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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十五章 笑顔で歩いて行けるように
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本当にいいチームだよな

「――って、わけでな。

 俺たちはデルプフェルトからバルヒェット、ブロスフェルトに進んだ後はヘンネフェルスへ向かったんだよ」

「そのままバウムガルテンに真っすぐ進んだのか?」


 ヘンネフェルスから迷宮都市へ続く街道は魔物も弱く、見通しもいい。

 頻繁に憲兵が行き来することもあって、治安もこの上なく良好と言えるはず。

 これも大都市と繋がっているからこそではあるが、危険人物が襲ってこないのはありがたい。


 恐らくだが、これがバウムガルテンへ向かう最短ルートになるだろうな。

 俺たちは少々寄り道をすることになって森を抜けたが、街道を使う旅は安全だ。

 盗賊に遭うことも稀だし、強い魔物は憲兵隊が定期的に間引いてると聞いた。

 森での採取や捜索依頼でもなければ、そう向かう場所でもないんだよな。


 しかし、彼らも最短で迷宮都市へ向かったわけでもないようだ。

 それもまた冒険者の醍醐味と言えるのかもしれないが。


「僕たちはブロスフェルトである冒険者に会いまして、配達を依頼されたんです。

 彼らは新人の頃にお世話になった方々で、信頼のおける僕たちにと強くお願いされましたので」


 なんだが只事じゃない空気を感じるが……。

 そう思っていたが、どうやら違うらしい。

 ライナーの代わりにエックハルトが答えてくれた。


「託されたのはお薬なんです。

 それも希少価値の高い薬草の根を煎じたもので、時期を考えると手に入れるのが相当難しいと窺いました。

 何とか入手には成功して調合師にも作っていただけたのですが、仲間が重めの風邪になり動けなくなったのだとか」

「なんでも娘さんが少々厄介な病気にかかってな。

 その薬じゃないと効果が出ないそうだ。

 幸い命の危険はないが、それでもかなり辛い生活を強いられるらしい。

 場所もレーヴェレンツだったから近いし、そう時間もかからない。

 俺たちも依頼を受けることに異論はなかったんだが、フランツが思いのほか感化されちまってな。

 涙と鼻水が止まらない状態で"俺らに任せろ!"、なんてことがあったんだよ」


 ディートリヒは笑いながら答えるが、まるで目に浮かぶようだった。

 反論するようにフランツは、なんとも彼らしさが感じられる言葉を口にした。


「だってよ! 可哀想だろ!

 幼い娘さんが苦しんでるのに動けず、手には薬だけがあるなんてよ!

 おまけに配達を依頼すれば出立するだけでも準備に時間がかかる!

 なら、俺らが届けなきゃなんねえだろうが!」

「あの時のフランツさんは男気を感じましたね。

 "だったら俺らが最速かつ確実に届けてやんぜ!"、なんて。

 あんなにも早く答えられるなんて、僕にはできませんよ」

「まぁ、それがフランツのいいところだからな。

 時々無茶もするが、こいつの出す答えは大抵間違いじゃない。

 さすがに危なっかしすぎてリーダーは任せられないが」

「なに言ってんだよ、ディート!

 このポジションだからこそ自由にいられるんだぞ!」


 満面の笑みで答えるフランツに、肩を落としながらディートリヒは答えた。


「……それじゃ俺が自由じゃないみたいに聞こえるが……」

「……面倒事ばかり任せてしまっていますからね……」

「……それについては私も申し訳なく思います……」

「気にすんな!

 こいつに任せときゃ、大概は何とかなるって!」

「……いちばん面倒事を引き込むお前が言うなよ……」


 げっそりとしながら話す彼は、思っていた以上に苦労しているようだ。

 それも楽しそうにしているみたいだし、本当にいいチームだよな。

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