中級勇者レベル3(1)
俺たちは、浄化した祭壇のある森の入口近くで野宿をしていた。
夕食を済ませたあと、巫女ちゃんはサンダーの後部座席で寝袋にくるまっていた。
俺は、大きな木の下で夜露をしのぎながら、寝袋の中で『異世界 魔獣大全』を読んでいた。
(ゾンビや機械魔獣の事は出ていたけれど、邪鬼については言及がないな。他のガイドブックにも、『邪の者』についての言及はないし。アマテラスの祭壇のことも、ただの遺跡としてか書かれていない。俺たち以前の勇者は、異世界の核心に触れることが出来なかったらしいな)
どうやら俺たちはこの異世界の真実に最も近いらしい。まぁ、全部ラッキーで手に入れた情報だけど。こんなことを期待して、アマテラスは俺を召喚したのかな?
『邪の者』の方も、初めて祭壇を浄化されて少し慌てたのかも知れない。でなければ、あんなにもすぐに機械魔獣なんてものを出して来るはずないよな。おそらく、これからの道行きは厳しいものになるに違いない。それにしても、サンダーの参戦はラッキーだよな。よほど強力な魔獣が来ても、負ける気がしない。最強だぜ、サンダー。
俺はそんなことを考えているうちに眠ってしまったようだ。
翌朝、目を覚ました時には、巫女ちゃんたちはもう起きて朝食の支度をしていた。
今日の巫女ちゃんはワンピースだ。よく似合っててかわいいな。デヘヘヘヘ。このまま事が順調に進めば、巫女ちゃんを彼女にすることもできるかなぁ。
なんてことを考えていると、巫女ちゃんがこっちの方に手を振っていた。
「勇者様ぁ、朝ご飯の用意が出来ましたわよぉ」
「分かった。すぐ行くっす」
俺は急いで着替えると、巫女ちゃんやサンダーのいるところへ走った。
「今朝は、野草とミドリドリの肉団子汁ですよ」
「へぇ、巫女ちゃんが作ったの?」
すると、彼女は少し顔を赤らめて、
「サンダーがミドリドリを捕まえてくれたので、作ってみたのです。わたくしのいた頃のこの世界では、割と普通のお食事です。でも……、違う世界から来た勇者様のお口に合えばいいのですが……」
最後の方は声が小さくなっていて、自信なさげだった。でも、折角巫女ちゃんが作ってくれたんだ。どんな味だろうと喰ってやる。
俺は、椀に注がれた肉団子汁をすすってみた。
「ウマイ」
そう、本当に美味かった。これ以上の批評の言葉が浮かばないくらい。
「お世辞じゃないよ。本当に美味しい」
すると、巫女ちゃんは顔をほころばせて、
「ありがとうございます。本当は、……ちょっと不安だったのです。でも勇者様に「美味しい」と言ってもらえて、とっても嬉しいです」
(いやぁ、まるで新婚さんみたいだなぁ。こんなんだったら、異世界での勇者生活がずっと続いてもいいなぁ、ヘラヘラ)
「いや、ホント美味いっす。おかわり頼んでいいっすかぁ?」
「はい。まだまだいっぱいありますから」
「これからの道中は長くなりそうだから、こうやって捕まえた獲物で料理を作っていかなけりゃ、と思ってたところっす。巫女ちゃんが料理上手で助かるっすよ」
俺は本心から思って、そう言った。
「勇者殿たちは食事という楽しみがあって、うらやましいでござる」
「あ、そうだ。サンダーにもお礼を言ってください。ミドリドリはサンダーが捕まえてくれたんです」
「そうなんすか。サンダー、本当にありがとうっす。これからもよろしくお願いするっす」
「いやぁ、あんまり褒められると、照れてしまうでござる」
サンダーは、そう言ってアタマをギシギシとかいた。
俺たちは楽しい朝食を終えると、荷物をまとめて旅支度を始めた。
「今度はどこへ行くでござるか?」
サンダーにそう言われて、俺はマップを広げると、
「ここから一番近い距離にある遺跡はっと、……東の方向っすね。近いと言っても、かなりの距離があるっす。サンダーに乗って行っても、二~三日以上はかかると思うっすよ」
