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完全解体の片鱗

「スキル……カード?」

 俺は手にしたカードを鑑定し、表示された文字を思わず口にした。

 スキルカード。この言葉が意味する事はなんとなくだが想像できる。

 そして、鑑定した結果、表示されたモノは


『スキルカード≪斬脚ざんきゃく≫』……スキル『斬脚』を習得できる。


 と書かれてあった。

「マジで?」

 え、スキル習得できんの?マジ?そんな事ってあるのか?いや、スキルカードって言う名称から何となく想像はできてたけど。

 そもそも『斬脚』とやらは、あの俺の腹を切り裂いたあの技だよな?

「……おおう」

 す、凄いですね。

 …………。

「これ以外に感想が持てねぇよ!」

 いきなりスキルを習得できるカードを拾っても、どう言う反応したらいいのか困るんですけど!?狂喜乱舞でもすればいいのか!?……そうすると俺の腋臭で死んでいったクレバーモンキーがより一層哀れに思えるな。

 しかし、落ちているカードはこの『斬脚』だけでは無い。

「ほ、他のカードは?」

 他に落ちているカードを手に取ると、全てに鑑定をした。

 その結果、これだけのスキルカードが手に入った。


『スキルカード≪斬脚≫』……スキル『斬脚』を習得できる。

『スキルカード≪刹那≫』……スキル『刹那』を習得できる。

『スキルカード≪超調合≫』……スキル『超調合』を習得できる。

『スキルカード≪道具製作:超一流≫』……スキル『道具製作:超一流』を習得できる。


「お、おお……」

 …………。

「やっぱりこれ以上の感想が持てないっ……!」

 いや、凄い事なんだろうよ!?だってスキルだもん!スキルが手に入るんですよ!?でも、いきなりすぎて反応に困る……!

「……これ、どう使えば良いんだろう」

 習得できるとは書いてあるものの、使い方が分からない。

 どうしたもんか……と思っていると、突然スキルカード全てが光り出した。

「おわっ!?」

 スキルカードは激しい光を放ち、そしてそれぞれが光の玉となって、俺の体の中に入っていった。

「どうぇい!?なんか入ってきた!?」

 手には、既にスキルカードは存在していない。

 いきなりの現象に驚いていると、スキルを習得した際などに流れてくる声が頭に響く。

『スキル≪斬脚≫を習得しました。スキル≪刹那≫を習得しました。スキル≪超調合≫を習得しました。スキル≪道具製作:超一流≫を習得しました』

 …………。

「うわぁ……」

 俺は軽く引いた。

 だって、いきなりスキルを多く習得したんだもの。多過ぎて逆に引く。なんか素直に喜べない自分がいるのは何故?

「……一応効果を確認するか」

 そう思った俺は、すぐに習得したばかりのスキルの効果を確認した。


『斬脚』……足から斬撃を放出できる。斬撃の有効範囲は約10m。

『刹那』……相手の認識出来ないスピードで動く事が出来る。効果は一瞬だが、連続して使う事も出来る。

『超調合』……調合をする場合、出来あがったモノに最大補正。

『道具製作:超一流』……道具を製作する場合、出来あがったモノに最大補正。


「…………ないわぁ…………」

 今度はドン引きした。

 チート過ぎる!ヤベェよ!?地球で普通の生活を送ってきた俺には手に負えないんですけど!?

「あ、扱える自信がねぇ……」

 大丈夫か?俺……。

 確かにこの危険な森の中、チートなスキルを持っているだけでそれは安心になるだろうけど、何だか自分の実力だ~!とか勘違いしそうで怖いなぁ。

 変に舞い上がって、自滅なんてシャレにならんし。

「……気をつけよ」

 そう言うしかなかった。

 でも、この『超調合』と『道具製作:超一流』は、そう言った危険が少ない上に、この場所では色々と便利そうだ。なんか最初から最高の状態でスキルを手に入れられたようだけど、それだけ俺の倒したクレバーモンキーが調合や道具を作る技術に長けてたって事なんだろうなぁ。

 てか、やっぱりあの最上級回復薬を入れていたビンは、クレバーモンキー達が作ったモノみたいだな。

「本当に賢いんだなぁ……」

 俺、ガラスなんて作れないぞ?それも、加工してビンの形にするとかもっと無理だな。

「まあ、活用できるんなら、頑張って活用しよう」

 取りあえず、スキルを使いこなすという新たな目標を立てる事が出来た。

「さて……お次は?」

 次に手に取ったモノは、本の様なモノだった。

 いや……本と言うよりは冊子か?

