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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十五章 笑顔で歩いて行けるように
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高品質の回復薬

「ともあれ、10分休憩しよう。

 4人はこれを飲んでゆっくりしててくれ」


 インベントリから透明な小瓶を取り出して4人に手渡した。

 薄青色の液体をまじまじと見つめていた彼らは、それが何か気が付いたようだ。


「お、おい、これって……」

「マナポーションじゃねぇか!」

「修練の合間に飲めるほど安価ではありませんよ……。

 さすがにいただけません……」

「それもこれはとても透明度の高いお薬ですね……。

 こんなにも美しい青色を見たのは初めてです。

 相当貴重な品なのではありませんか?」

「いや、そうでもないんだよ、これは」


 このマナポーションは確かに100階層以下では手に入らないと思えるが、そこから先はかなりの頻度で見かけるようになる薬だ。


「ドロップ率と性能を考えると、それほど貴重なものでもないんだ。

 このマナポーション・中は1000個以上あるから気にしないで飲んでほしい」

「……1000個以上って……。

 どんだけ魔物狩り続けてたんだよ……」


 疲労感があふれ出したんだろうな。

 肩を落としながら疲れ切った顔でフランツは訊ねた。


「言ったろ、165階層で修練を積んだって。

 この薬は101階層から出続けた回復薬のひとつだし、修練を積みながら手に入ったのは効果大のポーションばかりだ。

 それにここで手に入る薬は迷宮内でのみ効果があるって聞いてるからな。

 フィールドに持ち歩けないなら惜しまずに使うべきだろ」

「……そりゃあ、そう……いうものなんだろうか……」

「いや、俺に同意を求められてもな……。

 83階層じゃ貴重なマナポも、そこまで深く潜ると大量に手に入るのか……」

「薬は薬だよ。

 それ以上でも以下でもない。

 必要なのは回復薬を大量に持っていることじゃなくて、必要に応じて使うことができるかだと俺は思う。

 貴重だからって使うのを惜しんで大怪我するなんて本末転倒だろ?」

 相手が弱くても、命をかけながらの修練をしているんだ。

 それで怪我するなんて、目も当てられないじゃないか」


「……それもそうだな。

 うし! 俺はもらうぜ!

 ありがとうな、トーヤ!」

「あぁ」


 コルクの栓を抜き、口へと流し込むフランツ。

 だが次の瞬間、大きく瞳を見開きながら言葉にした。


「んだこりゃ!?

 すっげぇ美味いぞ!?

 ほんとにポーションか!?」

「なにを言ってるんですか、フランツさん……。

 ポーションが美味しいわけないでしょう?」

「味覚が狂うほど疲れたんだな、お前……。

 今日の鍛錬はもうやめとくか?」

「い、いやいやいや!

 嘘じゃねぇって!

 お前らも飲んでみろよ!」

「またそんなこと言って……。

 この間だってフランツさんは……あれ?

 …………美味しい?」


 なぜ疑問形なんだろうか。


 だが、その気持ちも分からなくはない。

 不味い栄養剤のような風味で、あまりのクサさに鼻のいいブランシェは飲みたがらなかったが、これなら美味しく飲めていたからな。


「美味いだろ!?」

「……本当に美味いな、これ……」

「まるで体が洗われるように浸透していきます……。

 それに清々しい香りが包み込むようで、とても心地良いですね」

「……むしろ、僕たちが今まで飲んでいたものに疑問が出てきましたが……」

「高品質な薬ほど臭みやえぐみ、酸味や塩味だけじゃなく強烈な刺激臭も抑えられたものになると俺は推察してる。

 ちなみにポーション・大は、澄みきった湧き水のような清涼感があるぞ」


 あまりの衝撃に美味い美味いとはしゃぐ大人たちだが、できれば動かずに体を休めてほしいところだ……。


 それにさっきまでへろへろだったフランツが、もう復活してることに驚いた。

 やはり特質的な体力の多さを持ち合わせているように思えた。


 いや、これは体力じゃなく、自然治癒力の高さなのかもしれないな。


「それじゃ、4人が休憩……してるようには見えないが、10分だけでも気配察知についてクラウディアに教えようと思う。

 本格的な修練にはじっくり時間をかけるが、ほったらかしはつまらないもんな」

「いえ、そのようなことは。

 ですが主さまのご配慮に、とても嬉しく思います」

「……その話し方を変える気は……ないんだよな?」


 ダメ元で聞いてみたが、満面の笑みで断られた。

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