俺は地図をサンダーに見せながら、そう説明した。
「そうでござるな。昨日走った時にも分かったでござるが、ここの道は未舗装の上にかなり曲がりくねっているでござる。安全運転で走らないと、巫女殿などは車酔いになってしまうでござるな。時間がかかるのは、仕方がないでござるね」
「すいません。わたくしが足を引っ張っているようで、申し訳ありません」
「いやいや、そんなことはないでござる。巫女殿がいるおかげで、『邪の者』の気配が分かるのでござるから」
「その通りっすよ、巫女ちゃん。巫女ちゃんには、いっぱいお世話になっているっす。この中に足を引っ張っている者はいないっす。それに皆で力を合わせるから、こうやって『邪の者』に打ち勝って来たと思ってるっす」
俺はとサンダーは、巫女ちゃんの気持ちを察してフォローした。実際にそうだったのだから。
「はい、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
「もちろんっすよ」
「そうでござる」
どうやら、巫女ちゃんも少し元気になったみたいだった。
「さぁ、それじゃあ、出発っす。サンダーには悪いっすけど、もう一度自動車になってもらえないっすか。頼むっす」
「心得た。チェーンジ・ビークルモード」
サンダーが自動車の姿に変形すると、俺と巫女ちゃんは、ドアを開けて乗り込んだ。勿論、シートベルトはしっかりと装着する。
さぁ、次の遺跡に出発だ。
俺たち──というよりもサンダーは、未舗装の曲がりくねった道路を軽快に走っていた。エアコンよりも窓から吹き込む風の方が心地よかった。
「だいぶ、進んだっすね。サンダー、あとどのくらいっすか?」
「カーナビの地図データから換算すると、あと一日ほど。明日の昼くらいには到着するでござるよ」
あと一日か。昨夜からこれまで、『邪の者』の手先は襲ってこなかった。最初に遺跡を浄化した次の日に機械魔獣に襲われた事を考えると、そろそろ気を付けないとならないかも知れない。
俺がそう思っているところに、巫女ちゃんが蒼い顔をして震えだした。
「巫女ちゃん、どうしたんすか? 車酔いでもしたっすか?」
彼女はかろうじて首を横に振ると、
「違うのです。この先から、とてつもなく大きくて邪悪な気配がしています。こ、これまでとは、……桁違いに、大きな邪気です」
「何だって? サンダー、大丈夫っすか?」
すると、サンダーも、
「いま、拙者のセンサーにも反応があったでござる。何か巨大なものが前方から近づいて来るでござる。速度はそんなに早くはないでござるが、恐ろしく大きな力を秘めているようでござる」
予想通り仕掛けて来たか。
「サンダー、少しスピードを落として、ゆっくり近づくっす。いきなりの正面対決は危険っす」
「了解」
そう言うと、サンダーはスピードを緩めた。
しばらく進むと、「ズシン、ズシン」と地響きがするようになった。地響きが大きくなるに従い、サンダーは真っ直ぐに進むのが難しくなってきているようだ。
「大丈夫っすか、サンダー。一旦、ここで停まって、敵の出方を見るっす」
「心得た」
サンダーが止まると、俺と巫女ちゃんは自動車から降りて、少し離れた岩陰に身を寄せた。
地響きは一向に止まらず、ますます大きくなり、近づいて来た。
そして、少し向こうの岩陰から巨大な何かが姿を表すのが遠目にも見えた。
「な、何なんだあれは」
俺は思わず口に出してしまった。それは、それ程凄いものだったのだ。
「何でござるか、あの化け物は」
「あ、あの巨人像から……物凄い邪気を感じ……ます」
巫女ちゃんは頭を押えて、ようようそう言った。
そう、それは、物凄く大きな巨人であった。表面の感じからみて、金属ではなく石で出来ているように見えた。
「ゴーレムか?」
「勇者殿、ゴーレムとは何でござるか?」
