16(取り調べ)
あなたは本当に愚かです。
こうして無実の私を取り調べしている間にも真犯人はこの地からどんどん離れていっているんじゃないですか?
早く私を解放した方がいいと思いますよ? 私はただの右乳首が新鮮な牛肉色なだけの善良な市民なのですから。食べます? なんてね、冗談です。色だけですよ、色だけ。ちょっと、摘まないでくださいよ。痛い痛い。
頭のこれですか? これは蓋です。
嘘じゃありませんよ、蓋です。
いやいやダメですよ、それに私がもし犯人だったとして、こんな所に証拠を隠すと思います?
ちょっとダメですってば! ちょっと、ちょっとーっ!
お分かりいただけましたね。そういうことです。この蓋を取るとブラックバスが次から次に出てきてしまうんです。環境に良くないのでこのままで生活しているんです。
え、羨ましい? どういうことですか?
いやいや、そんなのバス釣りの楽しさが1ミリもないでしょ。あなたはただブラックバスが手に入ればOKなんですか。食べもしないのに。まったく、羨ましいなんて軽々しく言わないでくださいよ。
いやもう話戻さなくていいですよ。私が犯人なわけないでしょ。確かに私は怪しいかもしれませんけど、どう見ても誘拐犯じゃないでしょ。怪しさのベクトルが違うでしょ。
え、カツ丼食べさせてくれるんですか? じゃあもうちょっといます。
えっ、犯人だと認めたら毎日カツ丼食べ放題!?
そんな訳ないでしょ。騙されませんよ。
こんな格好してるからってバカだと思わないでください。心外です。
人を見かけで判断するなって言うけど、頭良さそうには見えないかなぁ。ごめん。
でも、秀才には見えないけど、天才なんですって言われたら信じるかもね。こういうタイプの天才もいそうだから。




