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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十五章 笑顔で歩いて行けるように
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魔石の流用

 ある程度は話し終えたし、そろそろ本題について彼女に聞いてみよう。

 それ次第では俺たちが取る今後の行動も、大きく変わっていくだろうな。


「強力な媒体に関してなんだけど、迷宮で手に入るアイテムから魔石を流用できないか、ラーラさんに聞こうと思ってたんだよ」

「それがあれば、マンドレイクになった女性を元の姿に戻せるのよね?」

「その可能性が高いと俺は信じてる」

「トーヤ君らしい優しさだね。

 ……でも、それは否定しないといけないわ。

 魔道具は魔石と道具を組み合わせ、新たなアイテムとして作り変えたもの。

 その最終工程で魔石に魔力を通すって、旅立つ前に教えたでしょう?

 そうなると、たとえ取り外しても別のアイテムへの流用はできないのよ。

 いわゆる"登録"したものは、たとえアーティファクトに使われている強力な魔石を取り外しても難しいと私は思うわ。

 そもそもアーティファクトを人の手で分解できるのかも分からないし、魔道具から魔石を取り出しただけで使えなくなる可能性が高いけれど……」

「魔道具の魔石は媒体として使えないってことか」

「ええ」


 その可能性も考えてはいたが、実際に難しいとなれば別の方法を探す必要が出てきたな。

 だが、ラーラさんの話には続きがあるようだ。


「むしろ使えたとしても、魔道具からの流用は避けるべきかもしれないわ」


 その大きな理由のひとつが、各々が持つ"マナの質"だと彼女は話した。

 人も魔物も魔力はそれぞれ違うと言われているらしく、魔力の属性は親から子、子から孫へ受け継がれる傾向にあるが、その性質は双子であっても違う波長をしているのだという。


「たとえそれが"その人の生まれ変わり"であったとしても、まったく別の波長をすると私は考えているの。

 "精神力"とも言い換えられるマナが違っても不思議なことではないんだけど。

 でもね、登録前の"原石"を見つければ、その女性のために使えると思う。

 私の推察が正しいのなら、登録済みの魔石は使えず、未登録の原石なら彼女のための"彼女だけの魔石"として機能するんじゃないかって思えるわ」

「逆に言えば、登録前の原石さえ手に入れば使えるかもしれないってことか」

「そういうことね。

 ただ、これには大きな問題もあるの。

 これも推察の域を出ないのだけれど……」

「まぁ、大体想像がつくよ」


 凄まじい魔道具につけられた魔石が流用できたとしても、恐らくはそれに引っかかるだろうと思っていた。

 だからこそ"強力な媒体"を探しているんだが、どうやらそっちも大きな障害になりそうだな。


「一度花になってしまった状態から人の姿に戻すことそのものが特殊すぎて前例のないことだけど、少なくとも"情報量不足"になる可能性が非常に高いと思うわ。

 "人の可能性は無限大"なんて言葉からも分かるように、そんじょそこらの魔石じゃ意味をなさないと思えるし、たとえレジェンダリー級の原石でも難しいはず。

 ……人は、人の存在は、それほど単純ではないから……」


 とても重みのある言葉に聞こえた。

 だが同時に、それは可能性にも俺には思えた。


「つまり、アーティファクト級の原石なら分からない、ということか」

「アーティファクトって言っても、ピンキリだと思うのよね。

 その中でもさらに強力なものを探さないとダメかも……。

 それに、魔石に使われている原石の採掘は特別な許可が必要になるし、たとえ採掘を続けてもレジェンダリー級の原石はここ8年、見つかっていないのよ。

 数年かけて掘り続けたとしても、手に入れられるとは思えないわ……」

「アーティファクトが特別視されているのは、そういったところにもあるのか」

「ええ」


 となると、色々と問題が出てくる。

 確かにそう簡単には解決しないとは思っていたが、それ以上に厄介なことになりそうだ。


 いちばんの障害は、アーティファクトが神々の創りたもうた道具だった場合か。

 もし仮にそれが真実だとすれば、原石すら発見できない可能性が高い。


「念のため聞くんだが、レジェンダリーとアーティファクトの魔石は全く違うものと考えていいのか?」

「そうね、あれは確実に別領域の魔力量を含んだ魔石ね。

 すべてがそうだとは言い切れないけれど、トーヤ君が求めているのはそういったものだと思う」


 花の姿になってしまった彼女を人に戻そうってんだから、その覚悟もしていたつもりなんだが、これは俺が思っていた以上に難しいことなのかもしれない。


「アーティファクト級の原石に心当たりとか……」

「……残念ながら、ないわ。

 むしろ、そんな情報を聞けば飛んでいく職人は多いでしょうね」


 そうだろうな。

 今の俺なら同じことをする。



 ……まずいな。

 指輪の一件に集中していたこともあって、いい案を考える暇もなかった。

 そもそも"ラーラさんなら"、なんて頼りきっていた俺が悪いんだが。


 手に入る可能性があるとすれば迷宮の深部か。

 しかし、これまで魔石に使える原石が出たとの報告はされていないらしい。

 魔物や宝箱から入手できるなら、魔道具の価値は今よりも下がるはずだ。

 ボスドロップとはいえ、30階層の武具が高額で取引されている以上、期待はまったくできない。


 ……彼女には悪いが、もうしばらくは保留になりそうだな。

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