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神様、婿を決めたって





「うっ、うぅ··········」


「「····················」」


((どういう事?))


今【幻獣】に分類される鬼族であり、柔道部部長の鬼瓦 響鬼と顧問である龍樹 京極は部員のスポドリを買って帰ってきてみれば、道場の窓と壁が破壊され、涙を流しながら道着をビリビリに破かれながら泣いている龍一の姿に唖然としていた。

あまりにもあんまりな状況に、顧問は思わず他の部員を見て「集団レイ〇?」と聞いてしまったが、すぐさま部員は否定し、ことの次第を2人に話し、更に頭がこんがらがった。


「そ、そう泣くことないぞ。相手は神獣で、しかもあの龍旼だ!玉輿じゃねぇか!」


「うううぅぅッ!」


「お前最低だな」


「なら教師のお前が慰めたれ!」


「大丈夫か?ワシの爆乳おっぱい揉む?」


「ひいいいぃぃッ!!」


「ダメだ、完全にトラウマになってやがる」


道場の隅で怯える龍一。

数時間前の龍一ならなにか言い返すか、無視しているはずなのだが。

龍一の柔道での実力は確かな物だ。

非力な人間であるにもかかわらず、力ならどの種族にも引けを取らない自分を投げるほどの実力。

だがそれと同時に素行が悪い。とても悪い。

まずまともに相手に礼をしない、先輩への敬語もなし。

練習もひとりで勝手に始めたり、周りの部員とは極力関わろうともしない。

昔の出来事が彼をそうしたと思い、部長も顧問も龍一の素行の悪さを多少は目をつぶっていた。


だが、1週間前の休日、響鬼と龍一は二人で稽古をしており、誤って響鬼の角に折ってしまった。


なんてことは無い、柔道ではたまにある事故だ。

響鬼が受身を誤り、それが原因で投げた時に龍一が袖を引くことができず、結果鬼族の誇りである角を折ってしまったという流れだ。


傷は大したことは無い。

角が折れただけ。

だが相手は鬼族であり、響鬼は鬼瓦家の次期当主。

そして鬼の角は鬼族の命の次に大切な物。

しかも折った相手は人間。

場合によって大切な跡取りである娘の角を折った裸猿を秘密裏に拷問の末一族末代に至るまで皆殺しも有り得た。

実際響鬼の親は憤慨したが、そこは響鬼が親を張り倒し、全治5ヶ月で収まった。


そしてこの道場ではどんな理由があれ、立ち会いで怪我をさせたら1週間は部活中は壁に向かって正座させるという決まりがあるのだが、今の時代虐待などPTAがうるさいので、今年からそれをなくしていた。

しかし龍一は相手を傷つけたことが相当ショックだったのか、自分から正座すると言い出した。

普段素行が悪い龍一だが、部員達も龍一に対して裏で虐めをしている。

武闘家であり、護身術を使う者がそんな事するなど、許されざる行為だったが、龍一は構わないと言い、その代わり「そんな奴らに尽くす礼など無いだけだ」と言い、そのあとが面倒だと一蹴した。


龍一の普段の素行の悪さはほとんどが相手の差別によるもの。

自分を差別し、見下す者に対しては自身も差別し、見下す。

しかし顧問や部長の様に、相手に礼を尽くすものに対しては、自身も同様に礼を尽くす。


しかしそれが原因で、彼は陰口や虐めの対象にもなっている。

故に今回の様に、部長の角が折れた原因をよく知らない部員たちからすれば、龍一は何か卑劣な手を使って部長を怪我させたと噂を流し、龍一をさらに孤立させた。


最初は訂正しようとしたのだが、本人が面倒だからいいという理由でそのままにしていた。

しかし、正直そんなことを言ってるヤツらを全員張り倒してやりたいが、本人が望まない以上自分が怒っても仕方ない。


それに、普段から自分を慕ってくれている響鬼の角を折ってしまったことが相当ショックだったのだろう。

これ以上迷惑をかけたくない、そんな感じのことを思っているのだろうと響鬼は龍一に対して好感度を爆上げさせながら渋々ではあるが納得した。


「俺のおっぱいでもダメ?」


「婿にッ、婿にする気だろッ!?そのままエッチな気分になって俺をベットに連れてって家族にする気だろッ!?」


「安心しろよ、そんな事しねぇよ」


「は、ははッ!そうだよな!俺みたいな裸猿でエッチな気分になって婿にしたがる女なんて··········」


「常時俺はお前を見てエッチな気分になってるぞ?」


「は?」


「なんならベットじゃなくて今この場でお前の子を孕んでお前を即婿にして幸せな家庭を築きたい」


「怖いぃぃぃぃッ!響鬼が!響鬼がおかしなこと言ってるよおおおぉぉぉッ!」


「安心しろ、俺はお前がどんな奴に抱かれようと、お前がどれだけ女を抱こうと、浮気しても、俺をほったらかしにしても、ほかの女で鼻の下伸ばしても、最後に俺と幸せな家庭を作ってくれるなら全て許す」


