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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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倒せることが前提

 迷宮30階層。

 ここもこれまでと同じように、ボス部屋のみの構造となっているようだ。

 そして、警戒をするべきだと俺たち大人4人は考えている場所でもある。


 この階層のボスは希少なアイテムをドロップする。

 "岩石の小手"と呼ばれた魔導具で、持ち手の魔力を高めた上に攻撃倍率の高い魔法を放てる良質の武具が手に入る。


 俺がそれを目の当たりにした時は大きめの石塊程度だったが、扱い手次第でいくらでも威力が底上げされ、最終的には文字通りの岩石すらも出すのではないかとの専門家の意見を聞いた。

 あくまでも可能性のひとつにすぎないが、少なくとも努力の差で激変する威力を持つのであれば、高額取引される理由も分からなくはない。


 それを求めるように、この階層を周回する冒険者が多数待機していると聞いた。

 たしかにひとつ680万ベルツもの価値があるのであれば、依頼を受けて小額を稼ぎ続ける従来のやり方がまどろっこしく思えるものなのかもしれない。


 だがそれも、この先に待ち構えるボスを倒せることが前提となる。

 26~29階層に出現した魔物を性質を考慮すれば、ここまで自力で辿り着けないような技術しか持ち合わせていない冒険者には、とても倒せないはずだ。

 恐らくは魔術師や弓士といった、遠距離攻撃特化型のパーティー編成で戦っていると俺は予想しているが、その方法で対峙しても危険であることは変わらない。


 大金とはいえ、命をかけてまで周回する必要があるのかも判断がつかない。

 いったいどれほどのドロップ率なのかは疑問に思うところだが、少なくとも2回3回の討伐で手に入るようなものではないだろう。

 そこに700万近くの大金が見合うのかも、人それぞれ価値観が違うはず。


 俺としてはこんな場所を周回せずに実力を高め、もっと先に進んだほうがいいと思えてならないが……。

 結局はそれも人によって考え方が違うんだな。


 まぁ、冒険者である以上自由にすればいいが、できれば揉めないで進みたい。

 岩石を切れる短剣を手にした以上、俺たちはボスを討伐をしても戻らず、子供たちの修練にベターな場所を見つけることを優先したいから、できるだけ厄介事とは関わらずに先を目指したいところだな。



 ボス部屋に入れる巨大な扉の前には、多数の冒険者の気配がある。


 6人チームが4組か。

 12人で分かれているところから察すると、2パーティーで攻略してるんだな。

 入室制限はないって聞いてるし、小さなレイドを組んでのボス討伐か。


 悪くない戦術ではあるが、そのぶん厄介事も付きまとう。

 戦略的に難易度が高いことも関係するが、報酬で揉めるケースも多いと聞く。


 荒くれ者が多いダンジョン攻略者の中で、冷静な話し合いで解決しているチームは数えるほどしかいないと思えるし、多数のパーティーを結成して戦うことは詰まるところ"1チームではボスが倒せない"と証明しているようなものだから、俺としてはあまり褒められないやり方だ。


 俺たちも実際にボスをその目で見てみないと、分からないことも多いだろう。

 だがそれを差し引いても、子供達3人だけで突破できる姿しか頭に浮かばない。


 徒党を組む前にやるべきことがあるだろうに……。

 呆れながらも、そう思えてならない俺がそこにいた。

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