急襲
俺、柊誠一は今までの人生の中で直面した事のない現実と対面している。
「酒、飲ム」
「私、未成年なんで」
「ナラ、食事スル」
「今お腹空いていないんで」
「ナラ、私ト寝ル」
「昨日は十分睡眠をとったので」
「ナラ、私ト結婚スル」
「全力でお断りしまああああああああす!」
――――俺、ゴリラに求婚されてます。
どうしてこうなった!?
自分の置かれてる状況が理解できねぇんだけど!?マジでこの状況何!?
お、落ち着け……取り乱した所で何も変わらねぇぞ……。
まず、俺の目の前にいるのは、確実にゴリラ。
だが、ただのゴリラじゃない。
鍛え抜かれた筋肉に、それを覆う燃える様な赤色をした体毛。顔はまんまゴリラだが、口から覗く巨大な牙が、地球にいるゴリラとは違う事を暗に告げていた。
――――カイザーコング。
それが、目の前のゴリラの名前である。そして雌。
キングでコングな訳でもなければ、ドンキーでコングな訳でもない。カイザーである。
「私、初メテ。ダカラ、優シクシテネ?」
「黙れえええええええええっ!」
頬を赤く染めるカイザーコング。もう死にたい。
ちなみに、このカイザーコングの事は、俺は知識としては知っていた。
それも、クレバーモンキーとアクロウルフから得た知識でだが。
「子供、10人欲シイ。デモ、増エテモイイヨ」
「もう一生口を開くな。てか死んでくれ……!」
全然落ち着けないよ!?もう目の前のゴリラのせいで何が何だか分からねぇよ!
こう言う時こそ本当に冷静にならねぇと……。
俺はカイザーコングの言葉を無視し、状況整理のため、少し前の事を思い出した。
◆◇◆
俺は、アクロウルフから得たドロップアイテムをすべて回収し、激痛を耐え抜いて進化を終えた後、自分の強化されたステータスを確認した。
≪柊誠一≫
種族:超新人類
性別:男
職業:森の人
年齢:17
レベル:1
魔力:10024
攻撃力:13075
防御力:11323
俊敏力:13252
魔攻撃:9563
魔防御:10665
運:9020
魅力:
≪装備≫
最終兵器な学生服。最終兵器な学生ズボン。必殺の肌着。必殺のパンツ。賢猿の鎖。賢猿棍。水霊玉の短剣。夜の腕輪。
≪スキル≫
上級鑑定。完全解体。麻痺耐性。睡眠耐性。混乱耐性。魅了耐性。石化耐性。阻害耐性。毒耐性。疲労耐性。斬脚。刹那。超調合。道具製作:超一流。双牙撃。索敵。剛爪。
≪状態≫
進化×1。
≪称号≫
臭い奏者
≪所持金≫
452240000G
「何故だっ!」
何で魅力が未だに空欄なんだよッ!諦めたとか言いつつ、気にしてる俺も俺だけども……!
でも空欄じゃなくてもいいじゃん!?何でわざわざ空欄にしておくの!?なんか恨みでもあんのか!?
それに、何時の間にか種族が超新人類に変化してるだと!?なんかそのうち金髪で逆立って、気とか纏いだしそうだな、俺!
それにしても、魔法はどうやらステータスの欄には表示されないらしい。まあ全ての魔法は一応頭の中に入っており、完全に理解できているので問題ないんだけど。勿論水属性だけだけどね。
「はぁ……でも、進化もあと一回かぁ……」
結局、俺は痩せれたという事以外、進化してるという実感があまりわかない。そりゃ、あれだけ激痛を味わってるんだから、進化してないとか軽く詐欺だけど、見た目に現れないからよく分かんない。
「ま、別にいいか」
気にした所で何がどうこうなる訳でもないしな。
そう気楽に考え、一人で頷いている時だった。
「ッ!?」
俺はつい先ほど手に入れたスキルの『索敵』により、近づく生物の存在に気がついた。
どうやら、『索敵』のスキルは常時発動されているらしいが、今はそれどころでは無い。
「……囲まれた!?」
そう、俺は何時の間にか周囲を包囲されていた。
未だに何の生物が俺を包囲しているのかは分からないが、俺の敵である事には変わりないだろう。
「クソッ!まだ魔法の使い方も分からねぇのに……!」
俺は舌打ちをしながら、警戒する。
すると、俺の周囲を包囲していた生物たちが一斉に飛び出し、姿を現した。
「……クレバーモンキー!?」
飛び出してきたのは、クレバーモンキーだった。
アレか!?仲間の仇討ち的な!?
ど、土下座すれば許してもらえるだろうか……。プライド?何ソレ。
一人恐々としている俺だったが、何故かクレバーモンキー達は姿を見せただけで襲って来ない。
「?」
俺は首を捻り、襲いかかってこない理由を考えていた時だった。
「人間、初メテ見タ」
「!?」
突如、人間の話す言葉が聞こえた。
俺は急いで辺りを見渡すが、誰が今の言葉を発したのか分からない。
だが、確実に今の言葉は人間の言葉だった。
「(こんな森に、俺以外に人間が!?)」
変な期待と好奇心で満たされていた俺だったが、不意に耳に妙な音が聞こえてくる。
ヒュウウウウウウゥゥゥゥゥゥ…………。
「へ?」
ズドオオオオオオオオオンッ!
「のわっ!?」
音に耳を傾けていると、突然空から何かが降ってきた!
「な、なんだ!?」
凄まじい衝撃と砂埃を上げる飛来していたモノに目を向けると、やがて煙から一つの影が出てきた。
「は?」
思わず間抜けな声が出る。
何故なら――――
「人間、私ト戦エ」
――――空から降ってきたのは、ゴリラだったからだ。
非常に短い上に、誠一が前の出来事を振り返ったままの状態で切ってしまいました。すみません。
ちなみに、このゴリラはヒロインです(爆)。




