

 そう言って彼女は顔を曇らせた。

 ミドリちゃんは、まだ勇者だった時に、自分の師匠を目の前で殺された記憶がある。それ以上に、その師匠がゾンビ・ヘッドになって敵として蘇ってきたのは、精神的にショックが大きかったんだろう。前以上に、仲間を守るという意識が強くなっているのかも知れない。

「分かったっす。じゃあ、これはミドリちゃんに預けるっす。でも、無理をして自分を追い詰めるようなことは、しちゃいけないっすよ」

 俺はそう念を押してから、分厚い本をテーブル越しに手渡した。

「ありがとう。やっぱり勇者くんは優しいね」

 ミドリちゃんは俺から魔法大全を受け取ると、少し赤くなって俯いた。

 俺も、なんだかちょっと恥ずかしくなった。それで、照れ隠しのつもりで、

「そんなことないっすよ。俺は今でも、初心者のへっぽこ勇者っす」

 と言った。すると、巫女ちゃんが半ば立ち上がりながら、強くこう言ったのである。

「そんなことはありませんよ、勇者様。勇者様は、アマテラス様に見込まれた『真の勇者』です。そんなことを言わずに、堂々と胸を張って下さい」

 俯いていたミドリちゃんも、顔を上げた。

「巫女くんの言う通りだよ。頼りにしてるんだからね、ボクらの勇者くん」

 美少女二人にそう言われて、俺はますます照れてしまったのだった。



 ハンバーガーを食べ終わって、もと来た道をスタンドまで戻ると、ちょうどサンダーの洗車が終わったところだった。

 ワックスで磨いてもらってピッカピカである。

「サンダー、気持ちよかったすか」

「勇者殿、もう最高でござる。本当にかたじけない」

 新品のようになった勇者ロボ──今は自動車の姿に変形しているが──は、ご機嫌だった。

「いいっすよ。サンダーは俺たちの攻守の(かなめ)なんすから。それに、戦いの時以外にも、この異世界の町から町を乗っけてもらってるんだし。非番の時くらいは、ゆっくりして欲しいっすから」

「そう言っていただけて、光栄でござる。さて、次はどこへ行くでござるか?」

 その声にウキウキ気分を隠せない様子のサンダーが、俺に訊いた。

 俺の考えとしては、まず、ちゃんとした駐車場のあるホテルにチェックインする。そのあと、新しい鎧や服なんかが必要だから、買い物をしようかなと思っていた。なぁに、金ならいっぱい持っている。余程の贅沢三昧でもしなければ、手持ちの現金だけでも余裕でお釣りがくるに違いない。

 それを皆に話すと、

「そうだね。やっぱり、取り敢えずは今夜の宿を決めることだろうね。買い物をするなら、野営用の荷物は預けておきたいよね。余計なものを持ってうろうろすると、体力を消耗するし、スリなんかもいるから」

「わたくしも、勇者様や魔法師様のご意見に賛成しますわぁ」

 二人の同意が得られたので、まずはホテルに行くことになった。

「でも、ちゃんとしたホテルは、この町に一軒でござるよ」

 俺たちの話を聞いていて、例のご町内のネットワークででも調べたのだろう。ホテルについてを、サンダーが教えてくれた。

「じゃぁ、その一軒しかないっていうホテルに行ってみようか」

 そこで、俺たちはサンダーに乗せてもらって、件のホテルへ直行した。

 メインの大通りを抜けると、目的の建物が見えてきた。パーキングの看板の通りに付属の駐車場に入ると、俺たちはそこで降ろしてもらった。ただし、サンダーには「ここで待機しておくように」と丁寧に『お願い』をした。地下や屋根付きの駐車場ではなく露天なので、夜露が防げないのは申し訳ないが、無人の自動車に勝手にウロウロされたらたまらない。

