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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十四章 空が落ちる日
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酷とも思える真実

 だがひとつ、これまでにない仕掛けが増えていた。

 それについても一応報告しておくか。


 正直、"攻略組"がそこまで辿り着けるかは分からないが……。


「90階層をクリア後、青と緑のほかに黄色のゲートが増えていました。

 使ってみたところ、その階層の入り口に出るようですね。

 ボス部屋以外の階層で利用すると魔物も出現しました。

 恐らくは同じ階層でも別のエリアと思われます」


《……そんなものも増えるのか……。

 以降は黄色のゲートが出続けていたのかな?》


「はい、どの階層の終わりにも見られるようになりました。

 5階層ごとの安全地帯にはありませんでしたが、これを使うことでボス部屋、もしくはその階層を初めから攻略できます」

「……それ、意味あるんすかね……」

「あるぞ。

 同じ階層で別のエリアに出るってことだからな。

 魔物が復活するまで待たずに修練できるし、開けられてない宝箱も探せる。

 エントランスへ戻れば噂の"攻略組"と鉢合わせる可能性もあったから避けていたが、これで戻らずにボスを連戦できるようになったのは大きいな」

「……ヴァイスっちの常識が、アタシには非常識ってことだけは分かったっす」


 失礼なことを言う。

 だが黄色のゲートはかなり便利だ。

 特にボスとは子供たちしか戦ってこなかったからな。


「黄色のゲートのお陰で、リーゼルたちもボスと闘えるようになったんだよな」

「はい。

 迷宮のボスは中々歯応えがあって、とても勉強になりましたね。

 さすがに私たちはヴァイスさんのように一撃で倒すことはできませんが」

「それも慣れだよ。

 リーゼルも随分強くなったし、あとは技術を磨けば一撃必倒も可能だろう」

「ありがとうございます。

 今後もご指導、よろしくお願いしますね」

「あぁ」

「……なんか、とんでもない話を笑顔で自然としてるっすね……」


《そもそもアイアンゴーレムを3分で討伐すること自体、不可能なんだけどね》


「……たぶん、そんな気がしてたっす……。

 この話を人にしても笑われるだけで、誰も信じてくれないっすね……。

 というか、それ以降のボスを一撃って……ヴァイスっち、強すぎっすよ……。

 アタシの聞き間違いじゃ……ないんすよね……きっと……」


 しょぼくれるように肩を落とすが、彼女ならこれだけ情報を伝えればあとは独学で体得しそうな気がする。

 元々集中して鍛錬を積んできたんなら下地は十分だし、感覚的にも鋭いはずだ。

 もしかしたらそれほど苦労せずに到達するかもしれないな。


「ルーナなら、そのうち魔力の流れが見えるようになるんじゃないか?」

「かっちかち相手にも一撃必倒っすか!?」

「一撃は難しくても、アイアンゴーレム程度なら大ダメージを与えられるよ。

 アンデッドやゴーレムに限らず、魔法を原動力として活かしている魔物すべてに言えることだが、致命的な弱点に刃物を通すだけで驚くほど簡単に倒せる。

 それは詰まるところ、力の根幹を絶つのと似ているだろうな」

「マジっすか!?」


 瞳をこれでもかと輝かせながら聞き返すが、あとは彼女の努力次第だな。

 正直、俺は面倒を見るつもりもないし、できなくても保障はしないが。


 アドバイスくらいならするけどな。



「そ、それで、迷宮のその先(・・・)についてお伺いしてもよろしいですか?」


 言い淀むテレーゼさんは、どこか聞き辛そうに訊ねた。

 とはいえ、さっきから話している内容が内容だけに、それも当然だろうな。


「話が逸れましたね。

 ダンジョンの最下層は100階だと思われているかもしれませんが、それをクリアするとさらに先のダンジョンへ進めるようになるのは先ほど話した通りです。

 1階層は武装したホブゴブリン。

 それもリーダーがいる統率されたチーム(・・・・・・・・)でした。

 数は8~12匹ほどで、遠距離からの弓や魔法を織り交ぜて攻撃してきます。

 ……これらが何を意味するのか、みなさんは見当がつきますか?」


 目を丸くするふたりに、俺は説明を始める。

 迷宮や魔物をあまり知らないデルフィーヌさんだけは表情が変わらなかったが。

 とはいえ、これもすべて俺の体感だから正確な情報とも言えないし、間違ってるかもしれないことを前もって伝えた。


「アンデッドは確かに厄介です。

 オークやオーガも苦手とする冒険者は多いでしょう。

 100階層まで到達するにも時間がかかりますし、準備だけじゃなく技術が何よりも必要になります。

 ですが、攻略という観点から考えれば、その難易度は低いとしか言えません。

 正直、迷宮に潜る前から危惧していた予測が当たった結果ではありますが」

「つ、つまり、どういうことっすか、ヴァイスっち……」

「ルーナならもう察しがついてるだろ?」


 完全に凍りつくルーナ。

 これまでの話で理解できたんだろうな。


 いや、彼女は以前からその可能性に気がついていたのかもしれない。

 それだけの弱さを感じる場所だったし、そこに考えが至っても何ら不思議なことではないが。


 沈黙が続く室内の空気を破るかのように、俺は言葉にする。

 現状が常識だと信じて疑わない彼女たちには酷とも思える真実を。


「100階層までは初心者用のダンジョン(・・・・・・・・・・)だ」

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