「石や土でできた人形に魔術で命を吹き込んで、自由に動けるようにした物っす。でも、あんなデカイ物は聞いたことがないっす。三十〜四十メートルくらいはあるように見えるっすよ」
俺が高校生をしていた世界でも、この異世界でも、ウルトラマン級の巨大ゴーレムなんて聞いたことがないぞ。俺なんか、やっとこさLevel 3になったばかりだ。まともに相手をしたら、象の足元の蟻よろしく、一瞬で踏み潰されてしまうだろう。
「あんな大きな化け物が相手じゃ、いくらサンダーでもつぶされてしまうっす。敵の動きは、そうは早くないように見えるっす。ここは、一時回避した方が得策っすね」
彼我の戦力差を鑑みて、俺はサンダーにそのように提案した。だがサンダーは、
「勇者殿。『邪の者』は今後もあのような……、いや、それ以上の化け物を送り込んでくるはずでござる。今は回避したとしても、いずれは戦わねばならぬ相手。そうであれば、今ここで戦わずして、いつ戦うでござるか!」
「うっ」
俺は二の句が継げなかった。確かにサンダーの言う通り、あのゴーレム級の敵すら倒せなかったら、この先でそれ以上の強敵が出現したら……。アマテラス復活への道は閉ざされたも同然だ。しかし、いくらなんでも、あんなのと正面切って戦うなんて無茶だろう。
「勇者殿。前の神殿では、拙者も何か『新しい力』を授かったのですな」
「あ、ああ。それは間違いないと思うっす」
「ならば、それに賭けてみようと思うでござる。アマテラスはこの世界を守護してきた神。ならば、授かったその力を信じようと思うでござる」
「サンダー……」
俺は、それ以上サンダーに反論できなかった。でも、きっとこれまでの勇者たちも、こんな風に『圧倒的な力の差』を見せつけられて、挫折してきたのだろう。
俺たちがここで諦めたら、これまでと同じだ。『邪の者』によって歪められた世界なんて、もうご免だ。
「分かったっす、サンダー。でもお前一人では戦わせないっす。仮にも俺だって勇者の端くれ。こんなところでサンダーに庇われて生き延びようとは思わないっす」
「勇者殿……。それこそ無理ではござらんか」
冷徹な機械とは真逆の感情が、その言葉には含まれていた。
「いや、作戦はあるっす。どうやらあいつは、動きが遅いらしいっす。だから、まず俺が高速のサンダルの機動性を活かして、足元でやつを撹乱させるっす。サンダーはその隙をついて、ゴーレムの急所を狙うっす。巫女ちゃんは岩陰で待機して、ゴーレムの弱点を探って欲しいっす。これは、皆の気持ちが通じあわなければ、成功しないっす。俺は、巫女ちゃんだけは戦いに巻き込みたくはなかったっすが、今回は相手が相手っす。悪いとは思うっすが……。巫女ちゃんにも力を貸して欲しいっす」
彼女は今まで、岩陰でゴーレムの巨大な邪気に震えていたのだが、俺のこの言葉を聞いて決心したようだった。涙ぐみながらも真っ直ぐに俺を見つめる目に力がこもっている。
「分かりました、勇者様。わたくしも、微力ながら戦わせてください」
「巫女ちゃんもサンダーも頼むっす。皆で力を合わせて、あの巨大ゴーレムをやっつけるっす」
そう言って俺は、巨人ゴーレムに特攻していった。頼むぞ『高速のサンダル』。
「チェーンジ・サンダー、ファイタァァァー・モォォォードッ!」
サンダーもチェンジして、俺の後について追いかけて来る。
俺は、ゴーレムの足元に瞬時に近づいた。見上げると、そのあまりの大きさに圧倒されそうだ。
「怯むかぁ! くらえ、一文字崩し」
俺はゴーレムの足元を高速で移動しながら、足首を中心に攻撃を加えた。しかし、ゴーレムにダメージを与えた様子はなかった。だが、足元でチマチマ動いては切りかかる俺に、ヤツは少なからず翻弄されているように見えた。
そのためか、頭上や背中が隙だらけになっている。
「拙者も参るでござる。サンダー・バルカン」
サンダーが空高くジャンプすると、無数の機銃弾がゴーレムの頭を乱打した。しかし、石の頭は、まさしくその名の如く、銃弾を受けつけなかった。
