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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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似たような考えを

 強烈な言葉に思えるが、それは上層から先に進めないだろうという意味だ。


 彼女たちに限らず冒険者って職業に就いているのは色々と言葉足らずだったり、誤解をされやすい発言をする人が多いんだろうな。

 聞けば学校みたいな場所に行けるのは一流商家の子息か貴族くらいなものらしいし、上流階級でもなければまともな教育を受けられない世界なのも、中世程度の文明力しかないのなら分からなくはない。


 だが冒険者を育成する施設も、大きめの町や都市には必ずあると聞いている。

 それも冒険者ギルド直轄だから、正しい知識と経験を積める場所のはずだ。

 入学するのも寄付金のような小額を支払うだけで誰でも通えるらしいし、希望者には寝泊りすることもできる上、真面目に授業を受けていれば卒業後ランクDになれる特典つきだから、ランクFの小間使いや雑用みたいな依頼を受けずにも済む。


 基本的な知識も得られて生存率も上がり、在学中に作った友人や相性のいいやつとチームを組みやすい点を考えれば、行かない理由のほうが俺には見つからない。


 さらには才能なしと判断されても退学させられることはなく、本人の希望に沿って補習をしっかりと受けさせてくれる。

 そのまま追い出せばどれだけ危険な目に遭うかを知っていなければ、これほど手厚い対応はしてくれないだろう。


 在学期間も人によってまちまちで、早ければすぐに卒業してランクD冒険者として活動する者も少なくはないと聞いている。

 それだけ優秀な人材かつ最低限の知識を得ている、ということなんだろうな。



 しかし、ランクFが受けられる依頼も、依頼者からすれば困っている問題だ。

 何も魔物を狩るだけが冒険者ではないし、薬草採取だろうと立派な仕事。

 それがたとえ誰でもできると先輩たちから笑われるような依頼でも、野盗と遭遇する危険性を考えれば命を懸けていることは変わらないし、一般人にはディアクラスの魔物を撃退することすら難しい人たちもたくさんいる。


 誰かのために何かをすること。

 それは立派な仕事なんだと理解できない連中のほうが、俺には情けなく思える。


 だが、こんな考えを持つのは少数派なんだろうな。

 デルプフェルト冒険者ギルドマスターのローベルトさんも懸念していたし、自由を履き違えた者が世界中に溢れるほど多いんだろうか。


 どこの世界にも、敷かれたレールへ乗ることに嫌悪感を強く覚えるやつがいる。

 そういった連中に道徳心やら冒険者の常識なんてものを言葉にしても、泉で出会ったやつらのように嘲笑されるのが関の山なのかもしれないな。



 そんな考えを読まれたんだろうか。

 口角を軽く上げたバルバラとコルドゥラは答えた。


「ま、そんなアホどもの面倒は見きれねぇな」

「同感だ。

 冒険者なんてのは良くも悪くも自由だ。

 好き勝手に生きりゃいい」


 辛辣な言葉に聞こえるが、彼女たちもそんな連中をたくさん見てきたんだろうことくらいは想像がつくし、俺自身も言葉の強さは違うが似たような考えを持つ。

 もしそういった連中を救おうとするなら、それこそ武術道場でも立ち上げて本格的な指導をしなければならないし、そうなれば相当目立つことになるだろう。


 本音を言えば、やってみたい気持ちもないわけじゃない。

 しかし、俺にはもっと優先するべきことが多すぎる。

 子供たちのこともあるし、花になった女性やブランディーヌとの約束もある。

 何よりも暗殺者なんて連中を野放しにしておけば、家族に牙が剥くのは確実だ。


 優先順位を考えれば、何を先にするべきかは悩むまでもない。

 俺には俺の、俺が大切に思う家族のために動けばいい。

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