「やっぱり角?角折ったから頭おかしくなっちゃったのか··········?俺のせいで、お前までおかしく··········?」


「安心しろ、お前を家族にしたかったのはお前と始めて会った次の日からだ」


「尚更怖いよ!お前あの時5歳じゃん!?え?5歳の時から俺を婿にしようとしてたの··········?嘘だよね?」


「いや、その時は結婚とかよく分からなかったからなぁ」


「そ、そうだよな、親愛的な、Loveじゃなくてlike的な好きだよな、友達として好意だよな?」


「とりあえずお前の子を孕めば家族になれるかなって」


「怖いぃぃぃぃッ!尚更怖いよッ!?」


「お前ら、今日はも帰れ。龍一は残れよ」


『うぃーす』


そう言った一人一人道場の入口で礼をして出ていく。

そして残ったのは龍一と部長である響鬼と顧問である京極だった。


「ねぇ、なんで全員帰らせたの?なんで俺だけ残したの?」


「人目があると嫌だろ?それとも人に見られながらがいいのか?オレは初めては2人っきりがいいなぁ〜」


「何する気!?人目のないところで何する気!?ま、まさか、エッチな事か!?エッチなことするつもりなのか!?」


「何って、ナニだけど?」


「きょ、京極姉ちゃん!今日の響鬼絶対おかしいだろ!?主に頭が!」


「うん、ワシも響鬼の突然の暴走に驚きでちょっと目眩してきた」


「どうにかしろよ!?」


「おいおい、目の前にオレが居んのに既にほかの女に目移りしてんのか?こりゃお仕置だな」


「ヒ、ヒイイイィィィ!来ないで!コウノトリさんが来ることする気だろ!?コウノトリが赤ちゃん運んでくるやつするつもりだろ!?」


「龍旼にやるくらいなら、最初は俺がいただく。なに、龍一はオレの胸に顔でも埋めて眠ってろ」


そう言ってゆっくりと龍一に近づき、素早い動きで龍一を拘束して畳の上に押し倒し、押し倒された龍一を見て、響鬼は妖艶な笑みを浮かべながら舌を舐めずる。

完全に捕食者の瞳になっている。

流石鬼族、単純な鬼の力で人間は抵抗などできるはずもなく、そのままビリビリになった道着が1枚1枚剥がされていく。


そして響鬼の手が下半身に行った時だった


「あてみ」


「がはっ!?」


京極が響鬼の首をチョップして気絶させた。


「た、助かった。でも、どうして突然こんな···············?」


「やっぱり角を龍一におられたのが原因かなぁ」


「··········そうか、やっぱり言葉では気にしないって言ってても鬼の誇りだもんな。相当心にきてたのかなぁ」


「いや、角をお前に折られて『やっぱりこいつの子供孕みてぇ』て子宮の方に相当効いたみたいだよ?」


「なんで?ねぇなんで?鬼の誇りだよね?命の次に大事なもだよね?なんで折られて快楽キメてんの?なんで生殖本能刺激されてんの?おかしくない?あれ?俺がおかしいのか?」


「うーん··········ほら、生物が瀕死の時に種を残そうとするだろ?それ的なアレじゃね?」


「··········響鬼は疲れてるんだよ。角が折れて、家族とも大喧嘩··········ていうより一方的な虐殺?どちらにしろ疲れてんだ、最近色々あったし、休めばきっと元通りになる。てか戻ってくれ、俺そろそろ女性恐怖症かEDになりそう」


「そん時は多分龍旼が性転換してお前が孕む側になりそうだな」


「いや、さすがにそれは··········」


「単為生殖できる奴らだぞ?」


「···············声を上げて泣くから1人にしてもらっていい?」


「おう、それしたらもう今日は帰っていいぞ」


そう言って響鬼を担いで出ていく京極。

俺はその日、声を上げて1時間くらい泣いた。

本気で泣いた。

涙が出尽くしても泣いた。


人ってこんなに泣けるんだなぁと思いながら俺は1時泣いたあと家に帰った。

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