ゴーレムの巨大な手が、サンダーを捕まえようとする。
「させるか、一刀両断切り」
俺はゴーレムのアキレス腱に当たるところに、技を叩き込んだ。一瞬、ゴーレムの気がそがれる。
サンダーは、軽快な動きでゴーレムの腕を避けると、今度は後ろに回った。
「サンダー・フレイム」
高温の火炎が、ゴーレムの背中を焼く。それでも何も感じないのか、石の巨人はびくともしなかった。
「もう一度だ。くらえ、烈風斬」
無数のカマイタチガ、ゴーレムの足元を襲った。
「もう一度でござる、サンダー・クラッシュ!」
サンダーは捨て身の必殺技でゴーレムに挑んだ。
「だめっす、サンダー。その技は危険すぎるっす」
俺の叫びも届かぬのか、サンダーは五指を揃えた右手の抜き手で、ゴーレムの脇腹を狙った。
「グワァァァ」
サンダー渾身の必殺技も、ゴーレムの石の装甲には敵わず、弾き飛ばされしまっていた。宙に浮いているサンダーは、今は自由落下の途中。無防備のままである。
「いけない、注意をこちらに向けないと。くらえ、一刀両断切り」
しかし、俺の一撃もゴーレムには通じなかった。ソイツは空中のサンダーを捕まえると、両手で握りしめにかかった。
「ガアアァァァァ」
サンダーの悲鳴が木霊する。クソ、何か方法はないのか。何か方法は……。
「目覚めてくれ、サンダーの新しい力。アマテラスの神よ、我らに力を」
「アマテラス様、どうかお助け下さい。『邪の者』を打ち砕く力をお与えください」
巫女ちゃんも、俺と同様にアマテラスに祈った。そしてサンダーも、
「アマテラスの神よ、我に力を」
すると、天の一角から黄金の細い光が差し込み、サンダーを照らした。そして、ゴーレムの手の中で動けない勇者ロボが、その光に呼応するように金色に光り輝き始めたのだ。それが、サンダーにどういった効果をもたらしたのだろうか。今まで苦しんでいた勇者ロボは、顔を天に向けた。
「分かったでござる、拙者の新しい力! 勇者殿、『ブレイブ・ローダー』を呼んで下され。『ブレイブ・ローダー』を」
頭より先に、心が理解した。俺はサンダーに言われるまま、こう叫んでいた。
「カム・ヒヤー、ブレイブ・ローダー!」
すると、サンダーを照らしていた光が地平線を貫いた。光の照らした先から、何か巨大なものがやって来る気配がする。「ゴゴゴゴゴ」とうなりを上げて近づいてきたのは、何と巨大なトレーラーだった。
「あ、あれが『ブレイブ・ローダー』なのか……」
突進してくるトレーラーの天井部分から二本の光の矢が放たれると、ゴーレムを直撃した。眩い光と爆発の威力は、巨大なゴーレムに尻もちをつかせるほどだった。なんてスゴイ武器なんだ。
サンダーはその隙にゴーレムの手を離れ、接近する『ブレイブ・ローダー』に向かって走っていた。
「勇者殿、合体命令を! 早く、勇者殿」
俺は何が起こっているのか全く分からなかったが、サンダーに言われるままに叫んだ。
「サンダー、ブレイブ・ローダー、合体せよ!」
「おう!」
サンダーがそう叫ぶと、それに呼応するようにブレイブ・ローダーはその天井部分から翼を開き、車体後方からのすさまじいジェット噴射で天空高く舞い上がった。しかし驚くのは未だ早かった。何と巨大トレーラーは、空中で変形し始めたのだ。
先頭部が縦二つに割れて伸び、巨大な足となる。そのまま九十度車体の方向が変わり直立すると、最後尾の部分が前方に折りたたまれる。そして上半身が腰部を軸にねじれて百八十度反転した。それと同時に真上に伸びていたパーツがが左右に開いて展開し、肩と腕を構成する。それから腕が伸長して上腕部が見えたと思ったら、先端から大きな拳が飛び出した。最後に胸に相当する部分が開くと、ボディの中に格納されていた大きな頭部が起き上がった。
なんと巨大トレーラーは、見る見るうちに目の前のゴーレム級の巨大ロボットの姿に変形したのだ!
