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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十五章 笑顔で歩いて行けるように
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必要な覚悟

「アーティファクト級の原石は置いておくとして、まずはクラウディアが納得できるまで鍛えようと思うよ。

 それは迷宮じゃなくてもできるが、人目に付かない場所のほうが色々と問題にならないから、とりあえずは軽く修練をしつつ、のんびり48階層辺りに行こうか」

「はい」


 嬉しそうに微笑みながら答えるクラウディアだった。


 彼女の家系はかなり特殊で、強くなればなるほど両親に褒められると聞いた。

 それは伯爵家のご令嬢だろうと関係ないらしく、むしろ貴族だからこそ平民を護るべきと考えているそうだ。


 先日ボコった馬鹿貴族とはえらい違いだが、比較するのも失礼に値する。

 もう二度と遭うこともないだろうし、少しでもこちらに害が及べば貴族家ごと潰しに行くかを本気で考えようと思う。


「トーヤの学んだ修練法って、俺らが習ったものとは随分違うよな……」


 肩を落としながらため息をつくフランツの気持ちも分からなくはないが、大抵の修練ってのは厳しいものとして認知されているんだろう。

 まるでそれが常識だと言わんばかりに、誰もそこに疑問を持たないのかもしれないな。


 だが、そんなものは邪道だ。

 それどころか、大きな怪我をする可能性すらある。

 場合によっては再起不能になることだって考えられる危険な行為だ。


「まぁ、みんなが習った先生の教えを否定するわけじゃないんだが、俺ならそういった教育はしないよ。

 人にはそれぞれ鍛え方ってのがあるんだ。

 それは人の数だけ存在するし、何が正解なのかも教える側はまず手探りで始める必要がある上に、その人に合った訓練法を確立するのも難しい。

 大切なのは自分に合った訓練法で鍛えることと、強くなるために何に重きを置くかだと俺は思うよ」

「"誰よりも強くなる"、じゃダメなのか?」

「それは明確なものに思えて、その実"曖昧な意味"を持つんだ。

 何のために、誰のために、強くなってどうしたいのか、自分がどうありたいのかを明確に見定める必要があると俺は思う。

 フランツはどうして強くなりたいんだ?」

「……そりゃあ……なんだろうな……」


 やはり引っかかるのはそこだろうな。

 もしかしたら自分に合った訓練法を見つけられたからこそ、これだけの強さを手に入れられたのかもしれないが、それは俺自身の目で見てみないと分からないし、見たところで確実に判断できるとは言えない。

 少なくとも、フランツが今も探すように見つけ出そうとしているものは、強くなる上で何よりも大切なものだと俺は思っている。


 闇雲に力を求めてはダメなんだ。

 そこには確固たる意志に基づいた信念のような"覚悟"が必要になる。


 だからこそ子供たちは強くなれた。

 誰かのために、それも大切な家族のために目指したその先へは、まるで眩いばかりに光り輝く道が繋がっていたからだ。

 それをこの子たちは自分自身で見つけ出し、ひたむきに前へ進み続けた。


「急に見つけ出すのは難しいかもしれない。

 でも、強くなるには何よりも大切で、必要な覚悟になると思う。

 闇雲に力を求めては早い時期に限界を感じるだけじゃなく、先に進む方法を見つけられずにそこから一歩も進めなくなる可能性が高い」


 しばらく悩み続ける4人は、なおも答えを出せずにいる。

 ただひたすらに強さを求めるのは悪いことじゃない。

 それも覚悟のひとつになるからな。


 だがそれでは足りないんだ。

 そこから先に進むためには、また別の覚悟がなければ停滞する。

 そしてそれは、スランプだと判断するのに十分すぎるほど長期的なものになるだろう。


 闇雲に強さを目指した自分に満足するならそれもいい。

 でも、きっとみんなは違った強さを求めているはずなんだ。


 そうでもなければ、俺はみんなに戦うための技術を教えたりはしない。

 ただ単純に目先の力を求めている連中なら、圧倒的な強さにまで高められる気配の読み方なんて俺は教えなかったよ。

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