3度目の報酬箱
ゲートを進んだ先に見つけた赤い箱。
今回で3度目となる報酬箱になるが、どうやらこの箱にはこれまでと違ったものが入っていたようだ。
「わぁ!
トーヤトーヤ!
魔晶石いっぱいだよ!」
「……結構入ってるな。
40万ベルツくらいにはなるだろうか?」
ちらりとリーゼルへ視線を向けて詳細を訊ねるも、さすがに魔晶石の価値に関しては彼女も分からないようだ。
そもそも大きさだけでなく内部が透明になるにつれ、その価値も上がる。
熟練した迷宮ギルド職員でも正確な金額を見極めるのは困難らしい。
専門の道具があるエントランスに戻らないと確認は難しいな。
「あ、何か甘い香りのする瓶が入ってるよ」
「甘いのか。
……こいつは、魔力回復薬だな」
「MPが回復するの!?」
目を輝かせるエルルだが、確かにこれはそれだけの意味を持つ薬だ。
残念ながら効果は微量だからそれほど回復はしないだろうが、もしもに備えることもできるし、このアイテムが存在したという事実だけでも十分すぎるほどの価値があると俺は考える。
「深部へ向かえば高性能の薬も手に入ると思うよ。
さすがに回復量は少ないだろうけど、それでも微量よりはいいだろうな」
「すごいね、トーヤ!
これがあれば魔法撃ちたい放題だね!」
「……大量に飲めればって条件付きだけどな。
撃ちたい放題をする前に腹が膨れると思うよ」
「そっか……そう何本も飲めないもんね……」
しょんぼりとするエルル。
この薬があれば大活躍できると思ったんだな。
たしかにMPを回復できるポーションは非常に高価だ。
製造が難しく、材料となる薬草や花もかなり特殊だと聞いたことがある。
さすがに俺は薬剤師に興味はないし、薬を作るつもりもない。
だが、マナポーションが作れたら旅の助けになるところか、危機的状況にも対処ができるようになるほどの意味を持つだろう。
そういった意味では興味を持つが、素人が手を出して作れるとは思えない。
むしろ薬剤や調合は俺よりもリージェが向いてると思えるんだが、彼女は興味を示していないからこのパーティーでは誰も薬師になれそうもないな。
ここで手に入ったものは迷宮内でのみ効果があるとはいえ、十分ありがたい。
魔法に重きを置くエルルにとっては、いくらあっても足りないくらいだ。
しかしそれも、マナ回復薬・中くらいの回復量が欲しいかもしれない。
微量程度がどのくらい回復するのかは分からないが、恐らく3ポイントとかそんなもんじゃないだろうか。
貴重なものみたいだし、本当に必要になったら使うほうがいい。
子供たちに攻略を任せている現状では、待機しているレヴィアとリージェのMP消費はゼロだし、リーゼルもいるから当分は使うことがなさそうだな。
甘い匂いがするってブランシェは言ってたし、美味いんだろうか。
……どうにも栄養剤のような味を連想してしまうんだが、あれはあれで飲めなくはない味だとは思うが。
まぁ、効果が良ければ味は度外視でも十分なんだけどな。
「あ、魔晶石の下に何か隠れてるよ、ごしゅじん」
「何か?」
言われるまま宝箱を覗き込んでみると、確かに何かがあるようだ。
たとえるならチェスの駒、だろうか?
黒とも違う闇を連想する漆黒に違和感を覚える。
ブランシェが手を伸ばして持ち上げると、地面から引っこ抜いたように漆黒の剣が現れた。
「わわっ!?
ごごごごしゅじん!
何か出た!」
「なるほど。
宝箱の大きさに関係なくアイテムが入ってるみたいだな」
巨大なハンマー用の2メートル級宝箱ってのもオリジナリティーを感じるが、それよりもそんなものを見た瞬間に足が止まるだろうな。
まるで影を切り取ったかのような黒の片手剣を見ながら、俺は思い出しながら言葉にした。
「……そうか、こいつが"未鑑定アイテム"だな」
「たしか、専門の鑑定士に見てもらわないと判別できない道具、だったか?」
「あぁ、たぶんそうだろうな」
レヴィアの問いに頷きながら答えた。
同時に鑑定を試みるが、残念ながら俺には判別ができないようだ。
【 螟ァ蝨ー縺ョ蜑」 】
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何が書かれているのかは分からないが、アイテム名と説明文のようだな。
これも鑑定スキルを英数字まで高めれば識別できるんだろうか。
だとすると、今後もこういったアイテムが手に入るかもしれないし、上げてみる価値は十分すぎるほどあるな。
今後は休み時間に鑑定をし続けて修練をしてみるか。
……いや、それよりもやるべきことが俺にはある。
まずは"無明長夜"を十全に扱えるようにするべきだ。
そろそろ休憩時間を使って、修練を始めてもいいかもしれないな。




