48(ペンギン)

　　

右ペン：オ、オイラがもう1人⋯⋯！？

左ペン：こっちのセリフだよ

右ペン：なんでこの距離まで気づかなかったんだろうか⋯⋯

左ペン：こっちのセリフだよ

右ペン：きみ、代わりに宿題やってくれよ

左ペン：それもこっちのセリフだよ。きみ、自分が本物でオイラが偽物っていう前提で話進めてるよな？

右ペン：違うの？

左ペン：違うよ。きみと全く同じ気持ちだよ。いきなり自分の前に自分が現れた感じ

右ペン：きみ、ドッペルゲンガーだろ

左ペン：違うよ。もしそうだったらどっちか死んでるはずだろ

右ペン：そうか⋯⋯じゃあ、この状況はいったい⋯⋯

左ペン：世界のバグとか？

右ペン：増殖バグ？

左ペン：だとしたらどっちがオリジナルなんだろうね

右ペン：なんか怖くなってきた

左ペン：知らないほうがいいこともあるって言うし、このまま何も探らずにいくか⋯⋯

右ペン：そうだね、下手に真実に触れても自分たちを傷つけることになるかもだし

　1ヶ月後

右ペン：それにしてもオイラたち、ペンギンだからってペンって名前なのウケるよね。親センスなさすぎ

左ペン：えっ？ 何言ってんの？

右ペン：え、ごめん⋯⋯気分悪くさせちゃった？

左ペン：いや、そうじゃなくて、「なおゆき」だろ？

右ペン：なにが？

左ペン：オイラたちの名前だよ！

右ペン：えぇっ！？ 違うよ？ ペンだよ！？

左ペン：そんな⋯⋯！ えっ、どういうこと？

右ペン：整理すると⋯⋯オイラが「ペン」で、きみが「なおゆき」ってこと⋯⋯？ どういうこと⋯⋯？

左ペン：どういうことだ⋯⋯？

右ペン：もしかしてオイラたちって、別人？

左ペン：それってつまり、他人の空似だったってこと⋯⋯？

右ペン：⋯⋯そうなるね

左ペン：なんてことだ⋯⋯そんなことが⋯⋯

右ペン：⋯⋯プッ

左ペン：どうした？

右ペン：ププッ、ごめん、おかしくって！

左ペン：おかしい⋯⋯確かにおかしいな、はは

右ペン：おかしいし、他の人に知られたら恥ずかしいから、このことは2人だけの秘密にしない？

左ペン：そうだな！ 男同士の約束だ！

右ペン：えっ、オイラ女だけど

左ペン：えぇーーーーーっ！？

　半年後

右ペン：明日の結婚式、緊張するね⋯⋯

左ペン：そうかな？ オイラはきみとならなにも怖くない。どこまでも行ける気がするよ

右ペン：なおゆきくん⋯⋯

左ペン：ペンちゃん⋯⋯

右ペン：明日、楽しみだね

左ペン：そうだね