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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十三章 大切な家族のために
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ある一定量を

 トードに気づかれる5歩ほど手前で足を止めるブランシェ。

 体内に集めた"力"を、さらに変質させようとしているようだ。


 ……だが。


「わかるか?」

「うむ。

 体内に集めたものが、体外へ溢れ出ているな」

「ブランシェさんから流れ出ているようにも思えますが、あの状態は?」

「体内に力を留めるための"充"ができていないと、ああなるんだ。

 頭頂部からつま先までしっかりと巡らせなければ成功とは言えない。

 あの子がこれからしようとしていることは想像に難くないが、さらに先の力は便宜上置かれたものではなく、言葉通りの意味を含めて位置づけされた技術になる。

 その難しさは、中位技の比じゃないんだよ」

「……ふむ。

 "充"を体得するだけでも難しいようだが」

「いや、それに関しては魔法による強化ができればそれほど難しくはないはずだ。

 同じような感覚で力を行き渡らせることが必要になるが、今のみんなでもある程度は使えると思うよ。

 それでも初めは"充"の状態を30秒維持するのも難しいだろうけどな」


 現時点でも全員が体得するだけの下地はできていることは間違いない。

 みんな魔力の扱いに長けているから、それほど難航しないはずだ。


 魔力とは違う力を使う点と、ふたつの修練が似通っている点を考慮すれば、同時進行で修練してもいいかもしれない。

 MP切れでも"廻"を使って戦闘を継続できるようになるのが理想的だし、身体強化魔法での攻撃が通じない魔物用に"動"系統の技を覚えてもらいたい。


 剣や短剣など武具の扱いも巧みになる必要があるし、あの子が使おうとしているその先の技術は、そう簡単に維持できないほど難しいものだからな。

 気配察知と合わせて、これらの修練に時間をかけるべきだ。



 それにしても、ブランシェの成長にはいつも驚かされる。

 いずれ上位技を覚えさせようとしていたが、それも将来的な話のつもりだった。

 まずは修練が続けられそうな場所を探し出してからじっくりと学ばせる予定だったんだが、前を見ながら歩くブランシェの性格を考えればこうなるのも、これまでと変わらないか。


 ゆっくりとではあるが、徐々に溢れ出る力を落ち着かせてきた。

 どうやらブランシェは"充"へ続く最短距離の道に乗れたようだな。


 本当に凄まじい習熟速度だ。

 だが、彼女がこれまで見せてきたものとは何かが違うように思えた。

 いつものブランシェなら失敗しながら学んでいくはずなんだが、まるでコツを掴んだ後に見せる行動を思い起こさせる。



 ……そうか。

 レヴィアに手伝ってもらった水球でのことが役に立っているのか。

 力任せに押さえ込むのは良くないと教えたからな。

 その経験が活かせているんだな。


 確かにブランシェの下地も十分に出来上がっている。

 身体能力の高さはもちろん、技術的な面でも随分と上達した。

 "動"系統に偏りが見られるこの子に向いている技術なのも間違いじゃない。


 それでも、桁違いの習熟速度に戸惑いは残るが。


「……す、すごいです……。

 魔力による強化とは明らかに違う強さを感じます……」


 目を丸くしながら口を手で覆うリーゼル。

 彼女からすれば驚きの感情が抑えきれないんだろうな。


 だがこれも俺の推察した通りのようだ。

 身体強化魔法と"廻"は、肉体を強化するという意味では本質的に同じ力だ。

 しかし、その効果はありえないほどの差が開いていた。


(ぬし)の言うように、魔法が持つ力の限界点を超えるのは間違いなさそうだな」

「あぁ。

 この力は魂から発せられているものを使うとも言い伝えられている。

 現代人からすれば魂なんて曖昧な言葉に聞こえるが、この世界の住人であるあの子が使えたことで、誰もが体得できる技術だと証明したな。

 魂から発せられている力を具現化するってのも、あながち間違いじゃないのか」

「……す、すごい、ブランシェ……。

 どんどん気配が鋭くなってく……」


 それを感じることができるだけでも十分にすごいことなんだが、ブランシェが放つ強い気配に気を取られたエルルは気づけないようだな。


 彼女の纏う気配に鋭さと力強さが上がり、ある一定量を超えたと確信した俺は、頬を緩ませながら小さく言葉にした。


「……到達したな、ブランシェ」


 そこには凄まじい威圧をビリビリと周囲に放ち続けるブランシェの姿があった。

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