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サリアのご両親

 コミックの第一巻が発売となってます。よろしければ、ぜひお手にしてみてください。

 謎の侵入者に逃げられたものの、そのことでランゼさんたちが忙しくなってしまったため、俺は父さんたちの所に向かった。

 帰ってもいいのかもしれないが、色々と曖昧なままだし、何よりせっかく会えたんだからちゃんと話したいしな。

 ただ――――。


「……あの……何故ついて来るのでしょうか?」

「……ダメ?」

「いや、ダメってワケじゃないですけど……」

「……なら問題ない」

「理由を訊いてるんですけどねぇ!?」


 そう、あれからずっと魔王の娘さんが俺の後ろをついて来るのだ。


「魔王の娘さん。俺なんかについてくるんじゃなくて、他の魔族の方々と一緒にいた方がいいんじゃないですか? ほら、さっきまで危険な状態だったわけですし、護衛としても……」

「……それなら貴方の近くが一番安全。ここで一番強いから」


 もう何も言えなくなった。

 おかしい……ここには各国を代表するような強い人が集まってるはずなのに……!

 思わず頭を抱えそうになると、そんな俺を無視して魔王の娘さんは少し不満げに続けた。


「……あと、私はルーティア。ちゃんと名前で呼んで」

「ご、ごめんなさい……えっと、ルーティアさん?」

「……ルーティアでいい」

「いや、さすがに魔王の娘である方を呼び捨てなんて……」

「ルーティア」

「えっと……」

「ルーティア」

「……はい。ルーティア」

「……うん。それでいい」


 圧力に負けた俺が名前を呼ぶと、ルーティアは満足そうに頷いた。


「……ところで貴方の名前は?」

「俺? 俺は誠一です」

「誠一……うん。それと敬語もいらない。拒否権はない」

「なんかどんどん遠慮がなくなってね!?」


 別にいいんだけどね。

 結局ついて来る理由が分からないまま、俺は父さんたちの下に向かった。

 するとそこには父さんたちだけでなく、宝箱と見覚えがありすぎるゴリラが二人……いや、二体? 二頭? の姿もあった。

 俺に気付いた父さんが、笑顔で声をかけてくる。


「誠一! あれから元気にしてたか?」

「うん、特に変わりはないよ」

「そう、ならいいのよ。サリアさんたちも元気?」

「元気だよ。って、そう言えばそこにいるゴリラは……」


 父さんたちと一緒にいるってことは、何かしら事情を知ってるだろうと思い訊こうとすると、ゴリラの方から声をかけてきた。


「誠一……貴方ガ、サリアノ――――娘ノ番カ」

「へ!? 娘!?」


 ゴリラの口から出た単語に俺は驚く。

 そんな俺に構わずゴリラの二人は続けてきた。


「私ハサリアノ母デアル【サニー】ダ」

「私ハ父ノ【アドラメレク】ダ」

「待って、頭が追い付かねぇ!」

「……話せる魔物……珍しい」


 この二人、サリアのご両親!? マジで!?

 いや、サリアがゴリラなんだからそりゃご両親もゴリラなのは分かるけどさ!

 てっきり同じ種族の仲間くらいにしか認識してなかったから、サリアの両親だという発言に心の底から驚いた。

 俺の後ろについて来ていたルーティアもサリアのご両親が言葉を発したことに少し驚いていた。


「あら、誠一は気付かなかったの? ほら、サニーさんの目元なんてサリアさんにそっくりじゃない」

「何で母さんは分かるの!? 俺には見分けがまったくつかないんだけど!?」


 前々から母さんたちはおかしいってか、ぶっ飛んでるなとは思ってたけど……。


「ウム……コウシテ目ノ前デ改メテ見テミルト、誠一殿ハトンデモナク規格外ナ存在デスナ」

「サリアハイイ雄ヲ捕マエタヨウダ。コレデ我ガ種ハ安泰ダナ」


 俺と母さんが会話をしてる横で、そんなことを言いあっているサリアのご両親。

 ……すでにだいぶ失礼な態度とっちゃったけど、サリアのご両親ならちゃんと挨拶しないとな。


「……挨拶が遅れてしまいましたが、サリアさんとお付き合いさせていただいてます柊誠一と申します」

「オオ、コレハコレハ……ソレデ、子供ハイツ産マレルノダ?」

「ナルベク早イ方ガイイ。何時、何ガアルカ分カラナイカラナ」

「ぶふぉっ!?」


 あ、これ本当にサリアのご両親ですね!

 思考回路がよく似てらっしゃる!

 思わずそう思っていると、サニーさんがふとした疑問を口にした。


「ダガ……娘ハゴリラデ誠一殿ハ人間ダ。ソコハ問題ナイノカ?」

「あ……その、現在娘さんは普段人間と変わらない姿で生活していまして、問題ありません。それにサリアがゴリラのままでも、俺はサリアのことが好きなので……」

「ソウカ……ム? 人間ト変ワラナイ姿ダト? ドウイウコトダ?」


 そうか、二人は【進化の実】の存在を知らないのかな?

