子供は子供らしく
瞳を閉じながら鼻を上に向け、くんくんと辺りを探るブランシェ。
思えば今回は少し抑え気味で食べていたようにも思えたし、腹が減ったのか。
アンジェリーヌのことをこの子なりに心配していたんだな。
そういった気配りができるようになった成長に嬉しく思うが、子供は子供らしくもっと自由にしてほしいとも感じた。
まぁこの子の場合は、いちばん年齢相応にも思える行動をするし、気を使いすぎるってことはないだろうな。
「……いい匂いがする~。
ごしゅじん、あれ食べたい」
露店をじっと見つめながら答える子に、我慢させるのは可哀そうか。
「いいぞ。
とは言っても、俺はもう満腹なんだが。
みんなはどうする?」
「あたしはもう食べられないかな」
「お腹いっぱいなの」
リゼットとクラウディア、オーフェリアも同じみたいだな。
食べられなくはないが、さすがにこれ以上は腹に入れないほうがいいと思えたようだ。
「なら、我らも共にするか」
「そうですね。
ブランシェさんひとりでは寂しいですもんね」
「いいの!?
レヴィアお姉ちゃん! リージェお姉ちゃん!」
ブランシェは目を輝かせながら、とても嬉しそうに答えた。
嬉しそうな顔を見られたし、さすがに歩けなくなるほどは食べないだろ。
それに、せめて町にいる時くらいは、なるべく好きにさせてあげたい。
小さなことでも気分転換にいいだろうし、俺も楽しそうにしている子供たちを見られるのは嬉しいからな。
空を見上げると、月が優しい輝きを放っていた。
これだけ光源のある街中でも、電気のような煌々とした強い光はないからな。
随分と落ち着いた灯りは、見ているだけでも心が穏やかになる。
そういえば、月をこうして見るなんて余裕もあまりなかった気がした。
色々な意味であまり自由な旅をして来れなかったし、これからはもう少しのんびりとした日々を過ごしてもいいかもしれない。
エルルの記憶次第で変わることも考えられるが、ここから東西にあるどちらの国に行こうとデルプフェルトへ戻ることになろうと、今度はゆっくりと歩いて行けそうだからな。
満面の笑みで手招きをする天真爛漫なブランシェに俺たちは微笑みながら、幸せに思える時間を大切な家族と一緒に過ごした。