「とぉ!」
サンダーはそう叫んでブレイブ・ローダーに向けてジャンプすると、空中でビークルモードに変形し、巨大ロボの胸の空洞に飛び込んだ。サンダーがセットされた胸部装甲が再び閉じられた時、鉄巨人の両眼が光を放った。
「勇者合体、『ブレイブ・サンダー』!」
おお、これがサンダーの授かった力か。すごい。大きい。巨人ゴーレムにも引けはとるまい。
「今度はこの『ブレイブ・サンダー』が相手だ」
サンダーの合体した巨大ロボは、巨人ゴーレムに近づくと、その大きな拳を振るった。俺たちの攻撃に微動だにしなかったゴーレムが、数百メートル以上も吹っ飛ばされていた。なんて物凄いパワーだ。
それでもゴーレムは起き上がると、ブレイブ・サンダーに向かって突進してきた。
しかし、新生した巨大勇者ロボは、ゴーレムの体当たりをものともせず、右腕の一振りでまたもゴーレムを弾き飛ばした。再度地面に倒れた石巨人のダメージが幾ばくのものか、ソイツはなかなか立ち上がれないでいた。
その時、岩壁に隠れていた巫女ちゃんが叫んだ。
「ゴーレムの弱点が分かりましたわ。額です。額に書かれた魔道文字を砕けば、ゴーレムは動かなくなります!」
「分かったでござる。ブレイブ・ソード!」
ブレイブ・サンダーの右足のふくろはぎが開くと、巨大な剣が飛び出した。巨大ロボがそれをつかんで上段の構えを取ると、刀身はさらに伸びて巨大な長剣となった。
「チャージ・アーップ!」
ブレイブ・サンダーがの声に呼応するように天空から稲光が飛来し、巨大な刀身に眩い輝きを与えた。
ようやく石の巨体がよろよろと立ち上がった時、ブレイブ・サンダーは既に天高く舞い上がっていた。そのまま飛び降りざまに、ゴーレムの頭に長剣を振り下ろす。
「天地稲妻切り!」
ゴーレムの額の魔道文字が砕けると、刃はそのままゴーレムの頭から股間までを、真っ二つに両断していた。そして、巨人ゴーレムはそのまま左右に分かれて大地に倒れると、二度と動かなくなった。
「やったぁー」
「やりましたわぁ」
俺と巫女ちゃんは、思わずそう叫んでいた。
「サンダー、いやブレイブ・サンダー。これが新しく授かった力なんすね」
「左様。これで、もう誰にも負けないでござる」
ブレイブ・サンダーはこう言うと、大きな掌に俺たち二人を乗せ、そのまま顔の近くまで持ち上げてくれた。
「うわぁ、凄い景色ですわ」
「やったっすね、ブレイブ・サンダー」
「これも勇者殿たちのお陰でござる」
勝てる。これなら勝てる。俺たちは皆、その瞬間にそう感じていた。