 サンダーに重々言い聞かせてから、三人でロビーに入るとフロントにチェックインを頼んだ。ところが、予約をしていなかったものだから、空き部屋が一つしか取れないと言う。

「誠に申し訳ございません。ただいま空いているのがダブルのお部屋一つなのです」

 済まなさそうな顔をしたホテルマンの言葉を聞いて、俺は二人に相談することにした。

「……だって。巫女ちゃん、ミドリちゃん。どうする?」

 嫌な予感しかしなかったが、念のためだ。二人に訊いて、予想通りの答えじゃないことを期待するしかない。

「ダブル……ってことは、大きなダブルベッドが一つってことだよね。ボクは別に問題無いと思うよ」

 いや、大問題だろ、それ。

「わたくしも、問題ないと思いますわ。昨夜とおんなじですもの。ねっ、勇者様」

 おんなじって……。また、眠れない夜がやってくるのか……。

 ううぅぅ、既成事実 (←ホントはやってない)ってのは、こういうところでボディブローのように効いてくるのか。

 まぁ、しかたがない。物理的に無いものは無いのだから。無理して野宿もしたくはないし。問題だらけなのは分かっているが、その部屋にするしかないよな。

「分かりました、お客様。では、これがお部屋のカードキーです。朝食には、このチケットをお使い下さい。朝の六時半から十時の間に、当ホテルの二階のレストランで使用できます。お出かけになる時、特に貴重品があるようでしたら、お部屋の金庫をご利用下さい。本日は、当ホテルをご利用いただき、ありがとうございます」


 俺はフロントで部屋のカードキーを受け取ると、三人で部屋へ向かった。


 カードに印刷された番号から泊まる部屋を探し当てると、早速中に入ってみた。

「あれ、どんな部屋かと思ったら結構広いじゃないか。ほらほら勇者クン、君も見てみろよ。洗面台も内風呂もあるよ」

「わぁ、お布団フカフカですぅ。ベッドもすっごく広いし、快適にお休みできそうですわね、勇者様ぁ」

「そ、そだね。ミドリちゃん、巫女ちゃん……」

 何か色々と解決策を考えてはいたものの、彼女たちには到底通じないだろう。俺は来たるべき夜に恐怖していた。


「それじゃぁ、ボクは洋服を見に行こうかな。巫女くんも来る?」

「あっ、えーと……。どうしましょうかぁ」

 判断がつきかねたのだろう。巫女ちゃんは、困ったように俺の方を伺っていた。

「巫女ちゃん、ミドリちゃんと一緒に服を見に行っておいでよ」

 俺に、女の子をスマートにエスコートなんかできる訳がない。特に服なんて門外漢だ。それは、この前に経験済みだ。

 俺は巫女ちゃんをミドリちゃんに任せると、現金を十万円ほど持たせた。

「そんなにはかからないと思うけど……」

「いや、いざって時に最後に勝つのは現金っす。それから、このメモを渡しておくっす。前の町の服屋で計ってもらったやつ。……ええーっと、そうのう……巫女ちゃんのサイズっす」

 勝ち気な魔法師は、俺からメモを受け取った。

「ふうん。で、見たの?」

 彼女は、メモを人差し指と中指で弄びながら、少し見上げるような目つきで俺に訊いた。

「み、見てないっす。あーっと、見た通り巫女ちゃんは異世界人で、俺たちの世界の常識が通用しないっす。だ、だから下着とか服とか……、アドバイスしてあげて欲しいっすっ」

 俺は両手を合わせると、ミドリちゃんを拝むように頼み込んだ。

「ふぅーん、そっか。まっ、勇者くんの頼みなら仕方がないなぁ。巫女くん、ボクと服を見に行こうよ」

「はい、分かりましたわ、魔法師様。それで、勇者様はどうなさいますの?」

「俺? 俺っちは、鎧が壊れちゃったから、新しい鎧や護身用の武器なんかを選びに、武具屋かなんかを見て回ろうと思うっす。あ、でも、あんまり遅くなったらいけないから、夕方の六時にはホテルに戻るっていうことでいいっすか?」

 俺は、逆にこう提案した。

 すると、二人とも頷いて、

「門限六時ね。オーケイ、分かったよ」

「わたくしも、それで構いませんわ」

 と承諾してくれた。

「何か緊急事態があった時には、サンダーのくれたレシーバーを使うこと。位置情報発信機にもなっているから、必ず腕に付けてるっすよ。これがあれば、たとえ迷子になっても、サンダーに見つけてもらえるっすから」

 まぁ、かく言う俺が一番不安なのだが。いざって時には、今言ったみたいにサンダーに迎えに来てもらおう。

「了解」

「分かりましたわ、勇者様」


 かくして俺たちは、二手に分かれて町を散策することになった。


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