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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十三章 大切な家族のために
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何かできたはずだと

 これまで随分と旅をしてきたが、一度だって後悔をすることはなかった。


 そうしないような行動を心がけていたし、選択してきたと思う。

 それが最善ではなかったとしても、より良い道を選んでいた、と。

 だから、これまで一度たりとも後悔をしたことはないはずだ。


 これからだってそうだ。

 俺にはもう大切な家族がこの世界にもできた。

 みんなが笑顔で過ごしてもらえるなら、どんな敵だろうと倒してみせる。


 まるで心に言い聞かせるように、言葉を繰り返す。



 ……けど。



 本当に、この道は正しかったんだろうか。

 もしかしたら、どこかで間違えているんじゃないだろうか。


 何か重大な過ちを犯しているような気がしてならない。

 それにすら俺は、気がついていないんじゃないか?



 これまでは気のせいだと思っていた。

 いま感じているものも、考え過ぎているだけなのかもしれない、と。



 だが、ここ2日は、特にひどい。

 戸惑いや迷い、焦りや不安を強く感じている。


 それすらも、気のせいなんだろうか。



 ……いや、きっとこれは、何かを見落としている。

 ここまでの旅で、取り返しのつかないことをしている。


 そんな気がする。



 ……そうだ。

 ひとつだけ。


 ひとつだけ、引っ掛かりを覚えていることがある。


 でも、きっと何とかなる。

 大丈夫だ、きっと。


 みんなが笑顔でいられるはずだ。




 *  *   




 この時の俺は、何の確証もなく、ただ漠然と感じる曖昧で不確かなものを信じていた。


 でもそれは、事の本質から目を逸らしていただけなんだ。


 そうなってしまう可能性も確かにあった。

 それにすら気づかない振りをし続けていたんだろうか。



 もしもあの時、俺が……別の行動を取っていれば……。

 あんなことには、ならなかったかもしれない。


 そう思えば思うほど、何かできたはずだと考えずにはいられない。

 呆れるくらい今更な話に、苛立ちを通り越して自分が情けなく思えた。



 でも、この頃の俺には余裕がなくて。

 暗殺者だ大貴族だのと、くだらない厄介事ばかりに気を取られすぎて。

 子供たちの修練をしながら、ただただ見ないようにしていた。


 だからこれは、俺の責任だ。


 俺がそうしてしまった。

 俺がそうさせたんだ。



 すべては俺が不用意に力を使って卵を(かえ)したことが原因なのか……。

 自衛目的とはいえ、戦わせようとしたことが問題だったのか……。

 あんなにも優しい心を持つ子を、危険な世界に引きづり込んだのが……。


 それとも、どんな道を進んでいたとしても、変わらなかったんだろうか……。


 まるで必然のように。

 そうなることが運命付けられていたように。



 ……親失格だな、俺は。


 それをのちに、身をもって思い知ることになる。

 そして俺はその時、重大な決断を迫られることになる。


 他の誰でもない、父親である俺自身が。



 どうすればいいのかなんて分からない。

 何が正しくて、何が間違っているのかも。


 本当のところ、正解なんてどこにもなかったのかもしれない。




「それでも……俺は――」

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