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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十四章 空が落ちる日
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まずは報告を

 がやがやと賑わう館内を、俺たちは早歩きで進む。

 俺が騒いだ件は、それほど大きな問題にはなっていないようだ。


 思えばここは冒険者ギルドで、相手は小さな子供に最悪とも言える行動を起こしたからな。

 動けなかったことに申し訳なく思うのが普通じゃないかとヴィクトルさんは話してくれたが、貴族の暴挙を止めるだけの勇気がある人はそれほど多くないと思う。

 ここは他国でも、大切な人がいればいるほど行動できなかっただろう。


 でも、俺はそれでもいいと思っている。

 大切な人を護るためなら俺は批難しないし、咎めたりもしない。

 しいて言えば、普段どおりの姿を見せるギルド内には戸惑いの色を隠せないが、それだけだ。



 入り口からいちばん遠い壁側の席に座る子供たちへ、俺は視線を向けた。


 あんなことがあったから、なるべく奥で待機してもらった。

 心配しすぎだよとエルルは話したが、それくらいで十分だと俺には思えた。

 ……もう、あんな姿を見るのは、二度とごめんだからな。


 リージェの安否を確認するが、笑顔で応える彼女を見ていると大丈夫そうだな。

 ダンジョン内ではある程度離れることができるように成長していたが、さすがに4キロ近くも距離をあけたことはなかったからな。


 今回は大丈夫だったが、それは結果論にすぎない。

 取り返しのつかないことになりかねないんだから、いくら緊急事態でも今後は彼女を連れて行ったほうがいいだろうな。


 嬉しそうな笑顔を見せる5人に安堵しながら受付にいるはずのリーゼルを探すが、どうやら奥にいるようだな。


 3つ開いてるカウンターの前で待つ冒険者が、それぞれ1チームいた。

 この時間というよりも、たまたまタイミングが悪かったみたいだな。


 さて、割り込みを謝罪ひとつで素直に許してもらえるだろうかと考えていると、連れの女性から声をかけられた。


「ヴァイスっち、並ばなくていいっす。

 許可はアタシが貰ってるっすから、このまま上に向かうっすよ」

「わかった」


 そういえば、ルーナは特殊任務に就いているんだったな。

 意識を階段へ戻し、俺たち3人はギルドマスターの部屋へ向かった。


   *  *   


「こんこん、とりゃっ!」


 口でノックをした彼女は、室内にいるギルド長の同意を求めずに扉を開いた。

 あまりのことに絶句してしまうが、同時にフィリーネさんの苦労が少しだけ理解できたような気がした。


「……ルーナ……あなた……」

「いやん、怒っちゃいやっすよー」

「……さすがにこれはどうかと思うぞ……」

「……ルーナ、いつもそうだから、私は慣れた」


 慣れとかそういう話じゃないと思うんだが……。


 眉間にしわを寄せるテレーゼさんは、目を閉じながらこめかみに指を当てた。

 これは俺がワンクッション置いたほうがいいかもしれないな。


「彼女を止められず、申し訳ありません。

 ですが、至急報告すべきことができましたので伺いました。

 可能ならヴィクトルさんと繋いでいただきたいのですが」

「わかったわ。

 ソファーへどうぞ」

「ありがとうございます」


 即答した彼女も察してくれたのだろう。

 いつもの真剣な表情に戻っていた。


 水晶に魔力を通しながら言葉を送り、対面に座って彼を待つテレーゼさん。

 そう時間をかけずにヴィクトルさんの声が耳に届いた。


《やあ、テレーゼ。

 何かあったのかい?》


「それについて、俺から説明をさせていただきます」


《ヴァイス殿?

 ……随分焦っているようだが、まずは報告を聞こう》


 また声色から読み取られたか。

 まぁ、これから話す内容が内容だけに、今回はそれも仕方がない。

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