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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十四章 空が落ちる日
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ごめんね

 懐から取り出したのは……指揮棒(タクト)

 直接攻撃ではなく、魔法に切り替えたのか。


 忍ばせているナイフを投げて相手の行動を妨害する。

 だが体に触れる前に、魔法壁のようなもので防がれた。

 

 魔法を無詠唱で発動した?

 でも、それを感じさせるような動きはまったくなかった。

 どちらかと言えば、振り上げたタクトの効果と思えなくもない。

 だとすれば厄介なことになるが……。


「そんな玩具は効きません。

 貴女にできるのは泣き叫び、命乞いをすることだけです。

 懇願するなら、少しは未来が変わるかもしれませんよ」


 暗殺者の前方に魔力が集まり、徐々に具現化される。


 あれは……人型のゴーレム……?

 それも2メートルの大男を連想するような姿。

 顔の造詣はないけど、見た目からは硬そうな鋼鉄製に思える。

 こんなにも精巧に作り出せるものなの?


 ……いや、ルーナの時と同じ、か。

 厄介なものを使われた。


「さあ、貴女はどんな踊りを見せていただけるのかな?」


 タクトを振るう姿は、まさに指揮者そのもの。

 相手が自分の道具に酔いしれているのなら好都合だが、眼前の人形を倒さない限り暗殺者にダガーは通らない。


 鉄人形から繰り出される攻撃は、まるで人間と同じ動きができるみたいね。

 こちらを狙うポイントと精度がそれほど良くないのは、使用者の技量か。

 それでも、人型ゴーレムの速度と鋭く風を切る音に冷や汗が溢れ出る。

 牽制するようにナイフを放るが、ものともせずに距離を詰めてきた。


 ――なら。


 右ブローを避けつつ軸足を払い、地面に叩きつける。

 首元にダガーを突き立てるつもりだったが、転がした瞬間にその場を離れた。


「……おや?

 攻撃をしなければ倒せませんよ?

 もっとも、その程度の強さでは傷ひとつ付けられませんが。

 よもや降参なんてつまらないことをされるおつもりではありませんよね?

 実験動物は飼い主(マスター)のためになる反応をしてもらわなければ存在する価値などないのですから、もっと踊って結果を残してもらわないと」


 ……耳障りなやつ。

 攻撃ができるならしていた。


 人形に触れた感覚で分かった。

 あれは武器での攻撃が通用しない。

 並大抵の衝撃はすべてが弾かれてしまう。

 斬撃だろうと刺突だろうと意味をなさない。


 作り出したものである以上は完璧な耐性を持つとも思えないし、強力な魔法攻撃であれば効果を見せるかもしれない。

 でも、生半可な武器での衝撃は無効化されると確信させるほどの凄まじい強度を持つのは間違いないはずだ。


 同時に、私では倒せないことを自覚させられた。

 私の攻撃魔法はダガー以上の威力を出せない。

 念のため毒攻撃も試してみたが、やはり通用しないようだ。


 まさか、魔力で高めた身体能力すら意味をなさないなんて……。


 ……まいった。

 これは詰んでる。

 情けないが、相性以前の話だ。


「……ごめんね、ヴァイス君……」

「問題ない」


 隣には、直前に気配を送ったはずの人が立っていた。

 その速さに驚きを隠せないが、彼の姿に胸の鼓動が高まる。


「……いつの、間に……」

「移動してる最中だったからな。

 思いのほか手間取ったが、無事に合流できて良かったよ。

 状況は?」

「タクト型のアーティファクトと推察。

 自在に操れるゴーレムを生成。

 尋常じゃないほどの強度を持つ。

 使用者は強力な魔法壁で護られる」

「……なるほど。

 今回のは面白いアイテムだ。

 "いい手土産"ができたな」


 そう言うと彼はロングソードをマジックバッグにしまう。

 思わず首を傾げてしまう動作に戸惑っていると別の武器を取り出し、ゆっくりと鞘から抜き放ちながら彼は鉄人形に歩を進めた。


 ……黒いけれど、あの武器は……。

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