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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十三章 大切な家族のために
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教える側として

 ブランシェが放ち続けている、強烈な威圧のようなもの。

 こちらにまでビリビリと伝わってくる力に、エルルは地面へ座り込んだ。

 あの子が放つ強い気配に腰が抜けたのかもしれないないな。


 しかし、ブランシェの放ち続けるものの中に違和感がある。

 事はそう単純なものでもないし、簡単に使いこなせるはずもない。

 あれは"廻"を維持しているだけで、扱えている状態だとは言えないからな。


 その違和感がわずかに大きくなったところで、俺は言葉にした。


「入れ込みすぎだな」

「ふむ。

 確かに気にはなるが、問題なく圧倒できるのではないか?」

「……当たれば(・・・・)、な」

「どういうことだ?」


 視線をブランシェに向けたままレヴィアは訊ねるが、これはあえて結果を見せてからのほうがいいと思えた。


 実際に聞くのと見るのとでは意味が違ってくる。

 説明する前に"何が起きたのかを理解できるか"でも話は変わるからな。

 ブランシェの動きがまったく見えない場合は"廻"を体験しないと分からないかもしれないし、現時点では教えずにその目で確認してもらうのがいいと判断した。


「まぁ、見ていれば分かると思う。

 レヴィアが"廻"を使った時のために覚えておくといいよ。

 あの状態の行動は速いから、一瞬だと思うが」

「ふむ、なるほどな。

 大体は予想がついた」


 さすがレヴィアだな。

 そう言うだろうなとは思ったが、話が早くて助かるよ。


 彼女の思慮深さはそのまま洞察力に繋がっている。

 気配を読めるその先を手にしたレヴィアなら、俺が言いたいこともしっかりと伝わるはずだ。


 本音を言えば、リージェも同じ領域に立っていたらと思わずにはいられない。

 これからブランシェがするだろうことは、俺には再現できないからな。

 あの子が見せる動きをするのは難しい、といったほうが正しいが。


 そんな姿を俺が見せれば、教える側として問題になる。

 こういったことは実際に起こった場面を見るのがいちばんだ。

 だからこそリージェにも見て欲しかったが、諦めるしかないか。


 はっきりと認識できるのはフラヴィだけだな。

 今も見逃さないようにとブランシェを見つめている。

 その真剣な表情に若干の心配が含まれる気配は、応援の意味もあるんだろうな。

 使ったことはないが難しいと知識がある、不思議な感覚なのかもしれない。


 恐らくフラヴィは"覇"だけじゃなく、"静"の最上位技も体得しているはず。

 あくまでも"知っている程度"のものだろうけど、必要とあらば使える強みがこの子にはある。


 突発的な対処もできるフラヴィがパーティーにいるだけで安定感が増すことにも繋がっているが、俺としては早急に上位技までの技術を使いこなせるようになってもらいたいと思ってしまう。


 それでもこの子が望んでいないことはできないし、俺がそう思っているだけでする必要もないが、下位技すら使っていない子が最上位技を体得しているバランスの悪さは際立っていた。

 あの子の性格を考えれば基礎からじっくり学んでくれるだろし、問題はないが。


 むしろ、ブランシェのほうが厄介だな。

 あの子は真っ直ぐに自分が望む強さを目指している。

 それは忍耐強さや、一途を含む"直向(ひたむき)さ"とは別のものに思えた。


 言葉にするなら、"力への渇望"がいちばん適切だろうか。

 貪欲さすら感じさせる強い意志が、ブランシェの原動力になっている。


 ここ最近はそれが著しく表れていた。

 最強と謳われるフェンリル種ゆえと言えるのか?


 これも答えの出ない疑問だから、考えても仕方ないか。



 あとはエルルになるんだが、この子は魔法に長けているからブランシェよりも体得に苦労はしないだろう。

 何よりも"廻"をいきなり戦闘で使ってみたり、試しもせずに動いたりするような無鉄砲さは持っていないからな。


 そういった意味ではフラヴィ寄りの性格で助かる。

 これからブランシェが見せるだろうことや、"廻"についても考える時間をしばらくは持つとは思うけど、エルルなら安心して見守れる。


 リージェとリーゼルに関しても、問題ないだろう。


 魔法に長けた者と技術に長けた者。

 特にリーゼルは魔法での身体強化ができていたからな。

 それを別の力に置き換えるだけで、俺と同様にすぐ体得するはずだ。


 これでみんなの未来像が見えてきた。

 そこまで到達できれば、あとは技術を研鑽するだけだな。

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