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白百合狂想曲  作者: シズカンナ
白百合狂想曲 ( 本編 )
10/39

10、魔王との決闘(=負け戦)


警戒警報、発動!!


いや、避難警報だ!! 撤退だ!!

今すぐこの場から逃げよう。じゃなきゃ、負ける。

何にか分からないけど、すっごい負ける気がする。


恐れおののいて、一歩後ろへ下がった私。

逃すまいと、大きな一歩で近寄ってくるアレクシス。

くそぅ、長身の有利を生かしやがって。ずるいぞ!!


今まで、優しくて忠実で可愛かったワンコが突然、威圧感と黒いオーラを漂わせる魔王様になった。

どうしてだ、ラスボスを倒したというのに、さらにものすごい敵が出てくるなんて。

いやだ、そんな超展開にはついていけない。信じたくないっ。

こんなの誰が想像できただろう。まさか、ラスボスが可愛いワンコだったなんて!!


突然の恐怖に、人はなすすべもなく混乱に陥る。

それこそが最も愚かしいことだと知らずに。


ということで、私のその場で最も考えられる最悪なことをした。つまり、

「こないでっ 」

叫びながら、とっさに剣を抜いてしまったのだ。


私、何してんの?味方に剣を抜くなんて、愚の骨頂だぁ。

あぁ、だめだ。やっぱり、私はハプニングに弱い。弱すぎる。

頭がぐるぐるして、いつもの判断が下せないの。


アレクシスは私を睨んだままだし、私は涙目になりながら剣を構えている。

今の私はまさに、蛇に睨まれたカエルってやつだ。


ほら私、謝るなら、ギリギリで今だよ。

分からないけど、怒っている相手にはとりあえず謝るんだ。

精一杯の誠意ってやつを示すんだ。そしたら、冷静に話し合って、えっと、それから…


なんて必死で考えていると、アレクシスがフッと笑った。

あれ、もしかして許してくれるのかな、なんて希望を持った私。

だけど、甘かった。


そこには、さらなる展開。


「俺を相手に、貴方は剣を抜くのですか。 そうですか… 」

そう言って酷薄な笑みを浮かべながら、どういうことかアレクシスも剣を抜いてしまったのだ。



ちょ、ちょ、ちょ、まって、なにしてんの?

これで、あんたまで抜いたら、もう取り返しつかないよ?

て、いうか、これってもしかして、騎士の決闘ってやつに、なるの、かな。


「受けて立ちましょう。勝者には絶対服従が掟。 …どこまで俺を信じられないのか。貴方が、分かりません 」

忌々しげに吐かれた言葉。その瞳には怒りと、なぜか悲しみが見え隠れする。


だけどね、悪いんだけど私にも貴方がよく分からないよ。

もちろん、この訳の分からなさは全体的には私が悪いのは分かっている。

だって、先に剣を抜いたのは私だから。


でも、アレクシスにだって、ちょっとは非があると思う。

折角、事件解決で円満に終わろうって時に、どうしてそんなに怒っているんだろう。

先に分からない行動をしたのは、そっちだ。


だから、私だけが悪いんじゃない。

どっちもどっちの喧嘩だ。


なんだけど、今の状況から考えて負けるのは間違いなく私の方だ。

これは、もう、結果を見るまでもなく分かっている。

彼と私とでは、実戦経験や技術やらが違いすぎるのだ。

それは、互いに剣を抜きあって構えているからこそ、痛いほどわかる。


どうしよう、どうしよう、どうしよう。

あぁ、今こそ、最良の言葉を私に!!


そう願ったところで、地下室の扉が勢いよく開いた。

そして、そこから入ってきたのは、黄金色に輝く美しい人。


最愛にして最悪の、紅薔薇の姫君。



「ちょっと、私のリリアに何してくれてんの!? 」


懐かしくも愛おしい姉の声。

それを聞いたとき、今まで張りつめていたものがプツンと切れた。



そして、一緒に私の強固な涙腺も見事に全壊したのだった。





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