 でも【果てなき悲愛の森】では昔から存在して多っぽいけど……。

 俺は二人にサリアが【進化の実】というモノを食べたことで、種族的にも進化して人化できるようになったことを教えた。


「……【進化ノ実】カ……確カニソンナモノガアッタヨウナ気モスルナ……」

「ダガ、ソレデ人間ニナレタトイウノナラ納得デキルナ。私タチも食ベテミタイモノダガ……」

「あの……一応手元にあるので、一つずついかがですか?」


 そう、あれからスマホで栽培をしていた【進化の実】は無事に実っていて、数を増やしていた。

 もう俺が食べることは出来ないが、あげることは出来るのだ。

 効果が強力すぎるから渡す相手は慎重に選ばなきゃダメなんだろうけど……サリアのご両親なら問題ない。 俺から【進化の実】を受け取った二人は、色々な角度から眺めはじめる。


「ホウ……コレガ【進化ノ実】カ……」

「匂イハ特ニシナイナ」


 そんな二人を見ていたルーティアが、俺の服の裾を引っ張った。


「ん?」

「……あれ、私にもちょうだい」

「え、いや……それは……」


 どうしたもんかと考えていると、二人は同時に【進化の実】を齧った。

 そして――――。


「「マ……不味イイイイイイイイイ!」」


 絶叫した。

 うん、よく分かるよ。

 効果はすごいんだけど、【進化の実】は凄まじく不味いんだよね……。

 今にも吐き出さんと言わんばかりの二人を見て、ルーティアは真顔で口を開いた。


「……やっぱりいらない」


 結果的にあげずに済んだので助かった。ありがとう、進化の実!

 口元をぬぐい、サニーさんがフラフラとしながら言う。


「ス、スゴク不味カッタガ……コレデ人間ニナレルノダロウ?」

「あ、それなんですけど――――」


 【進化の実】は食べてから自分よりレベルが高い存在を倒さないと進化しない。

 せっかく不味いモノを食べたというのに、すぐに効果が発揮しないことを伝えるのは心苦しいと思ったときだった。


『スキル【同調】が発動しました。これにより、周囲と同調します』


「ふぁ!?」


 突然、俺の持つスキル『同調』が発動した。

 え、なになになになに!? 何が起こるの!?

 するとサニーさんとアドラメレクさんの体が光り輝き始めた。


「コレハ!?」

「一体何ガ……!」


『同調を完了しました。今回の同調内容は、誠一様の【進化後】の状態を本体とし、【進化の実】を食べた対象二名と同調したため、二名の状態は【進化後】へと変更されました』


「嘘だろ!?」


 そんなことあるの!? 俺の進化した状態と同調って! 何でもアリか!? いや、今さらだけども!

 脳内アナウンスに思わずツッコんでいる中、二人の体を激しい光が包み、俺たちは思わず目を覆う。

 光が収まったのを感じて目を開けると、そこには二人の人間の姿が目に映った。


「おお、これが人間の体か」

「何とも言えぬ感覚だな」


 サリアと同じ真紅の荒々しく伸ばされた髪のすごい美人と、これまた同じく真紅の髪をかき上げている美丈夫がそこに立っていた――――全裸で。


「服を着ろおおおおおおおおおおおお!」


 俺は思わず全力でツッコんだ。

 そういえば魔物は進化が終わったら全裸になるんだったね! 忘れてたよ……!

 思わず頭を抱える俺に、サリアの母親であるサニーさんは腰に手を当て無駄に堂々としている。


「何故だ? この格好はそこまでおかしいか?」

「魔物ならおかしくないです……でも今人間の体なんですよぉ!」

「おお。毛が一気になくなってスース―するな!」

「アドラメレクさんも全裸ではしゃがないッ!」


 魔物であった彼らに羞恥心というモノはないらしく、豪快に笑いあっていた。いや、サリアは魔物の状態の方が羞恥心持ってたし……ああもう、ワケ分からねぇッ!

 何とか服を調達して二人に着てもらおうとするが、二人は人間の体に興味津々で全裸で動き回る。


「お願いですから大人しくしろッ!」


 結局サリアの両親だということも忘れて、力づくで二人を止めるまでサニーさんたちは全裸で大はしゃぎしているのだった。

こちらの全文改稿していたものが終わり、完全新作となったものも書いております。

内容は『進化の実』ほどギャグ寄りにはしていませんが、適度にギャグを織り交ぜております。

よろしければ読んでみてもらえると嬉しいです。

『おはようガーディアン(仮)』

https://book1.adouzi.eu.org/n0452bs/

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