「……なんだこれ?」

 思わずそう言う。

 冊子の表紙には、見たことも無い文字が書かれているのだが、何故か俺にはその言葉が理解できた。

「……成程。これが、この世界の文字なのか」

 すぐに、冊子の表紙に書かれている文字の正体に気付いた俺だが、その文字が俺も扱えそうだという事にも気付き、実際に俺の名前を感覚的にかたい地面に書いてみた。

「……書けちゃってるよ」

 難なく書く事が出来た。出来てしまった。

 英語が苦手だったのに、みた事も無い文字を簡単に扱えた自分に驚いている。

 これが、神が俺達を転移させる前に言ってた言語理解能力とやらなんだろうなぁ。

「……あれ?待てよ?なら、何でその言語理解能力がスキルの欄にかかれてないんだ?」

 うーん……もしかして、あれか?言語理解能力はスキルじゃなくて、元々持って生まれた目に見えない才能的な形とか?

「……まあ今別にこの事を突きつめなくても問題無いな。第一スキルに書かれて無くても、使えるんならそれで良いじゃん」

 俺は結局そう思う事にした。誰が何と言おうと、そう思う事にしたの!……誰に言ってんだ?俺……。

「んで?この表紙にはなんてい書いてあるんだ?」

 冊子の表紙を読むと、こう書いてあった。

『クレバーモンキーの知識』

「はい?」

 知識?あの猿の?それとも、あの猿に対しての?

 …………。

「まあ……読んでみるか」

 そう言い、俺は冊子を開いた。

『クレバーモンキーとは、高レベルダンジョンなどに生息する知能の高い猿である。手先が器用であり、更に様々な薬草などの知識を多く持ち、それらを調合などして道具を作ることも出来る。人語を話したり、理解したりすることは出来ないが、道具作りや調合技術だけの面は人間の技術を凌駕する。製作した道具を扱う事に関しても、人間を超える』

「猿スゲェな!?」

 まさかの人間超えちゃった!?普通動物と人間の境目として、よく道具を作ったり使えたりするのが基準って言ったりするよね!?……俺は動物と人間の違いの基準とか難しい事は分からないんだけど。

 でもまさか、人間以上に道具作ったり、使ったりする技術があるなんて……!

「いや……クレバーモンキー、ヤベェな……」

 そう言い、俺はページを捲る。

 すると、今度はこんな題名がデカデカと1ページまるまる使われ、書かれてあった。

『クレバーモンキーの生涯』

「生涯!?」

 いきなり壮大だな!?

「……何なんだ?ドキュメンタリーでも始まるのか?」

 そう言いつつもページをめくっていく。

「――――」

 俺は読み進めていき、そして言葉を失った。

 それも、決して悪い意味じゃなく、むしろいい意味で。

「……まさか、クレバーモンキーの経験・・してきたモノがこの一冊に詰め込まれてるのか!?」

 読み進めていった結果、書かれてあった事は、ありとあらゆる薬草等の植物の効果と、それを加工する方法。

 他に、ここら一帯で採取する事が出来る植物は、それらの場所が全て地図にされて描かれていた。

 植物だけでなく、貴重な鉱物などがとれる場所まで記されている。

「マジか!?ヤベェ……ヤバ過ぎる!」

 最後のページに至っては、ご丁寧に俺に殺された場所がマークしてあるこの場所の精確な地図が描かれていた。

「俺が殺した場所にマークがついてるから、自分の現在位置の把握が出来るぞ!?」

 それは、今までさまよい続けていたこの森で、様々な場所に移動するための極めて重要なモノだった。

 冊子をてに、恐々としていると、またスキルカードのように冊子が激しい光を放ち始めた。

 そして、再び一つの光の玉になると。俺の体に吸い込まれている。

「!」

 光の玉が吸い込まれていったあと、突然俺の頭にさっきの冊子にかかれてあった知識がドッと流れ込んで来た。

「いきなり頭に情報が流れてきた割には……完全に理解できてるだと!?」

 自分の事なのに、一気に得た知識を難なく覚えられている事に驚いた。これも、スキルを習得した時と似たようなモノなのだろう。

 つまり、今手に入れた知識は完全に俺のモノとなったらしい。

「はは……ははは……」

 思わず乾いた笑みがこぼれる。

 これ……マジで何なんだ?

 第一、クレバーモンキーの様な魔物的生物を殺すと、スキルカードや今みたいなその生物が経験してきた知識等を手に入れられるモノなのか?

 ……絶対に違う気がする。

 そこまで考えて、俺はある言葉が頭に浮かんだ。

「――――完全解体……!」

 そうか!あの説明では、倒した魔物の全て・・が手に入ると書いてあった。だから、知識すら自分のモノとして手に入るのか!

「な、なら、残りのこの球体や宝箱は一体……」

 俺は、残り少なくなったクレバーモンキーを倒した際に落とした、謎の球体や宝箱に視線を移し、そう呟くのだった。

一度切りました。まだ完全解体の力は続きます。

3月17日「クレバーモンキーの人生」→「クレバーモンキーの生涯」に変更しました。

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